お茶くみは下っ端のお仕事です
放課後、さっそく風紀委員長に呼び出されました。
お迎えは風音先輩だったのでしょうがなく連行されます。
「ようこそ、風紀委員会に」
出迎えてくれた東雲先輩に無言で扉を閉めた。
「月影!?」
「むり。とうとい。むり」
蹲る私に風音先輩がギョッとして声をかけてくれるけれど、待って。お願いだから待って。今それどころじゃない。推しのファンサが尊すぎる。
「ふふっ、本当に面白い子だね。
璃桜と呼んでも?」
「……モチロンデス」
柔らかな笑い声と共に落ちてきた声に何とか返事をするが、過剰供給がすぎる。
「おい、何を遊んでやがる」
……天国から地獄へ突き落された気分だ。
ふわふわしていた気持ちが一気に沈んで、シュパっと風音先輩の後ろに隠れる。
ぱちりと目を瞬いた東雲先輩には申し訳ないけれど、これが正しい対応だと思う。
だって図書室からずっと怖い一面しか見てない。突然笑い出したり、急に敬語に変わったり。
だから、そんな呆れた目で見下ろさないでください。風音先輩。
「茜、何したんだい?」
「知るか。それより新入り、茶」
「はい!?」
「お茶くみと書類整理は一番下っ端の仕事だ。
給湯室にあるものは好きに使え。
不味かったら絞めるからそのつもりで淹れろよ」
「理不尽ですね!」
ぽいっと給湯室に放り込まれてしぶしぶお茶を淹れる。
というかこの茶葉すんごい高級品じゃないの!?うわっまじか。高校生が飲むやつじゃないでしょ。慄きながら人数分のお茶を淹れて部屋に戻る。
「なんだ。意外と使えるな」
それがお茶を飲んだ風紀委員長の言葉だった。どういう意味だコラァ!!と凄みたかったけれど目で訴えるだけで留めた私は偉いと思う。
「さて、面倒は早々に済ませるぞ。
拓真、月影。今週の土曜の予定はないな?
あってもキャンセルしろ」
「……それ、聞く意味あるんですか?」
「あ?」
思わずこぼれてしまった心の声に風紀委員長が短く凄む。
すかさず風音先輩の背中に隠れた。
そんなに呆れた顔でみないでください。わざとじゃないんです。ほんと、気づいたら零れてたんです。
というかこの暴君ぶりは通常運転なんですか?風紀委員こわッ!!
「ごめんね、璃桜。茜は身内認定すると暴君度が増すんだ。
甘えられていると思って諦めてくれると嬉しいな」
申し訳なさそうな東雲先輩も美しい。
ぽわーと見とれていたらパシンと書類の束で頭を叩かれた。
要兄様にもそんなことされたことないのに……!
「はー。めんどくせぇ。お前、行先決めて新聞部に報告してこい」
心底面倒くさそうにそう言われてパチリと目を瞬いた。
全く何のことか分からないんですが……。
助けを求めるように風音先輩を見ると、何とも言えない顔で風紀委員長を見ていた。
「オリエンテーションの景品だよ。
経費は生徒会が持つから遠慮なく行きたい場所を選べばいい」
困惑していた私に助け舟を出してくれたのは東雲先輩だった。
オリエンテーションの景品……。1日デート権。
「東雲先輩も一緒に来てくださったり……」
「お誘いは嬉しいけれど、今回は無理だろうね」
「じゃあ、土曜日は風邪をひく予定なので」
「馬鹿言ってないでさっさと決めろ」
「だったら――――――――」
希望を伝えたら異論はなかったので、時間などを決めて新聞部に報告に行きました。
というか見てたの!?って聞きたくなるようなタイミングであちらから来ました。怖い!
その後は、当然のように風紀委員会でお仕事しました。
書類のたまり具合が異常だったとだけ言っておこうと思います。
わんこに会いたい。




