神殺しの少女
少女(真美[マミ])視点で書かれているため彼女の容姿について書かなかったのでここで
年は14歳、金の髪に青い瞳の少女。小柄で150センチ程の身長。肌は白い。
私が何をしたというのか……。
「追え!まだ近くに居るはずだ!!」
私が何故追われなければならないというのか……。
「絶対に逃がすな!異端者を逃がせば我々に害が及ぶぞ!」
私が異端者? 何故? 私は皆のために……そのはずなのに……。
私は同じ村の人たちに追われていた。
姉妹、お父さん、お母さん、そんな人たちまでもが私を追ってくる……。
そう、それはあの日から
私たちの村には神様が居た。
外敵から村を守ってくれる神様、でも神様は対価を求めた。
毎年一人の生贄を……。
村の人々は毎年その生贄を決めるために争い、恐れ、そんな負の連鎖があった。
誰もが神様を恐れ……日々に疲れ切っていたはずだ。
だからこそ私は生贄に立候補し、神様の元へと向かい……神様を殺した。
その邪悪な顔つき、邪悪な眼、漆黒の髪に彩られるそれは私の知ってる神様とは異なっていた。
「貴様が今回の生贄か……ククク、全く人間は愚かよ……外敵から守る等と適当な盟約を交わせば簡単に要求に応える、それによって争い、我を恐れ、一人の生贄を差し出す。醜い、だがそれでこそ人間よの。その醜さもまた美味よ……ククククククククク」
人の負の感情を美味という神様、こんなの神様じゃない。悪魔だ。
だから私は神様を殺した……。
私に害意があるなんて夢にも思わなかったのか、幸い神様は隙だらけだった。私の方を見ず、ただただ静かに笑っていた。
そんな隙だらけである神様の心臓目がけて地面に落ちていた木の棒を突き刺した。
神様にも心臓があるのか……心臓に尖った木の棒を刺すと血を吐き、倒れた。
私は神様が恐ろしかった、こんなのじゃ神様は死なないかもしれない。
だから私は何度も刺した。
顔を、腹を、胸を、足を。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度もナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモナンドモなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんども!!
「ひぃっ!」
そんな時誰かの小さな悲鳴が聞こえた。
私のお母さんだった。生贄になった私の心配をしに来てくれたに違いない。
「あ、お母さん、私。死ななくて済んだよ! ううん、私だけじゃない、もう神様に怯える事なんて……生贄を毎年贈る必要なんて無くなったんだよ!」
「ひっひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
そのままお母さんは走り去った。
あれ? なんでだろう? あ、やっぱり神様が怖かったのかな……。
私は神様の“屍”の髪を掴み……近くの崖の上から投げ捨て、村へと戻った。
「血でいっぱい汚れちゃった……早くお風呂入って洗い流したいな。」
何が待ち受けてるのかも知らずに……。
「村が見えてきた! 私、生きて帰れたんだ!!」
そうして私は村への道を歩む。
だが……、
「え?」
嫌な風切り音が耳を掠めた。
見れば足元には弓が刺さっていた。こんなものさっきまであっただろうか?
「今のは娘のお前だからこそ外した……外してしまった……」
木の陰から誰か出てきた。お父さん?
「すまんな真美、死んでくれ……神殺しの罪はそうすることでしか償えない。」
「え? お父さん? これなんの冗談? 私は皆のために……」
「皆の為と……村の為というのなら死んでくれ……もう村ではお前を殺す為に多くの者が動いている」
「なんで!? そんなの馬鹿げてる! もう皆神様に怯えなくていいんだよ! 皆神様の事怖がってたじゃない! それを殺しちゃダメだったっていうの!?」
「あぁ。確かに皆神様を恐れていた……いや、今も恐れている。だからこそ死んだ後も安心したいから神への許しを得たいと思い、神を殺したお前を殺そうとしている……」
「そんな……もう神様はいなくなったのに!!」
「真美、選べ、私を殺すか私に殺されるか……正直私はお前を殺したくない、だが誰かに殺されお前の最後の瞬間に立ち会えないのも嫌だと思っているんだ」
「そんな……そんなのって……痛ッ」
そして背中に感じる激痛……なに?
