第2話 『約束のために』
少しびっくりした事もあったけど、俺氏は遂に冒険者になった。
まぁ、冒険者になった以上に嬉しい事がある。
実は俺、今の寝床なんだけど、女の子の家の女の子の部屋の女の子と同じベッドで寝てるんですよね。
これは本当に夢の様で最高なんだけど、ていうか日立が警戒心なさ過ぎで心配だ。
もし俺氏が夜、そんな事はないのだけど襲ったりしてももしかしてなにも言ってこなかったりしないかなと思いながら俺氏は約二週間も煩悩に打ち勝ってきた。
だけど、思春期の俺氏にも限界というのがある。俺氏は彼女、橘日立と一緒に寝始めて12度目の今日ちょっとだけ仕掛けて見ようと思う。
仕掛けると言っても少しタッチしてみるだけだよ、だから大丈夫だよなぁうん大丈夫大丈夫。
『俺も男だ煩悩には勝てない!』そんな甘えから悪は生まれていくのかも知れない。
俺氏は背中を向けて寝ている女の子、橘 日立に後ろからサッと抱きついてみる。
※凄い、とても柔らかい。
この感触はとても素晴らしい。
俺氏は生まれて初めて女の子の胸を触った…いや、俺氏は1回だけ他の女の子の胸を触っていた。
それは知り合いの、そう幼馴染みだった女の子の胸でその子はなんというかこの娘の様に膨らんでいなくてぺっちゃなお胸だったので(まだめちゃくちゃちっちゃい頃だし)俺は興奮もなにもしなかったのだけどこの娘の胸はなんというかとても素晴らしい。
この俺氏の手に上手くはまる大き過ぎず小さ過ぎないこの最高にフィットするサイズ。俺氏はとても心地よかった。
これは完全に犯罪なのですよ、俺氏最低だぁ。けどバレなきゃ犯罪じゃないとよく聞くぜ。
※「はぁ、またですね直人さん。」
ちょっとまて、この娘今「また」と言ったよね。つまり俺氏はこの娘の胸を揉んだことがあるんだよね。俺氏の寝相恐るべし。ってか寝てる俺氏やばいセクハラ野郎じゃねぇかよ。昔の作品でそんな主人公がいた気がする。
「毎日、直人さんは甘えん坊ですね。」
そう、日立に言われたのが俺氏が最後に憶えていることだ。その後は寝てしまった。
だって心地よかったんですもん。暖かくて柔らかくて最高だよね。
※そして、朝も来るし話は変わる。
「よし、今日も頑張ろっと。」
俺氏は今日も目を覚ました。ここに来て約二週間、俺氏はただ単に橘 日立の胸を揉みたがっていたわけではない。
俺氏が本当に冒険者として頑張っているか心配なら密着取材を受けても大丈夫ってくらい俺氏は頑張ってる。多分ね。
さて、俺氏の予定は大まか同じ。
「おはよう日立。」
俺氏はまず先に起きて朝ごはんを用意してくれている日立に挨拶をします。
今日もかわいい、いつもかわいいのが日立ですね。
「おはようございます直人さん。」
そう言うと日立は皿を俺氏の前に出してくれる。
その皿には少し和食を思い出させる料理が並んでいた。少し昔の二十一世紀の始まりの配膳スタイルに似ている。多分日立は昔の料理が好きだったのだろう。
俺氏が今生きている時代。もちろんこの世界の事ではなく元の世界の話だが、俺氏が生まれたのが2077年の8月11日。つまり二十一世紀初期の2000年代になってすぐの料理など珍しい。
その時代からアニメがあるので(厳密に言えばもっと前)だがグラフィックが究極進化したのがその時代だと思っている。
俺氏はアニメから昔の日本の食べ物を学んでいたわけなのだが、今となっては駄菓子屋や駄菓子と言うのはほとんど幻となっている。
今出ているこの料理達も幻とはいかないが珍しいものだ。
そんな料理を食べてみる。
「すごく美味しい。」
日立はいいお嫁さんになると確信しているが、やはり美味しい。
この娘凄い事に家事はなんでもできてもう最高の娘さんですよ。俺氏の嫁に欲しい。
「それはとても良かったです。」
嫁に来るって意味!?。
俺氏は内心びっくりした。俺氏の心の声が漏れだしたのかと思ったけど、料理の感想の方だね。
とまぁこんなふうにとてもかわいい人に会えて幸せな朝を俺氏は送るのですよ。
その後はまぁ適当にふらふらと歩いてギルドに行く。そして適当に俺氏でもできそうな仕事を頼んで町の外にでます。
