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時代小説 彦四郎と幽霊およう  作者: カワラヒワ
9/20

また、明晩も

 次の夜もおようは彦四郎の部屋にやって来た。

 一つに束ねられていた髪はまげに結い、唇に薄く紅を引いていた。

 顔色がいいように見えて、表情も明るく見える。

 彦四郎が茶をすすめると、言われるまま湯飲みに口をつける。

 彦四郎が微笑むとおようも微笑み返した。

 思った通り、かわいい笑顔だった。

「今夜の月はきれいだな」

 彦四郎が言うと、はい、と言って恥ずかしそうにうつむく。

 初めて会った時とは打ってかわってしおらしい。同じ幽霊とは思えないくらいだ。


 彦四郎はおようのことを知りたいと思った。

 しかし、辛い経験をしただろう娘に、色々聞くのもはばかれる。

 おようの方から話すのを待つのがいいのだろう。

 そんなことを考えると、その後の会話は続かない。

 彦四郎は、何を話していいのかわからず、所在なくうつむいてしまった。

 しばらく茶をすすっていたおようは、

「もう、おいとまいたします」

 そう言って席を立った。


「また、明晩も・・・」

 彦四郎が言うと、

「はい」

 おようは微笑んで答えた。

 彦四郎はもう少し、おようと話しがしたかった。

 おようも多分、そう思っただろう。

 しかし、おようは帰って行った。

 そのあと、おようが飲んだ湯のみの中を見ると、茶は少しも減ってはいなかった。 


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