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小さな査察官

作者: 尚文産商堂

彼を知らないものはだれもいないと言っても過言ではないだろう。

彼は査察官。

魔術薬や魔術で使用する道具が、法律に則ったものかどうかを判断する役人である。

この査察官は、日本では、おおよそ3500人が働いている。

全員が神秘省の外局である禁忌官として登録されている。

禁忌官は、魔術の中でも、禁忌と呼ばれる魔術を公式に扱うことができる人たちであり、彼ら以外が使うことは、そのまま違法となる。

通常は、魔術関連の警察組織である警吏庁にいるが、一旦呼び出しがかかればその場へと出向き、執行官である魔術執行官と協働して査察を実施する。


この査察官は、22歳以上という括りがあるものの、査察官見習いであれば、魔術種族と呼ばれる人らであれば、15歳で入ることができる。

もっとも、規定ができた明治改元以来、だれも15歳で査察官見習いになることはなく、全員が査察官へとなっていた。


その唯一の例外となったのが、獏と呼ばれる魔術種族の、仁直春雷(きみじかしゅんらい)である。

魔術は魔術粒子の扱うことがまず第一となるが、獏はだれに教えてもらうでもなく、魔術種族の中でただ一種族、本能で扱い方を理解しているとされる。

それゆえに、若年者であったとしても、査察官として見習いではあるが行動することが、神秘大臣より認められたのだ。


「魔道具の査察です」

警吏官や先輩になる査察官、それに魔術執行官とともに、査察先の会社へとやってきていた。

門を叩くのは一番若手の仕事という不文律があり、仁直がインターホンで内容を告げる。

査察は法定査察、任意査察、強制査察とある。

法定査察は年に1回、任意査察は警吏庁へと申請して受けることができる。

任意査察を半年ごとに行うのが一般的だ。

法定査察は任意査察あるいは法定査察の最終日から1年以内と決まっているためである。

一方、強制査察とは、法定査察や任意査察を1年超していない場合に実施されるほか、触法行為があると考えられる場合に令状を持って実施する。

今回の査察は、1年半査察を受けていない会社の強制査察だ。

仁直は、規則に従って、2分ごとに3回インターホンを押す。

逃げられるという人もいるが、これを満たさなければ、査察を実施することができないのだ。

普通であれば、1回目で応答してくれる。

これが一番だと先輩査察官がいつもつぶやいているのを、仁直は聞いていた。

強制査察を受けるようなところは、当然、3回目でも出てはくれない。

「行きますか」

仁直が後ろにいる先輩査察官に尋ねる。

全ての条件を満たしたと考えた先輩査察官は、少しだけうなづいた。

「法により、これより強制査察を実施します。魔術執行官、警吏官の皆さん、お願いします」

それを合図に、扉をあけるなんていうまどろっこしいことは抜きにして、一瞬でその場からいなくなる。

直後から、窓越しに光が弾け飛ぶのが見えた。

初めのうちはぼんやりと眺めていたが、扉が開き、魔術執行官が顔を覗かすとそちらへと視線を移す。

「査察を開始します」

腕時計を確認して、時間を見る。

「12時31分、相手方を制圧。査察執行を開始」

それを宣言してから、仁直は、先輩査察官と共に建物へと入った。

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