騎士団入団試験の前に…
ブックマークありがとうございます!これからの活力ならぬ、執筆力になります!(笑)
9の月10日。空は快晴。秋の暑くもなく寒くもない心地よい風が柔らかく吹いている。
とうとう待ちに待ったこの日がやってきた。今日はパン屋はちょうど定休日。朝早めに起きて身支度をする。
今日着るのはケリドウェンにやってきた最初の夜に着ていたトップスとパンツにローブ。実はこのローブ、チートの結晶なんだよね。物理攻撃反射、魔法攻撃反射、耐火、耐水、防汚、等々覚えきれない程沢山付与されている。誰がしたかなんて、言うまでもなく私。本で読んでからずっと試していたら、こんなことになっていた。
一応杖を持っていくことにする。この世界で魔法を使うには媒介となるものが必要。主なものは杖。大小様々なんだけど。でもこれには例外があって、媒介が必要ない人が存在する。例えば私。私ってこんなところでもチートだったんだよね。もう今さらだけど。勿論これには条件がある。魔力量が一定以上ないといけない。私はどうかって?余裕で軽々と越えてますよ~。
私の杖は簪になっている。銀がベースになっていて白銀の真珠と漆黒の黒真珠があしらわれている。シンプルなんだけど上品。取り敢えず髪をさっと結い上げて簪で纏める。これで杖を使う時に髪が邪魔になることはない。
剣に関しては…、競技場の方で取り出せばいっか。私が帯剣して大通り歩いてるの見られたら何か面倒そうだもんね。
一通り身支度が終わり朝食を摂る。ジルバのパン屋で残ったパンにアルマさん達からのお裾分けでもらった卵を目玉焼きにして食べる。ザ・朝食って感じ。
朝食の後片付けをして外に出る。試験会場に向かうのにはまだ早い。今から向かうのは森。腕が鈍ってないか確認しなきゃだしね。
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街の南に位置する森は崖の上。某アニメ映画のお魚さんの女の子はいません。森ですから。…スベりました。ごめんなさい。
崖の上まで飛んで森の奥に入ると開けた場所があった。ここならいろいろやっても大丈夫だよね。
取り敢えず両手に魔力を集める。私の中の濁りのない純粋な魔力だけが引き出され魔力の塊となる。そしてそれを近くの木に向けて放つ。木は一瞬にして木っ端微塵になった。その衝撃で森にいた鳥たちが一斉に飛び立った。
あぅ、ごめんなさい。結界張るの忘れてた。慌てて周囲に結界を張る。魔力遮断、防音、幻覚で大丈夫だと思う。森は後から再生させればなんとかなるし。取り敢えずは人がここに来ないことを願おう。
光魔法の上級魔法である雷を放つ。某ゲームのポ○ットに入る○ンスターの10○ボ○トみたいなやつ。これ凄い派手なんだよ。バリバリ音がして存在感強調されまくり。
水魔法で木の水を全て取り出すと、水を失った木は瞬く間に枯れ果てる。
そこで植物魔法を使ってその枯れた木の成長を強制的に進めると元に戻るどころかもっと生き生きとした感じの木になった。
風魔法で木の葉という葉を全て枝から切り離す。勿論枝や幹には余計な傷は付けていない。
そして残った木の幹たちをひとつ残らず焼き尽くす。
闇魔法は今はいっかな。辺り一面何もない焼け野原になってしまった。ま、いっか。どうせ再生させるし。
魔法はこのぐらいにして、次は剣かな。私が使うのはレイピア。ミスリル製で切れ味がいい。それに何度も私の魔力を馴染ませてるから使いやすいんだよね。魔法で作り出した異空間(面倒臭いから亜空間でいいや。そのままだけど。)からレイピアを取り出す。
────うん。これこれ。手に馴染む。
それから数十分ほど型の確認とか剣舞とかをした。そろそろ時間だと思う。行こうかな。レイピアを亜空間に閉まって歩き出そうとしたところで気がつく。
────再生させるんだった。危ない危ない。忘れてた。
私は地に手をつき、混合魔法を発動する。ここら一体を再生させる魔法は光、水、植物、大地の混合魔法。私の魔力によって森が蘇る。焼け野原で赤茶けた土が栄養を含んだ黒い土に代わりそこからポコポコと芽が生えてくる。それらはあり得ない速度で一気に成長した。これもあれだね。某アニメ映画の5月生まれの姉妹がお化けと一緒にぐんぐんやってた感じ。辺りは私が来たときと同じ、いや、それ以上に立派な森に戻った。
────これで大丈夫。
周りより少し生き生きした森を後に私は試験会場へと足を向けた。
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さて、今私が居るのは建国祭で来た競技場。私の目の前には沢山の人が並んでいる。例えるなら、うーんそうだね、超人気アトラクションの長蛇の列みたいな?でも進む速度は速い。周りを見ると手に何やら紙を持ってるからそれを受け取ってるのかな。
すぐに私の番が回ってきた。
「あちらの記入場所でこの用紙に名前を書いて希望する隊の番号を選んでください。質問は近くにいる文官にお願いします。記入が終わったら隣の受付に提出してください。…どうぞ。」
そんな言葉と一緒に紙を渡されて列を抜ける。案内された記入場所に行って羽ペンを手に取る。インク壺に浸けて名前を記入する。するとインクの独特の匂いが鼻をくすぐった。
────ん?何か違う…?
