建国祭 ⒊
やっと更新できました。誤字脱字や内容のおかしなところがございましたら、ご指摘いただけると幸いです。
瞬く間に緊張の糸が切られ、五組の剣がキンッと高い金属音を立てぶつかり合う。これは某フェアリー達がやっていたあれか!と思うほど寸分の狂いもなく、揃った動きで騎士の体が動く。
最初はゆっくりとした動きから始まり、段々と速さを増していく。
私は最初、スクリーンの方で見ていた。でも、段々速くなってくると、騎士たちの動きも大きくなっていってスクリーンじゃ入りきれなくなる。直接舞台を見下ろすと、その迫力が直に伝わってくる。
最初は剣が振られる度にブンッという音がしていた。でも今ではシュッとまるで空間を切り裂くような音が聞こえてくる。多分、私の周りの人には聞こえてないと思う。私は今五感を魔力で強化しているから聞くことができる。うふふん。私の特権。
────それは別にいいんだけど!
彼らの鋭い足さばきに合わせて土埃が弧を描いて舞う。日の光を受けて剣が煌めき、軌道が残る。
それからも動きは激しくなり交差する剣が立てる音もどんどん高くなっていく。終いには火花までもが散る。
────最初からここまでクオリティが高いって、このあとどんなものが待ってるの?!
心の中でそう叫んでいると、一際大きな音を立てて剣が交じり合う。その状態でピタリと静止する。会場全体が息を飲んで見守っていたようで、静寂が辺りに広がる。そこに一陣の風が舞い込んで微かに土埃を立てる。それを皮切りにしたように会場は一気に歓気の渦に包まれる。一部ではたっている人、いわゆるスタンディングオーベーションしてる人さえもいる。
私だって鳥肌が立ったのは言うまでもないと思う。だって、想像の遥か上を行ってたんだもん。クヴァシル皇国で見た剣舞なんて霞むぐらいだよ。
剣舞を終えた十人の騎士はこれまた揃った動作で剣を鞘に納めると、一礼して舞台から去る。拍手の嵐に送られていった。
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そしてまた最初の男女──面倒だから司会でいいや──が出てきた。
『皆様、いかがでしたでしょうか?我が国の誇る騎士団の精鋭による剣舞!!毎年これに出るために選抜オーディションがあるのですが、もう、それはそれは凌ぎを削った闘いになっております。今年も熾烈な闘いが繰り広げられましたよ!
さて、それでは次へ移りたいと思います。次は宮廷魔法使いによる毎年恒例、〖魔法の起源〗。そして続けて大魔法等による華麗な演出をお楽しみください。…はい。…何々?今年のテーマは〖天空〗ですか。皆様!聞こえましたでしょうか。今年のテーマは〖天空〗だとのこと。我々騎士団は知らされておりませんので、非常に楽しみです。
それでは、華麗なる魔法の神秘をご覧あれ!』
途中で後ろの女性が声を掛ける。うん。打合せしておこうね。それより、〖魔法の起源〗か…。クヴァシル皇国では文章の中でしか出てこなかったからなぁ。ワクワクする!