背中を見れば矢が刺さっている、丁度背の真ん中辺りのところに。
「死んじゃえ!! お姉ちゃんなんか死んじゃえ!!」
「ごめんなさい、真美、あなたを殺さないと村は……私たち家族は救われないの」
お姉ちゃんと妹の亜紀の声。
振り返れば彼女たちが居た。
なんで……なんで私が……。
「え!?ちょっと待って!?何あれ?」
亜紀が私を指さして何か喚いている。
なんだろうと思ってみればふと痛みが無いことにきづく。
背中を見ればもう矢はない。私の後ろには血に濡れている矢が落ちているだけだ。
でもなんで?
「傷が塞がった……人間じゃない……」
「ば……化け物!!」
お姉ちゃんたちは私をそう呼び逃げて行った。
お父さんもそのままお姉ちゃんたちに付いて逃げて行った。
何!? 何が起こってるの? 私の体どうしちゃったの?
――――――――――――――――――――
それから私は村に戻ろうとしたが途中の道、多くの村人が殺気立った目をして私を睨んでいるのを見て足を止める。
「居たぞ! 神殺しの化け物だ! 殺せ!」
化け物……化け物と私を呼ぶ村人たち。
そして射かけられる火矢。
熱い、痛い、苦しい。なんで私がこんな目に逢わないといけないの。
私は皆の為に行動した!そのはずなのに!
――――――――――――――――――――
村の人たちから逃げ続けて3日。
もういっそ死んじゃった方が楽なのかもしれない。
でも死なない。火矢を浴びようと、崖から落ちようとも私は死ななかった。
いや、違う。
“死ねなかった”
でも私は逃げる。痛いのは嫌だ。捕まって村の人たちに痛められ続けるのはもっと嫌だ。
それに。
それに……、
私は村の為にやったのに! 誰も理解しようともしないで! 化け物バケモノと!!
お父さんもお母さんも姉妹も
みんなみんなみんな皆皆皆皆皆ミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナミンナ!!!!
なんであんな人たちのために私が痛めつけられないといけない!!
そんなのは間違っている!! おかしい!!
もう何も分からないまま間違っているとだけ思いながら私は逃げた。
明け方、逃げた先の山中に人の住んでいなさそうな小屋を見つけた。
ここで少し休めるかもしれない。
そう思った矢先、小屋から誰か出てきた。
漆黒の髪、漆黒の瞳、色黒の肌、全てが黒で彩られている男性。
服だけはそれと反対に白で固められていた。そのせいで彼自身は更に黒く見えた。
「誰だ!?」
「わ、私は真美、あなたは?」
いきなりの事にビックリしながら私は答える。
「俺は……ティフォンだ……ここで何をしている? それにその血はなんだ?」
警戒されてるみたい……でも血って……あっ!
神様殺した時の血がまだ残ってるんだった。
「お……追われていて……えっと……血は……」
神様殺したなんて言ったらこの人も私を殺そうとしてくるのかな?
でも言い訳も思いつかない。
「えっと……神様を殺しちゃって……その血です」
言った……言ってしまった。何も思いつかなかったとはいえつい……。
「神を……殺した……お前が?」
「は……はい……」
男はキョトンとした顔にしてこちらを見ている、信じられなかったのかな? それならその方がいいけど……。
「クックックック。あーっはっはっはっはっはっは、そうか!! 神様殺しちゃったか!」
なんかいきなり笑い出した。冗談だと思ってくれたのかな……。
とりあえず敵意は持たれていないみたい……良かった……。
「まぁ上がれよ、そんで風呂でも入っていけ」
「え!? いいんですか!?」
「ああ、お前に興味が湧いた。後で神を殺したときの話を聞かせてくれよ」
笑いながらそんなことを言ってくる。
やっぱり冗談だと思ってるのかな。
そう思いながら私はお風呂に入っていった。
――――――――――――――――――――
「へー、思ったよりかわいい感じじゃん。」
彼は外で星を眺めていたみたいだ。
お風呂から上がった私を迎えた第1声はそんな彼の感嘆の声だった。
「こんな子が神様殺したとはなぁ。ハッハッハ」
そう言いながら私の頭をグリグリしてくる。
私が150センチで彼が170センチくらいだろうか……簡単に頭に手を置かれてしまいます。
「ちょっ止めてくださいよぉ」
そんなことを言いながら緩みまくった頬を元に戻せない。懐かしく感じる、人の温もり。
「さて、話を聞かせてくれ、なんか色々あったんだろ?」
「あ、はい」
彼になら全部正直に話しても大丈夫じゃないだろうか。
そう思い、私は彼にこれまでの経緯を話した。
村に居た悪い神様の事。
神様を殺したこと。
村の人たちに追われていること。
「そうか……それで逃げてきたのか……」
「はい……」
彼はどう思うだろう……彼も私の事を異端者と呼ぶだろうか。
「真美、お前が色々話してくれたから言うが……俺は悪魔だ」
「はい……はい?」
悪魔? え? 何を言っているんだろう?