匂ってきたそれは私がクヴァシルで使っていたインクの匂いとは違う。別に公爵家だったからお高いの使ってた訳ではない。基本的にこういうインクは一種類しかなかったから。でもこのインクは違うようだ。多分素材が違うんだろうけど、詳しくは分からない。こんなところもケリドウェンの方が進んでいるみたい。
名前を書き終えて次の欄を見る。そこには1~12番隊という項目と聖騎士の項目があった。そういえば聖騎士って騎士とどう違うんだろう。聞いてみるかな。
「あの、質問なんですけど…。」
「はい、何でしょうか。」
おっと。真面目そうな文官だ。
「聖騎士って騎士とどう違うのですか?どこを選べば良いのかよく分からなくて…。もし良ければお勧めも教えていただけますか?」
「はい、構いませんよ。そうですね。まず騎士ですが、基本的に剣などの武器を使っています。魔法がそこまで扱えなくても入れますね。魔法が扱える者は大抵宮廷魔法使いになりますし。そして聖騎士ですが…。一言で言えば所謂エリートでしょうか。剣などの腕も魔法も一流の者が集まっております。例として挙げるならば大元帥様やジルベルト様ですね。
お勧めですね…。お勧めとは言えませんが参考までに。聖騎士に一般公募で受かった方は少ないですね。過去に片手で足りるくらいだったかと存じおります。基本的に騎士の方が昇格試験という形で今回のような試験を受けて聖騎士に昇格する方が多いですから。もし聖騎士の試験を受けて落ちても騎士になれる実力があれば騎士にはなれますので、受けてみても良いかと。ですが一般公募で聖騎士の試験を受ける方はほとんどいらっしゃらなかったと記憶しております。
…参考になりましたでしょうか。」
「…あ、はい。ご丁寧にありがとうございました。」
思ってたより丁寧に説明してくれた。一礼してお礼を言い、改めて紙を見る。
────どうしようかな…。
聖騎士と騎士。多分聖騎士は受かると思う。自分で言うけど私チートだから。でも受かったらかなり注目されるよね~。仕方ないかなぁ。う~ん、悩む。
数分ほど悶々と考えた結果聖騎士の試験を受けることにした。
聖騎士の欄に印を付けて受付に出しに行く。私の申し込み用紙を受け取った人は軽く目を見張った後、小さく笑う。これはちょっとバカにした笑いだな。さては私が無謀なことしてるとか思ってるんでしょう。
「メルスティア・カルファさんですね。え~っと…、その武器は使わないので?」
言われてはっとする。レイピア仕舞ったままだった。慌てて亜空間からレイピアを取り出して見せる。するとまたその人は驚愕の表情を浮かべた。だってこんな小娘が亜空間持ってるなんて誰も思わないもんね。
「これを使います。」
「…分かりました。では聖騎士の試験は試験場が別になりますのでこちらに向かってください。…御武運を。」
地図を示された。会場は競技場の外らしい。多分城が所有する森だろうね。何かさっきまで森に居たよね私。また森か…。
とにかく教えてもらったところに向かう。着いた所には既に何人かの人がいた。皆さんお強そうで…。パッと見た感じ騎士じゃないのは私だけのようだ。ま、気にすることないか。
9の鐘が鳴り響き、鳥たちがバサバサと音を立てて森のあちらこちらから飛び立った。
騎士団入団試験の始まりだ──!
試験の内容までたどり着けませんでした。きっとメリーのチートな装備と真面目すぎる文官のせいですね。文官モブなのに…。解せぬ…。
次話は試験受けます。さて、メリーはやらかすのでしょうか、やらかさないのでしょうか──?
次話も読んでくださると幸いです。