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時代小説 彦四郎と幽霊およう  作者: カワラヒワ
13/20

留吉

「大丈夫かい?」

 一緒に仕事をしている仲間の留吉が話しかけてきた。

 留吉は彦四郎が初めて仕事にきた時から、何もわからない彦四郎に色々と教えてくれた気のいいやつで、今も何かと気にかけてくれる。

「この頃、疲れがたまっているんじゃないのかい? 顔色も悪いし、何だかしんどそうだ」

 今は、午前の休憩中で、彦四郎は作りかけの家を眺めながら寝転んでいるところだった。

「ほい」

 そう言って留吉は湯飲みを差し出した。

「ありがとう」

 起き上がって湯飲みを受け取り、彦四郎は言った。

「近頃あまり寝ていないせいかな」

「女か?」

 留吉がにやりと笑って言った。

「まあ・・、そうだ」

 

めっきり朝晩寒くなった季節。夜明けは遅いし、日暮れは早い。休む時間はたくさんあるはずだったが、彦四郎の睡眠時間は減っていた。

 かんざしをおように買ってやったあの夜の一件以来、彦四郎は毎夜、おように会いたいと思った。

 いつか、おようとは会えなくなる。そう思うと一時でも会える時に会っておきたいと、彦四郎は思うのだ。

 仕事にもずいぶん慣れたし、体も楽になってきた。夕方早く帰って眠れば、夜中に起きるのはむずかしくないはず。

 そう、思った。そうは思っても、夜中に目を覚ますことができるのか気がかりで、すぐには眠れなくなった。やっと、うとうとしたところで夜八つの鐘が鳴る。

 近頃はこんな具合だった。


「ほどほどにな。でねえと、体がもたないぜ」

 留吉がからかうように言った。

「今度、会わせろ」

「ああ、いつかな」

 彦四郎は笑って言った」






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