っていうか、剣舞って選抜オーディションあるんだ。凌ぎを削ってってどんなオーディションなんだろ。そっちを見てみたいな。
司会が退場していくと、会場の周辺が段々と薄暗くなっていく。
「メリー、始まるよ!私は毎年見てるんだけどね、すっごく綺麗で何て言うか、神がかってるの!どれだけ見ても飽きないし。私って平民にしては魔力多い方なんだけど、ここまでできるほどの魔力はないの。でもさ、すっごく魔力が多い人たちが何人も集まってやってる訳でしょ?これ。だからね、スケールがもう…!言葉が出なくなるから!」
エミリーが興奮ぎみに捲し立てる。この暗がりでもわかるぐらい頬を真っ赤に染めてしゃべる姿は幼く見えるけど、それがものすごく可愛い。
ニヤつく頬をなんとか抑えていると、辺りはもう真っ暗になった。これだけでもかなり高度な魔法だ。この国の魔法使いたちの優秀さが窺えた。
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『──最初に生まれたのは"光"だった。』
いつの間に出てきていたのか舞台の中央に白いローブを纏った男性がいる。手にはその男性の身長と同じくらいの大きな杖がある。てっぺんに淡く金色に光る、例えるならハンドボールぐらいの大きさの魔石が嵌め込まれていて、遠目に見てもかなり複雑な装飾の施されている。
その男性が杖を両手でゆっくりと、しかし軽やかに持ち上げる。そしてくるりと回転し、魔石の軌道が光となって残った後、シャンッと音を立てて杖の先を地面に打ち付ける。
すると杖に嵌め込まれている魔石を中心に柔らかいけれども芯のある光が辺りに溢れ出す。
もうそれだけで息をすることさえ憚られるほど美しかった。
光は薄いベールのようにゆっくりと広がっていき、静かに波打つ。その光から心地よい魔力の波動が伝わってきてうっとりとした気持ちにさせられる。
『──"光"は"火"と"水"を生み出し、"大地"を照らした。』
また一人の男性と二人の女性が出てくる。男性の方は燃えるような赤いローブを纏っている。女性は一人が深い青のローブを、もう一人が淡い茶色のローブを纏っている。
それぞれ"光"の役の男性と同じような杖を持っている。赤いローブの男性が持つ杖の魔石は淡く赤色に光っており、青のローブの女性が持つ杖の魔石は淡く青色に、茶色のローブの女性が持つ杖の魔石は淡く黄土色に光っている。
三人は同時に動き出す。赤いローブの男性──多分"火"の役だろう──は杖を地面に二回強く打ち付けた後、高く掲げる。青いローブの女性──多分"水"の役だろう──は流れるように杖を左右に振った後、同じように高く掲げる。ちょいローブの女性──多分"大地"の役だろう──は杖を地面に横たえ、片足を立てて跪き片手を地面にもう一方の手を杖に添える。
そして同時に三つの魔石から三色の美しい光が溢れ出す。赤と青の光は段々と形を成していき、赤い光は揺らめく炎に、青い光は流れる水となった。そして黄土色の光は舞台上の地面を覆うとそこに吸い込まれてゆき、大地を仄かに光らせる。
『──"火"と"水"は重なりあい、"風"を生み出した。』
また一人、黄色いローブを纏った男性が出てくる。手にする杖には半透明に光る魔石が嵌め込まれている。
"火"と"水"の二つがその杖の周りで渦巻いて重なりあう。その速度が最高潮に達したかと思うと銀の光が溢れ出す。その光はまとまって風となる。風になったばかりの方はかなりの強風だったが、段々と収まってゆき緩やかなそよ風となる。
自然と感嘆のため息が漏れた。こんなに幻想的な光景は今まで見たことがない。
────これぞまさに私が憧れていた魔法!はぁ~…。
『──そして"風"が命を運んでくると、"大地"には"植物"が生まれた。』
緑のローブを纏った女性が出てくる。風が女性が掲げる杖を包み込む。すると杖の緑に光る魔石から光が放たれる。女性が杖を大きく一振りすると大地から無数の草花が目を出し、ぐんぐんと成長する。ある花は可愛らしい花を付け、またある花はコロンとした実を付ける。
『──最後に、これらを照らす"光"によって"闇"が生まれた。』
黒いローブを纏った女性が出てくる。その手にある杖の先には淡く黒に光る魔石が嵌め込まれている。女性は魔石を下に向け、それはそれはゆっくりと一周する。その魔石の軌道に残った光が辺りに広がりそこに存在するもの全てに影を付ける。
『──こうして魔法はこの世に生まれた。』
私はこの素晴らしいとしか言いようがないものに唖然とし、言葉を失っていた。
目の前に広がる神秘的な光景は言葉では表しようがないほど圧巻で、美しく、壮大で、幻想的。もう単純明快な言葉しか出てこない。
でも、これだけは言える。
────この国に来て良かった…!!
不憫なインディ第二段、次かその次ぐらいで入れたいと思います。
あまりにも不憫過ぎるのですが、若干ストーカーっぽくなっている気がしないこともないです。アハハ…(;゜∇゜)