ー?視点ー
お久しぶりの更新です。
お待たせしてすみません(土下座)
短いですが楽しんでいただけると嬉しいです。
「それで?」
冷ややかな視線と共に先を促す言葉に努めて冷静に言葉を紡ぐ。
「要観察。必要があれば保護。
保護対象の一歩手前ってとこじゃねぇの?」
「その割には随分肩入れしているようじゃねぇか」
愉しそうに歪んだ唇に押し黙る。
「そんなにいい女かねぇ?
――――月影璃桜」
1枚の写真をヒラヒラ弄びながら零された名前にぐっと眉を寄せる。
「俺も接触してみるか?」
「あんたが見たいのは月影じゃなくて月宮要の反応だろ」
「クク、あの月宮が必死になる存在だぞ。使わない手はねぇだろ?」
「趣味悪ぃ。月影だって鬼の一族の姫君だぞ」
「だが、母親は人間。お前と同じハーフだ。そうだろ?」
「……」
「風紀委員長自ら風紀を乱すおつもりで?」
クスリと嘲笑を交えた声にハッと振り返ると扉に背を預けて優雅に佇む生徒会副会長である雪村千歳と生徒会書記の華影匡の姿があった。
驚いたのは俺だけだったようで、目の前の相手―――風紀委員長である杜山茜は平然と二人を迎え入れる。
「これはこれは、生徒会のおふたりがこのような場所に何の御用で?」
「新歓の書類をお持ちしたら随分興味深いお話をされていたので」
「生徒会役員ともあろう方々が揃って覗きですか」
「まさか!ノックをしましたが反応がなかったので失礼したまでですよ」
「冗談ですよ。聞かれて困るような話はしてませんので」
ニコニコ笑顔で腹の探り合いをする両者に室温がぐっと下がった気がした。
げんなりしているのは俺だけのようで華影先輩はさっさと用事を済ませたいとばかりに俺に書類を押し付け、説明を開始する。
その間もふたりの攻防は続いている。
妖狐の副会長と陰陽師であり羽目を外しすぎる人外の彼らを取り締まる役割を持つ風紀委員長は犬猿の仲だ。もっとひどいのは生徒会長と風紀委員長だが、これは一方的に委員長が突っかかっているだけと言えなくもない。
俺の気が書類よりも副会長と委員長の攻防に向いているのに気付いたのか華影先輩がふと顔を上げる。
「すんません。集中します」
「……風紀委員だったのだな」
「えぇ、まぁ」
「珍しい」
すっと目を細めてそう呟いた先輩には俺がどういう者なのか知っているのだろう。否、きっと華影先輩だけじゃなく月宮会長も雪村副会長も知っている。
「まぁ、こっちのんが向いてるッスから」
「そうか」
「はい」
「まぁ、お前のような者も風紀には必要だろう」
「……ッス」
それだけ言ってまた書類に視線を戻した華影先輩に慌てて書類に目を向ける。
書類の確認がもうすぐ終わるというところで不意に雪村先輩の声が飛び込んできた。
今まで聞き流してきた言葉達と同じ音量、同じトーンなのに何故かその言葉だけが鮮明に。
「彼女に興味があるのはあなただけではないことをお忘れなく」
「どういう」
訝しむ委員長の声に視線は書類に落としたまま耳を澄ませる。
答えたのは雪村先輩ではなかった。
正面からした低い艶やかな声に思わず顔を上げる。
「月影が俺たちを前にどんな反応をしたと思う?」
愉しそうに唇を歪ませた華影先輩は完全に獲物を狙う捕食者の顔をしている。
それは雪村先輩も同じで色気のある笑みを浮かべて華影先輩の言葉を引き継いだ。
「無関心、とまではいきませんがそれに近い反応でした」
「面白いと思わないか?
この俺たちに向かって媚びるでも怯えるでもなく、下手をすれば迷惑そうな顔をした女だ」
「それは、お前たちが同類と分かったうえでか?」
「おそらく、ですがね」
「それは――――」
ニヤリと口の端を釣り上げた委員長に顔が引きつる。
人形のように表情がないかと思えばあどけない笑みを見せる彼女はどうやら厄介な者たちを惹きつける何かを持っているらしい。
その厄介な者の中に自分が含まれていることに気付かないふりをして俺は小さく息を吐いた。
妖狐の雪村千歳が敬語なのは仕様です。
対風紀委員長用の装備です。笑