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妙な噂を耳にしました

 それから何故か従兄様御一行とヒロイン様、私で学校に向かい、教室まで従兄様御一行に送り届けられ、HRが始まるまでヒロイン様にまとわりつかれています。

 途中で登校してきた猫又が参戦してきたのが本当に解せぬ。


「じゃあお昼は僕と結花と月影で食べようね!約束だからね!」

「うん!璃桜ちゃん、お昼は私と食べてくれるって言ったもんね?」

「……そうですね。ご一緒させていただきます」


 ヒロイン、結花って言うんだ。なんて思ってたらいつの間にか猫又とヒロイン様と一緒に昼食をとることになっていた。ジーザス!!

 そんなこんなで午前中の授業はあっという間に過ぎていった。


「璃桜ちゃん!どこで食べる?」

「どこでもいいですよ」


 もっと言うならひとりで静かに食事をとれるとろこなら本当にどこでもいいです。


「でも食堂は会長たちに邪魔されるよね」

「じゃあさ、中庭で食べようよ!僕いいところ知ってる!!」


 キラキラ瞳を輝かせる猫又は猫というより犬に見える。

 ああわんこに会いたい。モフモフして癒されたい。わんこー!

 禁断症状が出そうになる私に気付かずにヒロイン様と猫又は私の手を引いて中庭の奥へとぐんぐん進んでいく。人気がなくなりぽつりと忘れ去られたようなベンチを指さし猫又は得意げに笑う。


「ここ!!静かでいいでしょ」


 ドヤ顔の猫又は私の顔を見て月影は静かなほうが好きでしょう?なんて気づかいを見せてきた。それに驚いた私は目を丸くして彼を見る。どうだ!褒めろ!と言わんばかりの顔に毒気を抜かれて私は思わず笑ってしまった。


「くす、ありがとうございます。」

「えへへ、じゃあ食べようかって結花?」

「ずるい」


 ぷくっと膨れたヒロイン様は猫又を睨んでいる。それにアタフタする猫又。傍観する私。

止めろって?無理だよ。だってヒロイン様が何に膨れていらっしゃるのかさっぱりだもの。


「良太くんだけ璃桜ちゃんと仲良くなってずるい」

「え、ごめん……?」


 そんなこと言われても猫又も困るよねー。ていうかそう来たか!ヒロイン様!!


「璃桜ちゃん!私とも仲良くして?」

「えっと、」

「まずは苗字じゃなくて名前で呼んでほしいな」


 こてんと首をかしげて可愛らしくお伺いを立ててくるヒロイン様。

これは呼ばないといけないカンジですか?助けを求めるように猫又を見ると苦笑いで頷きやがった。呼べってか。


「……結花さん?」

「なあに璃桜ちゃん!」


 いや、ヒロイン様が呼べって言ったから呼んだだけで用事なんてありませんけど。

 なんて言えるはずもなく、とりあえずお昼を食べましょうと微笑んでみた。

 もちろんヒロイン様は何故か頬を染めて満面の笑みで頷いてくださった。

 それからは静かにお昼を頂くなんてことができるはずもなく……。


「わぁ!!月影のお弁当美味しそう!!!」

「ホントだ、璃桜ちゃんすごい!!」


 普通ですが。そんなキラキラした瞳で見られるような代物でもないと思います。

 ちなみに猫又とヒロイン様のお昼はあらかじめ購買で買ってきたパンやおにぎりです。


「お口に合うかわかりませんが食べてみますか?」


 あんまりにもキラキラした瞳でもの欲しそうに見られて食べにくいのでとりあえず聞いてみる。すぐさま頷いたふたりは卵焼きと唐揚げを口に放り込んだ。


「~~~っ!!!おひしい~~~~~!!」


 ほっぺたに両手を当てて幸せそうに口を動かすとはなんてあざとい。でも様になっているからさすがはヒロイン様。

 唐揚げを食べた猫又も幸せそうに目を細めてもぐもぐと口を動かしている。


「本当に美味しいよ!月影!僕こんなに美味しい唐揚げ食べたのはじめて!!」

「卵焼きも家で出てくるのと全然違う!なんか料亭の味って感じ!!……行ったことないけど」


 興奮した様子で詰め寄るふたりに苦笑いを返す。

 そんなに大したものではない。唐揚げなんて昨日の夜の残り物だし。卵焼きが美味しいのは母様のレシピのおかげだ。


「ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです」

「お世辞なんかじゃないって!!

 いいなぁ、会長は望めばいつでもこの味が食べられるのかぁ」


 ぼそりと呟かれた猫又の言葉に私はきょとんと目を瞬く。

 どういう意味かと聞く前にヒロイン様が意味が分からないという顔で猫又に噛みついた。


「え!?どういうこと!?あの会長と璃桜ちゃんってどういう関係なの!?」

「結花、知らないの?月影がなんて言われてるか」


 またアレですか。従兄様の寵姫とか姫君とかそういう類のやつですか。


「?天使とか女神とか??」

「なんでだよ!いや、確かにそれっぽいけど!」


 違うから!!と突っ込む猫又に心から感謝する。

 なんだその天使とか女神って。私は普通です。ヒロイン様みたいに美少女じゃないのでそんな大層な呼び名はつきません。

 心底不思議そうなヒロイン様に猫又は親切丁寧に解説を始める。


「月影は生徒会長、月宮要の溺愛する姫君、月宮要の寵姫って呼ばれてるの。

 会長も月影に手を出す奴は潰すって公言してるし。

 親公認の許嫁だっていう噂もあるし、会長も否定しないし。

 だから今朝のことだってちょっとした騒動になったんだから!」


 ……。

 何やってんだあの人!!!信じられない!

 従兄様から逃げ回って当たり障りのない接触ばかりしてた私も悪いのかもしれないけれど、でも!!これはひどい!!

 信じられないという顔をするヒロイン様と同じ顔でそれを聞いていた私に猫又がなんで月影までそんな顔してるのさ!と突っ込む。

 だけど正直気にしている余裕がない。これはちゃんと従兄様とお話をしないといけない。今夜、ご飯をご一緒する約束だしハッキリ言わなければ。


「嘘だよね!璃桜ちゃんがあんな偉そうで性格悪そうな会長と結婚なんて!!」


 この世の終わりとばかりの顔をするヒロイン様にもちろんだと頷く。


「私と要兄様とはただの従兄妹です。

 両親だって私の自由恋愛を推奨してますし、要兄様と結婚なんてありえません!!」


 そんなヒロイン様とバチバチする未来なんていりません。

 だって確実に負けて良くて一族追放、最悪くて殺されるだなんてそんな未来絶っっっ対に拒否します!!


「要兄様は昔から少し過保護なので、皆さん誤解されているだけです」

そうだ。そうに違いない。大丈夫、私。今晩、従兄様とちゃんとお話するんだ。頑張れ私。

「よかったぁ」


 心底安心した顔をするヒロイン様と噂の真相を聞いてちょっとだけガッカリしている猫又を横目に決意を固める。

なんとしても無事にこの学園を卒業して平和な未来を手に入れてやると!!



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