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 酒場は、ちょうどピーク時なのだろう。

 大変混んでいた。

 少し待って、席に案内される。

 まずはアストラはジュースを、テディールはアルコールを注文する。

 料理の品数は多い。そして、とても値段が手頃だった。

 そのせいなのか、酒場なのに家族連れも多かった。

 見れば、小さな子向けの料理もメニューに載っていた。

 居酒屋は二階建てで、一階もそれなりに広いのか奥には個室が用意されていて、二階は宴会用の広間になっているようだ。


 「いらっしゃいませ。本当に来てくれたんだ!」


 注文した飲み物をを持って現れたのは、リュウだった。

 テディールに、嬉しそうに笑顔を向けている。

 そして、アストラに気づき、彼が自分を助けてくれた人物であると思い出すと目を丸くした。

 アストラとテディールがスカウトの人間だとリュウも知っている。

 しかし、リュウのような落ちこぼれには縁が無さすぎる話なので、テディールがかまってくる以外は繋がりがなかった。

 

 「この前は送ってくれてありがとうございました」


 リュウは、アストラに向かってぺこりと頭を下げる。


 「あれ? 知り合いだったんすか?」


 テディールの疑問に、リュウが苦笑して答える。


 「テディールの時と似たような感じで助けてもらったことがあるんだ。

それじゃ、ごゆっくり」


 リュウは、すぐに他の席の客へ呼ばれ、そちらに注文を取りに言ってしまう。

 その姿を目で追いながら、ジュースに口をつけた。

 学校での愚鈍さをアストラも何度か目にしていた。

 それだけに、普通に働いていることに驚いた。

 別の店員に料理を注文し、しばらく雑談をして過ごす。

 やがて運ばれてきた料理に、頼んでいないものがあり店員に言うとリュウのおごりであり、この店の裏メニュー(まかない)と説明された。

 それは、鳥の皮にさらに味付けした豚の肉と野菜を炒めたものを詰め込んだ料理だった。

 異国の料理でトリカワギョウザと言うらしい。

 一口、恐る恐るかじる。

 鶏皮のパリッとした食感のあと、溢れる肉汁。甘辛いタレが絡んで炭酸のアルコールにとてもよくあった。


 「なんだこれ、なんだこれ!?

めっちゃ美味い!」


 「皮がぱりぱりで、中は熱々、アルコールにめっちゃ合う!」


 二人の反応に、店員が満足そうな表情になって教えてくれた。

 なんとこれ、リュウが提案したメニューらしい。

 ガツガツと食べているその光景を他の客も見ていて、裏メニューのそれであっという間に注文がいっぱいになってしまった。

 しかし、料理を運んできた店員の話が本当なら、少し違和感が残った。

 本当に、リュウは落ちこぼれなのだろうか、と。

 座学では簡単な計算すらよく間違えていると聞いていた。

 愚鈍な彼は、なんでも無いところでよく転ぶ。

 しかし、いまはそんな素振りはなく次々と注文を取り、間違うことなく配膳していく。

 さらに、だ。

 混雑する店の中で、店員同士あるいは客同士でぶつかる何てことも珍しくないのに、リュウは、一度も誰ともぶつからないのだ。

 これは、よく観察していなければわからないことだ。

 逆に、観察していたからこそわかったことだ。

 本当に彼が愚鈍なら、皿を割っていてもおかしくはない。

 本当に彼が愚鈍なら、注文を何度も間違えているはずだ。

 そして、本当に彼が使えない人間なら、とっくに大きなミスをして解雇されていても不思議ではないはずだ。

 しかし、見たところ彼は一度もミスをしていない。

 こういうときに、自分の意地の悪さが出てしまう。

 アストラは、手近にあった台布巾に魔法をかける。

 何てことはない、形を崩さない魔法だ。台布巾にを丸めその魔法をかけて、

気配を消し、投げた。

 リュウに向かって、投げた。

 常人なら反応できない速度だ。

 学園の生徒ですら、反応できるかどうかといった速度だ。

 ましてやリュウは、他の客の注文を取っていて、こちらに背を向けていた。

 反応できるはずなかった。

 しかし、その予想は簡単に外れることになる。

 彼は、不意にこちらを向いたかと思うと、普通に台布巾を利き手で受け止めた。

 そして、声を上げる。


 「どなたか知りませんが、店の備品で遊ばないでくださいよ!」


 これにはさすがにテディールも驚いていた。

 まさか、と思いアストラはあの板を取り出す。

 そして他の席にリュウが料理を運んできた来たときに、こっそりと反応を見てみた。

 しかし、反応はなかった。淡くも光らない。

 ということは、学校での態度は彼なりに何か事情があるのだろう。

 個人の事情に構っていられるほど、アストラは暇ではない。

 しかし、少しだけこの落ちこぼれ少年に興味がわいたのも、また事実だった。




 




  

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