建国祭 ⒋
結論から言うとあまり進んでいません。魔法について書くのが楽しすぎて…( ̄∇ ̄*)ゞ すみませんm(_ _)m
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神秘的かつ幻想的な光景の中、七人の宮廷魔法使いが中央に集まってくる。七人は円を描いて向き合うと、杖を高く掲げた。そこからどっと勢いよく七色の竜が天に昇ってゆく。竜が現れると同時にその波動がビリビリと空気を震えさせた。
神々しく輝く光の竜。荒々しく燃え盛る火の竜。清らかなる流れを感じさせる水の竜。所々に鈍く輝く鉱石を散りばめた大地の竜。辺りを巻き込み旋風を巻き起こす風の竜。鮮やかな緑に色とりどりの花々が咲き誇る植物の竜。全てを吸い込んでしまいそうな闇の竜。
互いに絡み合いながら天へと昇ってゆく。やがて七色の光が混じり合いひとつになると、一度圧縮されたように縮んで次の瞬間大きく弾ける。空の闇が晴れ、存在を強調するかのように太陽の光がさんさんと降り注ぐ。目が眩み、思わず手を翳した。
次の演目が始まった。テーマは〖天空〗だったっけ。舞台にはいつの間に出てきていたのか数十人の宮廷魔法使いがいる。先程の大きな杖とは違い、タクトよりやや長い杖を手にしている。その杖を皆が一斉に掲げ、そこから魔法が紡ぎ出される。
まず出てきたのは火の鳥。大きく翼を広げ舞い上がる。その長い長い尾は火の粉を散らしてたおやかにゆれ動く。不死鳥って言うより火の雀っぽい。それに長い尾を付けたみたいな。
そして現れたのは水の鳥。こちらは白鳥のように長い首をしている。
二羽は戯れるように飛び交う。飛び散る火の粉を水飛沫が消してゆく。
そこに緑の大きな鳥が割り込むようにして飛び立った。その鳥の軌道には色とりどりのきらびやかな花弁がはらはらと舞い散る。赤と青と緑が雲一つない澄みきった大空を舞い踊る。さっきの幻想的なものとは違い、生き生きとした躍動感が伝わってくる。
下から何人もの魔法使いたちが空を切って飛び上がってきた。まるで弾丸のようなスピードだ。その背には様々な形を模した羽が付いている。妖精のように透き通ったものや鳥のように柔らかなもの、竜のように先の尖ったものと、それぞれだ。多分それらは演出のため。
羽なんて無くても魔法さえあれば人間は飛べるからね。実際私飛べるし。うふふん。
彼らは杖の先から魔法で光の帯を紡ぐ。一人一人のそれは細くて頼りない。でもそれらがたくさん集まってひとつの形を作っていく。段々と集まっていき創られたのは…。
────虹だ…!
情熱の赤に弾けるようなオレンジ、幸せの黄色に癒しの黄緑、優しさの緑に信頼の青、そしてミステリアスな紫。純粋に光魔法だけが使われている。私はこの世界で一度も虹を目にしたことがなかった。
虹のでき方は知っていたけど、創れば周りに魔力量がばれてしまうからやらなかった。確か、太陽の光が空気中の水滴によって屈折とか反射とかするときに水滴がプリズムの役割をするから、光が分解されて七色に見えるんだっけ。多分そうだったと思う。
日本人だったときにホースの水撒いて虹だ!ってやったことがある。今じゃ魔法で光を強制的にねじ曲げて見れちゃう。魔法ってやっぱり凄いな。
三羽の魔法で創られた鳥がその虹を取り囲むように旋回する。そして虹に吸い込まれるようにして消えると、虹はまるで飽和したかのように端から光の屑をキラキラと溢しながら消えてゆく。光の屑は会場全体に降り注いだ。
「うわぁ…!綺麗…!」
ほぅ、と感無量と言わんばかりにエミリーは溜め息をつく。その手のひらには赤い光が仄かに輝きを放っている。その横顔はまるで恋する乙女そのもの。
────エミリーはインディが好きなのかな?なんて…。フフッ!
