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時代小説 彦四郎と幽霊およう  作者: カワラヒワ
18/20

ひとりぼっち

次の日、彦四郎は仕事を休んだ。

体はだるく、熱も下がらず仕事ができる状態ではなかった。

昼過ぎに留吉が心配して来てくれた。

「どうした? 今度は風邪か? いろいろ忙しいやつだな」

 留吉が笑って言った。

「たいしたことはない。もうほとんどいいのだが、今日は大事を取って休んだのだ」

 彦四郎はつらいのを無理して起き上がって笑ってみせた。

「顔色が悪いぜ。起きるな。寝てろ」

 留吉に促されて、彦四郎は横になった。

「医者には?」

「いいや、医者に見せるほどのこともない」

「飯は食ったか?」

「いや、いいのだ」

「食わなきゃ風邪が治らないぜ。ほら、これ食え。握り飯だ」

 留吉が笹の葉に包まれたおのぎりを、枕元に置いた。

「後で頂こう」

「じゃあ、おれは行くよ」

「ああ」

「大事にな」

「ありがとう」

 留吉は帰って行った。

 留吉は本当にいいやつだ。彦四郎は思った。


         *


 夕方になり、夜になった。

 彦四郎はずっと布団に横たわったまま、荒い息をして目を閉じていた。

(このまま死ねたら・・・)

 また、そんな考えがうかんだ。

 いや、おれにはまだ寿命があるのだ。待っている者のいるのだ。

「ははははは・・・」

 彦四郎は声を出して笑った。

(おれはひとりぼっちだ)

 生まれて初めて、心の底から寂しいと思った夜だった。


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