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 ただ、見返したかったんだ。


 石を投げられるのは、痛いから嫌いだ。

 馬鹿にされるのは、心が痛くなるから嫌いだ。

 好きな女の子に良いところを見せたかった。

 誉められたかった。

 喜んで貰いたかった。

 愛して欲しかったんだ。

 それだけ、だったんだ。

 だから、それに触れた。

 彼は、その力に触れた。 

 でも、現実は残酷だ。

 いつだって、現実は理不尽で意地悪だ。


 少年はその光景を見る。

 自分の目の前に広がる光景を見る。

 度重なる戦争、どこかの国の負けた兵士達が盗賊になって彼の住む村を襲ったのだ。

 大好きな女の子が殺されかかった。だから、助けた。

 自分を虐めていた男の子が殺されかかった。それでも助けた。

 力を使って。

 力を奮って。

 見返すために手に入れた力を使って、盗賊達を蹂躙した。

 あぁ、これで仲間に入れる。

 彼は、そう思った。

 そして、もう一度、彼は自分を虐めていた村人達を見た。

 そこには、彼が救ったはずの命達がいた。

 そこには、彼に救われたはずの命達がいた。

 その命達は、彼の事を怯えた目で見ている。

 誰かが言った。

 バケモノ、と。

 大丈夫だよ、と微笑んだのに大人も子供も、彼を虐めていた者もそうでない者も、みんなが彼を恐れていた。

 誰も喜んでくれない。

 誰も愛してくれない。

 異物として、彼はその時も石を投げられた。


 そして、何もかもが面倒くさくなった。

 ひどく、全てがバカバカしくなった。


 その時だった。

 声が聞こえた。

 

 ーー消せーー


 ーー全てを消せーー


 ーー殺せーー


 声は、思考を奪う。

 彼から考える力を奪う。

 そして、彼から意識を奪った。

 


 

 気づいた時、彼が見たモノは血に染まった村だった。

 助けた、大好きな女の子が殺されていた。

 彼を虐めていた男の子も殺されていた。

 彼を虐げていた村人全員が、バラバラになって死んでいた。

 盗賊と村人、彼を除いた全員が殺されていた。

 見たことのない血の赤の中に彼は立っていた。

 その死の中に、彼自身も真っ赤に、血の赤に染まりながら立っていた。



 この日、とある小さな村が滅んだ。

 原因は古代魔法遺物(ロスト・テクノロジー)の暴走として、後日国に報告書が提出された。

 そこには、その村を滅ぼした人物の名前と情報が記されていた。

 それは、まだ五歳の孤児と言うことだった。



 

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