最近ではよく、この世界での小動物を狩る仕事を受けている。
小動物と言えどもファンタジーの世界だからとても危険。とても危険でとても怖いので今日の俺氏はこの世界のカエルさんを狩る仕事にしました。
今居るのが王都から離れたところにあるフィルブムと言う町。
その町の近くには基本的に草原や森が広がっている。
草原は小動物がコロコロしている。狩る難易度的は蛙<兎<蟹。
森にはあまり動物がいないが結構厄介な動物がいる。こちらは聞いた話だけど、狩る難易度は猿<亀<蛇。
トータルして、主な動物の狩る難易度は蛙<兎<蟹<猿<亀<蛇となる。
俺氏はまだ蛙しかうまく狩ることができない。
つまり初心者ということだよくそ。
もちろん兎を狩ることもできるのだが、それをすると帰った時に完全に体力が尽きる可能性があるし、剣の練習をするためにも今は蛙を狩っている。
「さて、今日の仕事内容はカエルを50匹狩る。」
詳しくは、依頼者は町の門の前にいるので、その人に話しかけて草原まで連れて行き、その人を守りながらカエルを50匹討伐して依頼者に渡す物だ。
「じゃあ行こ。」
そう言って俺氏は依頼書を持ってギルドを出た。
その町の構造は簡単なL字であった。
おそらくはショッピングモールの方がわかりづらい構造であると思う。
この町は魔物避けや征服を防ぐために町全体が柵に囲まれている上に町の出入口となる門は一箇所しかない。
それゆえに、攻め込む時に一箇所からしか入りにくい代わりに交通がしにくいとも思ったが、特にここではそんなに人がいないみたいだ。
俺氏はギルドから真っ直ぐ歩いて噴水広場まで来た。
俺はそこで橘日立を見つけて声をかける。
「日立、なぁにしてるのぉ?」
俺氏とは思えないテンションにこの橘日立といる時はなってしまう。
「噴水近くに置いているお花のお手入れをしていました。」
3日ほど前に依頼を受けて行く途中、綺麗だと思っていた花壇の花。日立が手入れしていたのか。道理で素晴らしいと感じるわけだ。
「直人さんはどちらへ?」
「直人さんは今からカエルを狩りに行ってきます。」
「それが終わったらお付き合いしてもらってもよろしいですか。」
日立からそんな事を言われた。これはデートなやつだよな。デートなんだよね。そうだよデートだよ。俺氏のやる気に拍車がかかった。
「依頼をこなしたら家に行くね。」
俺氏はこの依頼を終えたら日立とデートなので、やる気にもあがってなんでもできる気がしてきた。
俺氏は日立に「じゃあまた後で!」と返事をして、噴水広場を曲がり村の出入口の門の方へ走っていく。
門が見え始めた。依頼者はカエルを運ぶための台車を持っている人だ。なんといっても50匹も運ぶのだから。
俺氏は依頼者と思われる人物に話しかける。
「あの、これの依頼者さんですか?」
「はい、ギルドにそれを依頼しました。」
依頼者と合流できたので早速狩りに向おうと思い。
「では早速行きましょうか。」
そう言って俺氏は門を出る。
それに続いて依頼者も門を出る。
カエルがいるところはすぐに行けるので仕事も早く終わった。
正直2週間近くも冒険者をしているとこんな雑魚を狩るのは効率よく行える。50匹なんて1時間で終わる。
条件として、殺してはダメなのがはじめは手こずったがすぐになれてこの速さになった。
ってのは置いておき、俺氏は依頼者と50匹ちゃんといる事を確認して、依頼完了のサインをいただきギルドへ帰った。
ギルドで報酬を貰った後衝撃の事実を知らされた。
50匹捕まえて報酬が25000リムン。リムンはこちらの世界の金の単位。実は店であのカエルを売れば一匹あたり800リムン。50匹なら40000リムンとなる。
めちゃくちゃ鴨られたじゃねぇかよ。
リムンは円とシステムが似てるから。現実世界の15000損してるわけだ。フィギュア買えるじゃねぇか。
そんな不満を抱えながらも俺氏は日立のいるであろう家に帰った。家の中には置き手紙が置いてあった。
その置き手紙には噴水広場に来てくれという趣旨の内容だったので、荷物を置いて家を出た。