こんなことを思ったのは無理もない話だと思う。興奮して赤みが差した頬にうっとりと細められた目。端の上がった口元はそう思わざるを得なかった。本人はただ単に魔法を楽しんでいるだけなんだろう。でも端から見ると恋する乙女なのだ。
思わず頬が緩んでいるとエミリーがこちらを向く。
「ねえ!メリー、来て良かったでしょ?こんなに素敵なんだもの。マイエンジェルであるハリスには叶わないけどすっごく綺麗でしょ?」
前半は良かった。私は見に来て良かったって思ってる。ましてやエミリーにこんな特等席まで案内して貰えて。でもね、言わせてよエミリー…。
────そういえば貴女ってブラコンだったね!それも極度の!今の今まで忘れてたよ!前半で止めておけばすっごく良い絵だったのに…!ガラガラと崩れていっちゃったよ!
喉元まで出てきた言葉をすんでのところで飲み込む。でも心のなかではがっくりと項垂れている自分がいる。その後ろをピュ~と木枯らしが吹き去って…、じゃなくて!さっきまで頭のなかを占めていたものがすっかり抜け落ちて思い出せなくなってしまった。何かを訊こうとしたような、してないような。まあ、いいか。
「うん。凄く素敵。走って見に来た甲斐があるよ。」
冗談めかして言うと、エミリーはニヤリと笑う。
突然空から金と黒の光が目に入ってきた。宮廷魔法使いたちは上空で二手に別れて杖を掲げていた。私から見て左手の方では金の光が、右手の方では黒の光が。何人もの魔法使いが金の光だけに、もしくは黒の光だけに魔力を注いでいっている。その半端でない膨大な魔力の波動に圧倒される。〖魔法の起源〗のときや七色のドラゴンが現れたときの魔力なんて比にならないくらいビリビリと、いや、バリバリと波動が伝わってくる。
魔力が少ない人は魔力の波動をあまり感じない。でも私は多すぎるのだ。だから嫌というほどに感じる。ちゃんと訓練したら耐えられるんだけど…。今までしてこなかったからなぁ。しておけば良かった。
やがて二つの光は巨大な竜になった。最初の竜の十倍以上は大きい。
────極大魔法だ…!!
一気にゾワワッと鳥肌が立った。反射的に腕を擦る。心臓がドクドクと早鐘を打つ。自然と呼吸が浅くなってくるように感じる。周りの音が遠ざかっていく。自分の心臓の音だけが耳に届く。今までに味わったことのない緊張感が私を支配した。
魔法の練習は誰にも見つからないようにこっそりとやってきたから極大魔法なんて使ったことがない。見たことさえも。ただ知識として知っているだけ。どれ程に憧れたか。
二度の人生の中で初めて見る極大魔法。気持ちがどんどん昂ってくる。どうしてもよく目に焼き付けたくて目を凝らすと、無意識に魔法を使ってしまったようで視界がくっきりと鮮明になる。魔法が作動してしまったなんて気にしていられなかった。
二頭の竜は大きく大きく会場を駆ける。金と黒の光がふわふわと降り注ぐ。段々と小さく駆けるようになり、やがて重なり合うようにして一頭の、空を多い尽くすような光と闇を湛えた神々しく輝く竜となった。
『──ここ、ケリドウェンの国民に、安寧と希望溢れる未来があらんことを!!』
宮廷魔法使いの一人が拡大魔法を使って祝詞を唱える。祝詞であるのはこの極大魔法が祝福の魔法だから。
竜は咆哮を上げるように大きく体を震わせると一瞬のうちにして弾けた。金と黒の光が会場を越えて街全体に降り注ぐ。もしかしたら国土全体かもしれない。
私は緊張が解けて体から力が抜けた。まだ心臓は煩いし息も荒い。勝手に目に熱いものが込み上げて来て頬を伝う。何と表せば良いんだろう。感動?満足?感無量?そんな言葉では到底足りない、表せない。
ただただ思いを言葉にできずに笑うことしか出来なかった。
「違います。けれど、同じです。」の改稿が終わりました。もし宜しければこちらも読んで頂ければ幸いです。(↓一応URLを…)
https://ncode.syosetu.com/n5794et/
インディの小話を期待してくださっていた方、申し訳ありません。次話の内容を踏まえて出したいと思っております。今しばらくお待ちください!お願い致します!(ペコリ)