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閑話ー桜の精ー


 うちのクラスには桜の精がいる。

 他のクラスのやつらは彼女を人形姫だの、月宮会長の寵姫だのと言うが我がクラスでそんなふざけた呼び名をする奴はいない。

 だいたい月宮会長の寵姫ってなんだ。羨ましすぎるだろ。あれだけモテまくっててまだ彼女のような美しい人を侍らせる気か!滅びろ!!

 ゴッホン。つまりだ、俺たちにとって人形姫、月宮会長の寵姫という呼び方は嫌悪の対象にあたるものだということだ。はじめに彼女を人形姫だと言ったやつは表に出やがれとも思うわけだ。確かに艶やかな黒髪に完璧な造形のパーツが絶妙な配置で並んでいる美しすぎる顔と滅多にその仕事をしない表情筋とくればそう呼びたくなるのかもしれない。だが、人形なんてものに例えるには彼女は神秘的過ぎた。

 例えるなら、春空を舞う桜。背を伸ばし佇む姿は凛としいるのに、目を伏せる様は今にも蒼に舞う薄紅のように儚い。入学式で見た桜と彼女の組み合わせはヤバかった。あれは尊すぎる。仰げば尊死ってこのことかと震えた。

 そして我がクラスの桜の精――――月影璃桜は最近、更に尊さを増している。

 それもこれも可愛いが頭の残念な女子代表、小鳥遊によるものなんだが、俺は知っている。やつが時々女神様と呼んでいるのを。だが、それとこれとは話が別だ。頭が弱い故にまんまと俺たちを出し抜いて抜け駆けし、彼女の友人ポジションをゲットしやがったのを俺はまだ許しはしない。中々声をかけられなかった俺が悪い!?ふざけんな、あんな神聖なものに俗物が早々遣づけるか!近づけるのは分を弁えない阿呆と悔しいが似た地位にあるやつだけだ。

 話がずれた。つまり、月影は小鳥遊という友を得て更に尊くなられた。

 桜の精のように儚く美しい彼女が微笑んだときの破壊力はすさまじい。


「璃桜ちゃーん!!おはよう!!」


 今日も黙っていれば美少女の小鳥遊の元気な声に彼女が仄かに微笑む。


「おはようございます。結花さん」


 嗚呼、尊い。今日も俺は生きていけます。ありがとう。


「……皆さんもおはようございます」


 小鳥遊に見せたものよりも更に控えめな微笑みに俺たちの心臓は仕事を放棄した。


「え?あの、大丈夫ですか?」


 月影の声が遠くで響く。

 焦ったような心配そうな声に申し訳なく思うが……うん。我が人生に一片の悔いなし。


「馬鹿。月影が困ってるだろ。さっさと戻って来なよ」

「るせぇ!良太テメェと小鳥遊が抜け駆けしたことを俺は一生根に持つからな!

 ……月影さん、おはようございます。今日も麗しくて尊いです」

「田中君、心の声が漏れてるよ。璃桜ちゃんに近づかないで」

「月影、気にしなくていいからね?こいつ元々こんなだから」


 桜の精は、ドン引きした顔も美しい。


主人公の美しすぎる外見に夢見るモブの話でした。

クラスメイトたちの認識はだいたい同じ。

あわよくば仲良くしたいが、まだ眺めているのが精一杯のクラスメイトたち。

そのうちわちゃわちゃする仲良しクラスになればいい。

いつの間にか良太と結花はセコム。笑

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