建国祭 ⒍
大変遅くなりましたっ!しかもいつもより少し短めです。スミマセン…↷
感想やアドバイスをくださると助かります。よろしくお願いいたします。
メルスティア→インディの視点になっています。
『騎士団』が『騎士隊』になっていました。すみません。『騎士団』に修正しました。
『ジルベルトさん』から『ジルベルト様』に変更しました。 7/27
静まり返る会場。そこには熱気だけが手を離れた風船のように漂う。舞台は土煙に包まれており、どちらが勝ったのか誰にも分からない。
やがて土煙も収まって人影が見えてきた。二人立っている。立っているけれど一人の手には剣はなかった。ジルベルト様の手には。
勝者は大総帥様。接戦に見えたけど、圧倒的に強かったんだと思う。私じゃ太刀打ちできないだろうな。
ふと、降参したジルベルト様がこちらに目を向けたような気がした。でもそれはほんの一瞬のことだったから、偶然だと思うけど。
勝負が見えて一拍の沈黙。そして割れんばかりの拍手喝采。客席はスタンディングオーベーション。大元帥様にもジルベルト様にも絶賛する声が飛び交っていた。
「どちらもお強いなぁ。この二人がいてくれるなら、この国は安泰だ。」
あちこちからそういう声が聞こえてきた。平民からも、貴族からも。国中の人達が信頼を寄せているのが分かる。平民からは疑惑しか向けられていなかったクヴァシル皇国との違いがこんなところでも顕著に現れている。
また司会の二人が出てきた後は国王のお言葉。所謂あれだね。学校の全校集会での『校長先生のお話』的なやつ。面倒くさかったから国王様が出てくる前にそそくさと退散した。えっ?仮にも元公爵令嬢がそんなことで良いのかって?いやいや、それ以前に私、元日本人だよ?校長とか学長とか部長とか社長とか…、偉い人の話なんてもう聞き飽きたから良いの!
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❰王国騎士団入団試験❱
―条件―
身分及び性別問わず、武芸、魔法に腕のある者
満14歳以上
―入団試験日時―
9の月10日 9の鐘
(受付は8の鐘より開始)
―試験会場―
競技場
―受付場所―
競技場出入口
―注意事項―
武器の携帯必須
怪我等は自己責任とする
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エミリーはこの後用事があることを思い出したと言って先に帰った。一人ぽてぽてと歩いて城門の方へ向かう途中、こんな張り紙を見つけた。私の口の端が上がったのは言うまでもないと思う。
さて、薄々気が付いていると思うけど私がこのケリドウェン王国に来た理由について話そうと思う。
一つは勿論、クヴァシル皇国が男尊女卑国だったから。
そしてもうひとつの理由がこれ。この張り紙にあるもの。この国の騎士になりたいと思ったから。
クヴァシル皇国が男尊女卑国だったから、という理由だけだったら別にケリドウェン王国に来なくてもいい。クヴァシル皇国はケリドウェン王国と別にあと二国と接しているからそっちに行っても良かった。でもケリドウェン王国の騎士は実力があれば誰でもなれるし、ちゃんと出世もできる。過去に他国のスラム出の人が騎士団長になったこともあるって聞いたしね。だから(自分で言うのもなんだけど)チートな私にすっごく合ってるってわけ。
というわけで、私、メルスティアはここに宣言します!
────これ受けて騎士になる!
「お、嬢ちゃんこれに興味あるのか?」
「ふぇ?」
おっといけない。間抜けな声が出てしまった。宣言してるところで急に声かけられたらこうなるよね。…ならないなんて言わないで。嘘でもなるって言おうよ…。
振り向くとそこには男の人がいた。服装からして多分騎士の人かな。簡易的な鎧を身に付けている。
「えーと、はい。受けてみようかなって。」
「へ~、そうか。ま、頑張れよ!実力ありゃちゃんと認めてもらえるからさ。」
ちょっと面白そうに言って去っていった。この反応は無理もないかな。だって私の今の姿からじゃ想像できないだろうもんね。こんないかにも女の子です!って服着てるしね~。
てか、何だったんだろう。
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城門をくぐって大通りを通りながらエミリーの家に向かっているとインディに会った。インディもさっきまで競技場にいたそうだ。気付かなかったなぁ。
「そういえばインディ、誰と行ってたの?」
ふと疑問に思って尋ねてみる。きっとカイザー君とでも行ったんだろう。インディはよくパン屋の隣の店の息子さん、カイザー君といる。少なくとも私が見たときは大抵二人でいるから、凄く仲が良いんだろうな。そのカイザー君だけどいっつもしゃべってる気がする。常にインディが聞き手に回っているから、時にはカイザー君が聞き手に回れば良いと思う。
「あぁ~、俺ねぇ…。一人で行ってたよ。カイザーは妹連れて行かなきゃいけなかったから。メルスティアはエミリーと行ってたよね。」
ちょっと口ごもったインディ。何かあったのかな…?
「そっか。一人だったんなら声かけてくれれば良かったのに。」
ちょっと笑って返すとインディは視線を彷徨わせた。やっぱり何かあったんだろうな。深くは聞かないほうが良さそう…。
その後少し話をして別れ、エミリーの家に向かった。着いたのはエミリーより私の方が早かったみたいで、エミリーはまだ帰ってきていなかった。
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家に帰る途中でメルスティアを見つけた。少し遠くだけど分かる。濡れ羽色の髪が夕日を受けて少し赤みがかって輝いていた。
歩くスピードを速めてあくまでも自然に見えるように話しかけた。すると、一人で行っていたのかと聞かれた。狼狽えたのは言うまでもない。考えてもみてくれ。好きな子にさ、一人寂しく行ってました、なんて言えるわけがないだろ。ちょっと言葉を濁して返す。
次いでにエミリーと来てたんだってな、的なことを言うとちょっとメルスティアの表情が変わった。この三ヶ月で分かったことだが、これは俺が悲しくなることを考えている時の顔だ。どうせエミリーのこと気にしてるんだ~、なんて考えてるんだろう。俺が気にしてるのはメルスティアなのに…。全然伝わらないし。
終いには声かけてくれれば良かったのにって。いや、掛けたかったに決まってるから。でも掛けられなかったんだよ。舞台挟んで対角線上にいたからね?しかも声かけたらエミリーに揶揄われるだろ。それに加えて声かけたとしても何話していいか分からねーし。
結局メルスティアとは途中で別れて家に帰った。家で迎えてくれた母さんが俺の顔を見て何て言ったかは言わなくても察してくれると助かる…。
インディやっぱり不憫です。次いでにヘタレです。がんば。
新しく「大罪人は元王女様」を始めました。主人公である王女ソフィアが祖母である女王を殺したと女王殺しの冤罪を着せられ、地球に追放された。追放された先は福岡。そこから祖国へ戻るために頑張っていく話です。もし宜しければこちらも読んでいただけると幸いです。URLです↓
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