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入団試験

 ブックマークありがとうございます!

 説明係の文官がやって来た。


「試験内容は、この奥に居る聖騎士との一騎討ちです。採用か不採用かはその場で告げられます。一人ずつ私がお呼びしますので、それまでお待ちください。ご質問等はございますか?」


 誰もが首を横に振る。私も質問はない。要するに奥で一騎討ちして倒せばいいんでしょ?了解了解。


「それでは時間になりましたので、今から試験を開始致します。まずは──。」


 最初に女の人が呼ばれて奥へと入っていく。その人が向かった方を見ると霧が立ち込めているようだ。今は夏の半ば。霧が出来るような時期ではないはずだから、魔法だと思う。すぐに女の人の姿は見えなくなった。


────…暇だなぁ。


 5分位しか経ってないけど凄く暇。凄く長く感じる。

 …と、その時。遠くの方で大きな魔力が使われた。多分波動からして特大魔法。周りの受験者を見ると皆素知らぬ顔をしている。どうやらこの試験では当たり前みたい。一体女の人と聖騎士、どちらが使ったか分からないけど、対抗する魔力を感じなかったから終わったんじゃないかな。

 それを示すかのように文官が手にする魔法具が光った。


「それでは次の方──。」


 次は男の人のようだ。かなりの巨漢で、大振りの両手剣を背負っている。強そうだけど脳筋そう…。そう思った私は悪くないよね?


 男の人が行ってから、一人の女の人が話しかけてきた。


「ねぇ、貴女ってもしかして一般公募でこれ受けに来てるの?」


「はい。そうですけど…?」


 そう答えるとその人は同情するような目を向けてきた。


「そう…。毎年一人はいるのよねぇ。実は私も前に一般公募で受けたの。聖騎士の試験。申し込み用紙提出するときに止められたんだけど、そんなの聞かずにね…。自分は大丈夫、強いから、なんて変な自信があったし、ここに来て聖騎士じゃなくて騎士の試験を受けるのは嫌っていう変なプライドがあったから。今思うと本当に何考えてたんだろうって感じ。」


「はぁ…。」


 唐突に始まった経験談。そうなんだ…。一般公募で聖騎士の試験受けようとすると止められるんだ。ん?そういえば私も止められたような、止められてないような…。


「まあ、勿論落ちたんだけどね。だから今騎士団に所属している訳だし。瞬殺だったの。」


 女の人はカラカラと笑った。


「あ、えっと…。それは…。」


 お気の毒です、と言おうとして言い淀む。年上の、話しかけてくれた人に対して上から目線な気がするし。


「ま、それはいいんだけどね。騎士団に入ってこの話したら命知らずだねって言われたの。でも、私は後悔してなかったから別に気にならなかった。だからね、頑張って。もし、不採用でも聖騎士の試験に挑むことだけでも凄いことなんだから。これは先輩からのアドバイスってことで。」


「ご親切にありがとうございます。」


 ちゃんと礼をしたところでその人は次だと呼ばれて行った。


────何か、まるで私が落ちること前提だった気がするのは気のせいかな。


 心の中で小首を傾げてそう思った。




★°٠*。☆٠°*。★°٠*。☆٠°*。




 それからも次々と名前を呼ばれていって私とあと一人、男の人が残った。そしてまた、その人も呼ばれていく。私が最後になるみたい。そんなことを考えていて、ふと思ったことがある。


────誰も戻って来てないよね…?


 そう。誰一人としてここに戻ってきていない。きっと別の道から戻っているんだと思うんだけど…。もし、そうでなかったら…。杞憂で終わるといいんだけど…。一抹の不安を覚える。

 その不安は一人残されたという状況が後押しして大きくなってゆく。

────だめだ。このままでは緊張しちゃう。


 私は今まで公爵令嬢クリスティーナとして王家の人と何度も対面してきたし、ある程度人前に立つこともしている。それは前世でも同じだった。だから、緊張はあまりしない方。でも緊張するときは尋常じゃないほどしてしまう。そんなことでヘマをするわけにはいかない。


────この不安と緊張を無くすには…。


 そして思い付いた。相手の様子を探ればいい。それをしてたらそっちに集中するし相手の情報も得られるから一石二鳥じゃん!うわっ!私天才!