「正確には悪魔と周りから言われているだけなんだけどな、俺の体全体黒いだろ? 俺の居た村ではそんな奴俺しか居なくてな、それも相まって悪魔と呼ばれるようになった。
だからこそ俺はこの黒の体が嫌いだ、これのせいで周りから悪魔悪魔と言われてきた。幼いころからこれのせいで友達も出来なかったしな」
彼は自分の右手を掲げ、それを見つめる。
その瞳はとても悲しそうだった。
「こんな色の体じゃなかったら色々違ったのかなって色々考えちまうんだ。普通の体だったら幸せに家族や友人、恋人なんかと一緒に過ごせていたのかなって。まぁ考えても仕方ないことだってのは分かってるんだけどな。俺は……独りぼっちだった」
そのまま彼は膝を抱えて顔を埋めてしまう。
――私より辛そう。
私は神様殺すまでは他の村の人たちと一緒に生きてこれた。
生贄選んで送り続ける日々が辛いだけで私は村の皆を愛していたし愛されていた。
だからこそ私は村の為に生贄に立候補したんだ。
皆の為に何かしたいと思って……。
でも……この人は最初から辛かったんだ。
「なぁ真美、俺と……友達になってくれないか? お前となら上手くやっていけそうだ」
手を差し伸べられる。
この手を取りたい、取って彼とともに――“生きたい”。
「こちらこそ!これからよろしくお願いします!ティフォンさん!」
そうして手を掴む。掴んだ。これから彼とともに生きていくんだ!
次の瞬間
彼は崩れ落ちた。
背中には無数の矢。
彼の背後に見える私の村の人たち。
ナニガオキタノカワカラナカッタ。
「イヤ……イヤ……イヤ……」
ナンナノコレハ……ナニガオキテイルノ?
ナゼ! ナゼ! ナゼ!
「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ」
彼を抱き起す、まだ矢は射かけられてくる! まずは小屋の中へ!
「ティフォン! ティフォン! しっかりして!」
「ああ、人間の糞ったれめ……最後はこんな終わりかよ……」
「ティフォン! ティフォン!」
彼の名前を呼ぶ。
私は彼を失いたくない! もう彼しかいない! 彼しか神殺しの私を受け止めてくれない!
「まあ……でも……最後に俺の命を惜しんでくれる奴と出会い……看取られて死ねるのなら……悪くはないか……」
「ティフォン! ティフォン! イヤ! 死なないで! ティフォン! お願い! 私を一人にしないで! あなたが居なくなったら私! 私!!」
「あぁ……すまないな……真美……一人にしちまう……」
「ティフォン! ティフォン!!」
そうして彼の言葉は途絶えた。
何でこんなことに?
絶対間違ってる……。
何で?
何で? 何で? 何で? 何で? 何で? 何で? 何で? 何で? なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ!!
「あぁそっか……」
間違ってるんだ、この世界が
神様もみんなも間違ってるんだ。
間違っているのならどうしよう……。
正そう……正さないといけない……こんな世界。
幸い私には力がある。
この不死の体。
痛いのは嫌だけどティフォンの為、これからこんな惨劇を起こさないように……殺そう。
みんな殺そう。
お父さんもお母さんも姉妹もみんなみんなみんなみんなみーんな。
「殺そう……ふ、ふふふふ、アーッハッハッハッハッハッハッハ」
この日、少女は壊れた。
少女を動かすのは善意。それは神を殺した時も、今も変わらない。
しかしその善意はこの日、人類に対して害へと変わる。
少女は旅発つ。
全てを壊し、殺す為に。
ティフォンの小屋に残されたのは彼の亡骸。
彼の亡骸はとても幸せそうな笑みを浮かべていた。
村を追われる少女。悪いことをしていないのに世界が間違っているせいで周りから悪口を言われる少女の物語を少女視点で書いてみたくてこんな作品になりました。
自分の思ってたより楽しく書けました(笑)コメディよりこっち方面のが合ってるのかな?




