プロローグ
大変お待たせ致しました!お久しぶりです!実はここ最近地獄の日々を送っておりました。そして今日!解放されたのです!!( ≧∀≦)ノ
と、いうわけで。短いですがプロローグをどうぞ!
ブックマーク&評価ありがとうございます!!そしてPV一万突破!!本当に感謝申し上げます!ありがとうございます!!
内容が抜けていたため追加しました。9/18
「……それで?あの話は本当なんだよね?」
「間違いありません。先日行われた試験で聖騎士に採用となった者はクヴァシル皇国の出身だとのこと」
とある一室。決して質素ではなく、けれども華美過ぎる訳ではない品のよい調度品が並ぶ部屋で、二人の男の声が聞こえる。
一人は革張りの椅子に座る金髪の男。思慮深そうに顎に手を添え話を聞いている。
もう一人はその男の目の前に立っており、長い髪を襟足で一つに縛っている。こちらの男が金髪の男に報告を行っているようだ。
「どうやらこの国に来たのは、つい3ヶ月程前だそうです。長い黒髪に琥珀色の瞳、身長は女性にしてはやや高め。3ヶ月前に来てからはジルバのパン屋で働いていた、と」
長髪の男はそのまま報告を続ける。パン屋、という言葉を聞いて金髪の男が僅かに首を傾ける。
「もしかしなくても君は行ったのかい?」
金髪の男の蒼い瞳が長髪の男に意味ありげな視線を向ける。長髪の男はその切れ長の目をわざとらしく瞬かせる。
「何のことでしょう?身に覚えがありませんね」
抑揚の無い声のわりに琥珀の瞳は面白そうに煌めいている。
「……行ったのか。それで、他に情報は」
「クヴァシル皇国の方では貴族の屋敷に仕えていたようです。言葉遣いは下町に合わせているようですが、時折婉曲な言葉遣いをしたり、所作が洗練されているところが見れる。とのことなので、高位の貴族に仕えていたのではないかと」
金髪の男は目を伏せて何か考えているようだ。少し俯くと前髪がさらりと揺れて影を落とす。
「貴族、という線は考えられないのか?」
「クヴァシル皇国の貴族であれば、選民意識が高いので言葉遣いを下町に合わせることはできないでしょう。おそらく、その可能性は低いと思われます」
長髪の男がゆっくりと首を振ると髪が軌道を描くように付いていく。
「そうか。それなら間者であることの方が可能性としては大きいな」
金髪の男が顔を上げると蒼い瞳と琥珀の瞳の視線がかち合い、どちらからともなく頷く。
「ただ、そう考えると一つおかしい点があります」
「ああ。ここに来てから3ヶ月も下町に居るなんて行動が遅すぎる」
「ええ。城に潜入するなら騎士になる他にも色々方法はありますから。どう考えてもおかしなことです」
長髪の男は僅かに眉をひそめる。
「とにかく、今は間者であることを念頭に置いて様子見だな。…ところで、仕えていた貴族はどこの家かわかるかい?」
「それが…、何度探りを入れてもどの家かは全く分からないと。会話にも推測出来るような言葉がないそうです」
「かなりの手練れ、か……」
金髪の男は忌々しげに呟く。長髪の男も苦々しい表情を浮かべる。
「他の情報としては…、そうですね。パン屋の看板娘と呼ばれているそうです」
「看板娘?それがどうかしたのかい?」
金髪の男はキョトンと長髪の男を見上げる。長髪の男はその水色がかった銀髪を揺らし、わざとらしく溜め息を吐く。
「貴方ともあろうお方がそのようなこともご存知無いのですか……」
「知らなくて悪かったな」
金髪の男はムッとして軽く睨むが元々柔和な顔立ちをしているせいなのか、長髪の男は気にすること無く話を続ける。
「クヴァシル皇国では違うようですが、この国の下町で看板娘と言うと、特別な意味を持つのです。その家を継ぐ者の『婚約者』や『恋人』、といった意味を持ちます」
「なら、その意味でいくとその女はその店の息子の恋人、ということか?」
「いえ。息子の方の片思いだそうです。女の方は気付く素振りもないと」
「……。なんというか……あわ、じゃない、みじ、でもない。不憫だね」
「どれも同じです。結局配慮されていませんよ。それに貴方の言えることですか?」
長髪の男が冷ややかな視線を送る。こちらは元々が玲瓏な顔立ちゆえに冷ややかさが強調される。まるで辺りの温度が一、二度下がったかのように。
「それは君もだろう。それで、他に情報は?」
冷ややかな視線を総スルーして話を続ける金髪の男。どうやらこの視線に馴れているようだ。
「あぁ……既にご存知だとは思いますが、独自魔法を使いザラドを秒殺したと。しかも独自魔法の簡単な解説までしたそうです」
「独自魔法の解説をしていたのは初耳だ。普通は秘匿するものだろう?」
「ええ。ですから何を考えているのかが全く分からないのです。残りは実は着痩せ体質で脱いだら凄かった、や、スリーサイズや「おい、待て!まさかお前の諜報部員は脱がせたのか?!」」
「……彼女は女ですが」
金髪の男は盛大な勘違いをしたようだ。長髪の男が冷静に返す。
「……ああ。あの令嬢か」
「正確には元ですが」
長髪の男は淡々と答えるが、先程までとは違い、琥珀の瞳は僅かながらも優しい色が浮かんでいる。
「そういえば、女の名前を聞いていなかったよ」
「女の名は、『メルスティア・カルファ』です」
真剣な顔をして尋ねる金髪の男に長髪の男も真剣な顔をして返す。
「メルスティア・カルファ……か」
ゆっくりと咀嚼するように金髪の男は小さく繰り返す。
まだ見ぬ隣国からの人間。平民にしては少々違和感の残る言動をするというメルスティア。そして平民にして一発で聖騎士となった逸材。
じっくりと考えを巡らせていく。
「聖騎士ならば国王への謁見があるだろう」
「任命式ですね」
「ああ。そこで話を聞いてみるとするかな」
金髪の男は口の端を軽く上げてほくそ笑む。
「あぁ…。なんて顔をしているんですか。それではもう王子ではなく、魔王ですよ。セルシュヴィーン殿下」
長髪の男が金髪の、もとい、ケリドウェン王国第二王子セルシュヴィーンに長い溜め息をつく。
「そう言うな。君だって気になるんだろう?ジルベルト。化けの皮を剥がして差し上げようか「「「」」」」
セルシュヴィーンは長髪の男改め、ジルベルトにニッコリと凄みのある笑顔を向けた。
「ところでスリーサイズは本当に知ってるのかい?」
「知っているとお思いで?」
「知っていたら軽蔑するよ」
「そうですよね。私だって知りたくありません。殿下の質問が面倒臭くなってきたら言うように、と言われました」
「またあの令嬢かい?君は本当に余計なこと吹き込まれてくるね」
「彼女は何も悪くありません」
「はいはい。ソウデスネー」
「……(絶対思ってないなこの人)」
セルシュヴィーンとジルベルト回でした。やっと出てきたこの二人。
というかメルスティアですよね。間者らしいです。本人は男尊女卑国から逃げてきただけなのに…(笑)
そしてどうやらフラグが立ったようです。初登場からフラグ立てるセルシュヴィーン。ちょっと尊敬します(笑)
次回はメルスティア視点に戻って城に行きます。