────…スミマセン。調子乗りました。


 でもこれはなかなかにいいアイデアだと思う。早速魔力を森に薄~く、薄~く広げる。相手に悟られないように。でも確実に相手を探れるように。


────…いた!


 見つけた。七つの人の気配が一ヶ所に固まっている。1対6で向き合っているから聖騎士は六人だろう。

 っていうか、明らかに魔力量が違う。歴然の差がある。二つの気配が動いて…。一瞬で一つの気配が弱々しいものになった。魔法は一切使っていないみたい。魔力の波動が感じられない。


 視界の端で何かが光った。文官の手にある魔法具だ。私の番か。


「それでは、メルスティア・カルファ殿。奥へ。」


 示された方へ向かう。もう不安や緊張はない。寧ろワクワクゾクゾクしている。少し早足になったのは仕方ない。

 私に濃い霧が纏わり付く。不快感を覚えたので魔法で相殺すると一気に霧が晴れる。案外見通しはいい。十数メートル先に人がいる。六人立ってこちらを見ている。

 思わず笑みが溢れた。だって強そうだもん。オーラがビシバシと伝わってくる。でも力量の隠し方が上手い。隠密でもやれるんじゃないかってぐらい。


 やがて聖騎士たちの前に着いた。すると、真ん中の一人の男の聖騎士が最初に口を開いた。


「説明は受けていると思うが、改めて。君にはこの内の誰か一人と一騎討ちをしてもらう。それを見て採用かどうかは判断する。まあ、今の所は見てもらえば分かると思うが全員不採用だ。」


 辺りに目を向けると、私より先に行っていた騎士たちが痛々しい姿で転がっていた。でもちゃんと端に寄せられてある程度の応急処置がされているのは流石と言える。でも、何より目が行ったのはその攻撃された箇所。急所から外されている。でも確実に一発で意識を刈り取れる場所。凄いね…。


「それでは試験に移りたいと思うが…、そうだな。最後だし、特別だ。相手を選んでいいぞ。」


「そうですか…。では、その方を。」


 そう言って私は話している人の二つ左にいる熊のような男の人を指し示す。


「いいだろう。ザラド、ご指名だ。行っていいぞ。…?ザラド…?」


 ザラドと呼ばれたその男の人はピクリとも動かない。フフフ…。


「おい、どうした。…どういうことだ?君は何かしたのか…?」


 怪訝そうに私を見てくる。やっと気付いたか~。もう待ちくたびれちゃったよ。ニッコリと微笑みを返す。


失われし夢幻世界(ロスト・ワールド) 解除。」


 パリンッと音を立て、鏡が割れるかのごとく周りの景色が()()()()()。そこに現れたのは森。先程と何ら変わらない森。只一つ、違うものを挙げるとするならば私の前に倒れている男だろうか。そう。私の足元にはザラドが倒れているのだ。


「この勝負、私の勝ちで宜しいので?」


 一応尋ねてみる。そんなに驚かなくても言いと思う。ただ単にさっきまで自分の側に立っていた人が、目の前で倒れているだけだから。皆して絶句することでもないかと…。


「…え、ええ。」


 最初に立ち直ったのは女の人。何とか声を出した感じだけどね。


「一体何を…?」


 まだ驚いているみたい。そろそろこっちに戻ってきてほしいかな。でも質問は受けたから、ちゃんとお答えしなくっちゃね!


「それでは種明かしを致しましょう──。」

 これはやらかしたの部類に入るのでしょうか?私には判断が難しいです…。


 やっとこれを書けました!もうずっと書きたくて堪らなかったのですが、本当にもうやっと書けました!


 次話はメルスティアの独壇場です。さて、からくりは如何に──?

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