早くつくために人通りの少ない路地裏を通ってしまった。それがあんなに面倒な事になるとは。
明らかにやばいヤツらに囲まれてしまった。
「なぁてめぇ、橘日立とどんな関係だァ?」
まず頭の悪そうにアクセサリーをジャラジャラつけているいかにも不良て感じの輩が絡んできた。
「別に大した関係ないですけど。」と俺氏は相手を刺激しないような返事を心がけた。
「どうせ嘘なのは知ってるんだよ。」
長めの髪に鋭い目つき、おそらくこいつらのボスであろう人物がそう呟いた。
「嘘じゃねぇし。悲しいことに何も関係なんてできてないし。」
俺氏は思わずそんな事を言ってしまった。
※ヤツらの逆鱗に触れた。
奴らは短剣を取り出して俺氏に向ける。それに反応して俺氏はいつも腰に下げている剣銃を手に…武器類は全て置いてきてきてしまった。
つまりこの絶対絶命の状態をなんとか乗り切らなければならないわけだが、実は家の今宮流武闘術があるがほとんどサボってた性で使い物にならない。だが今浮かぶ突破口はそれしかない。
「さぁ来るなら来いよ!俺はこの後日立とデートあるんだよ!」気合を入れて俺は構えた。
まずはアクセサリーをジャラジャラつけたあいつが武器を持っているという優位から切りかかってくるが、何も心得がないので、その大振りを俺は軽く交わし、奴を押し飛ばす。
飛んできたのを受け止めるために1人が隙を見せたので後3人。
残り3人は対局に1:2で道を塞いでいるので俺は1人の方へ走るとそこにはこいつらのボスが立っていた。
「どけ!」そう言いながら奴の短剣を注意しながら向かっていく。
やつは向かって来た俺に右の大振りで攻撃してくる。
俺はその攻撃をいなして奴の右側から抜けて逃げ切るはずだった。
※恐怖。さっきの大振りからは感じれなかった鋭い殺気の詰まった左の逆回し蹴り。奴の武器は短剣ではなくこの蹴りであった。
俺は奴の蹴りを受けて軽く吹き飛ぶ。
そして俺は衝撃で吐血してしまった。
「残念だ、今宮直人。お前…少しは武道の心得があると思ったのに、敵の武器の数も見えていないとは。」
奴が放った台詞、どこかで似たような事を聞いたことがある。それは兄と試合をして負けた時だ。
兄は俺に「強い者と言うのは一筋縄ではいかないと言う言葉の通り、いくつもの武器を持っていることを忘れるな。敵の武器の数が見えなければ負ける。」と幼かった俺に何度も言っていた。
俺はそんな風に言われるのが嫌で武道の道から退いたが、「これはそのつけが回った来たな。」その言葉が思わず声に出た。がそれ以上は何も声が出ない。
俺は奴らにやられるがままに叩きのめされた。そして俺の意識は段々と薄れていく。
俺はこの世界に来るまでにもし、しっかりと人生から逃げること無く生きていればこの状況も難なく越えられたのかも知れない。
俺は体中に痛みを感じながら死を覚悟した。
「四天鳳乱。」女の子の声だ。なにかの技名が聞こえた。
だが俺の意識は更に薄れていく。その中で…。
「こんなに酷いことをするのはいけません。」
そんな声が届いたが、俺の意識が薄れて、そして消えていくのには逆らえない。
俺は状況が絶望的なのか、希望があるのかすらわからないまま、路地裏にて力尽きてしまった。
※そこから時間はどれほど経ったのか…。
俺氏はまた目を覚ました。体のどこにも痛みはなく、傷もない。だが酷い疲れは残っている。
誰かに助けられたのは明らかな事実だ。
そんな状況を整理するために俺氏は考えた。
俺氏は考えている最中にわざわざ俺氏とつけていたのを忘れるくらい追い込まれた状態で奴らに挑み、そして敵の武器を見定め誤り、奴らに叩きのめされて意識を失った。
俺がこうしてまた意識を取り戻したってことは俺は最後に聞こえた声の主に救われたということになる。
周りには誰もいない。静かな路地裏には戦闘の跡とオレしか残されているだけであとはなにも残っていない。
俺は救われたのだ。誰かもわからない人に。
とりあえず俺は考えても仕方ないので、噴水広場へ向かっていくが、何があったか俺氏にはわからない。
約束の場所へ向かう俺の足取りはいろんな意味で重かったのだった。