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待ち伏せされてました

 午後の授業も無事にこなし、何故か着々と仲良くなってしまっているヒロイン様と猫又と一緒に寮に帰ってきました。わんこに癒されたいです。でもその前に従兄様とお話をしないと!!諦めません、勝つまでは!!


「璃桜、お帰り」

「……」


 何故そこにいる。

 寮の入り口に立つ従兄様。

 完全にヒロイン様と猫又を視界から追い出した従兄様が甘く蕩けるような笑みを浮かべて私に手を差し出しました。さっそく心が折れそうです。

 ヒロイン様、私の腕に巻き付いて従兄様を睨みつけるのやめましょうか。

 従兄様も笑顔でヒロイン様をガン無視するのヤメテください。

 猫又があわわしてて可哀想です。

 思わず遠い目をしてしまう私に従兄様は不思議そうに私の名前を呼びます。


「……要兄様、ただいま戻りました。

 それと私のお友達を無視するのはやめてください」

「あぁ、悪かった。どうやら俺は璃桜しか見えていなかったらしい」


 だから私のほっぺたを撫でないでください。

 猫又も頬を染めてあわあわしない。ヒロイン様、毛を逆立てた猫になってますよ。可愛らしいですけど。

 というか従兄様、相手間違えてますよ。そういうのは私じゃなくてあなたのお姫様(になる予定)のヒロイン様にしてください。


「夕食まで時間がある。久しぶりにお茶でもどうだ?

 よければオトモダチも」


 そのとってつけたようなオトモダチもってなんですか。

 でもこれはチャンスですよね。猫又にもヒロイン様にも従兄様との誤解はといてますし、聞かれて困る話でもありませんから。


「そう、ですね。久しぶりにご一緒させていただきます」

「行く!絶っっっ対!行く!」

「え!ちょ、結花!?

 というか僕たちも行ってもいいの!?」

「もちろんです。おふたりのご都合がよければぜひ」


 にっこりと微笑むと猫又は少し困った顔をしてついてくる気満々のヒロイン様と私を見比べます。


「おふたりが一緒にいてくださると私も心強いです」


 そう囁くと猫又は目を見開いて驚き、ヒロイン様は瞳をキラキラさせて私に飛びついてきました。

 従兄様は心底面白くなさそうな顔をしているけれど、自分が誘った手前何も言えずにいます。

 私の一言で腹を決めてくれた猫又ともともと行く気満々だったヒロイン様と一緒に従兄様主催のお茶会に参加します。

といっても場所はまだ生徒の少ない食堂で、ですけど。







「姫君、お待ちしておりました」


 なのに何故、妖狐は私をそんなに恭しくもてなすの?

 やめて!すごく視線が痛いから!本当に勘弁してください!


「お前には学習能力がないのか。月影がドン引いてるぞ」


 呆れた様子の鴉天狗に心の中で盛大に頷く。

 きっと今の私は心底助かったという顔をしているでしょう。


「それに月影のエスコートは要がする」

「匡。よくわかってるじゃないか」


 しれっとした顔で上げて落とした鴉天狗と満足そうに笑う従兄様。

 いえ、妖狐も従兄様もどっちもお断りですから。

 だから猫又、苦笑いしないでください。ヒロイン様、腕が痛いです。そんなにぎゅっと握らないでください。お願いします。

 いっそここで気を失えたりしないだろうか、なんて現実逃避をしている場合ではありません。現在進行形でグサグサと視線が突き刺さってます。というか増えてませんか?


 「……あの、他の方のご迷惑になりますから座りませんか?」


 集まる視線を振り切るように提案すると皆さんすんなりと頷いてくださいました。

 両隣にヒロイン様と猫又を固めた私の真正面に従兄様、ヒロイン様の前に妖狐、緊張でガチガチの猫又の前に鴉天狗が座ってます。

 どうしてこのメンバーでお茶!?と妖狐と鴉天狗の姿を見た瞬間から続いている混乱のおかげで悩む余裕もなくヒロイン様に言われるままオススメを注文します。このメンツに怯まずに私にオススメのスイーツについて語るヒロイン様はすごいと思います。

 というか私、この場で従兄様に例の話を切り出すんですか!?無理ですよね!!

 つ、次の機会に……。


「というか会長は璃桜ちゃんのなんなんですか!」


 え?ちょ、ヒロイン様!?

 ぷくりと頬を膨らませて従兄様を睨むヒロイン様は可愛らしいんですが、ちょっと状況が分からないんですけど。

 従兄様もあからさまに不快そうな顔しないでください。

 このふたりはヒロインと攻略対象ヒーローですよね!?

 なんで顔を合わせる度に険悪な空気が漂うの!?あれですか!ケンカップルとかとかいうやつですか!そんなルートあのゲームにありました!?


 「彼氏でもないのに璃桜ちゃんにベタベタしないでください」


 むぎゅうと私の腕を抱きしめてキッパリ言い放つヒロイン様に従兄様の額に青筋が浮かぶ。

 ちょ、妖狐も鴉天狗も面白そうに眺めてないで止めてください!

 ヤバイ、これはヤバイです。


「あの!要兄様、そのことで私もお話があったのです!」

「璃桜?」


 急に口を挟んだ私を訝しげに従兄様が見つめます。


「私が要兄様の婚約者だという噂があると聞きました。

 ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

 ですが、どうして否定なさらないのですか?」


 これは本心です。

 入学式で再認識したけれど、従兄様はモテる。

 それはもう、崇拝レベルでモテる。それなのに、私との婚約だなんて根も葉もない噂どうして放置しているんだろう。

 その疑問が猫又からこの噂を聞いた時からずっと頭の中を回っている。

 従兄様は一体何を考えているのでしょうか?


「私が両親にこの学園に放り込まれた理由を要兄様はご存知ですよね?」


 そう、私が両親のように素敵な恋愛をするためにこの学園に放り込まれたことを従兄様は知っているのに一体どうして……。



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