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第7話

奏多が倒れたって聞いて私は罪悪感でいっぱいになった。

優しい奏多は私が離れたことが、自分のせいだと思っている。

なんであの時、婚約者さんと幸せになってね、おめでとうと言ってあげられなかったんだろう。


そんなの、考えなくたってわかっている。

私が奏多を好きになり過ぎたのだ。

笑顔で祝福なんてできるわけなかった。


でも、そのせいで奏多は…。


私に今出来るのは、奏多のココロを軽くしてあげること。


笑顔でおめでとうっていってあげることだ。

例え私のココロが悲鳴をあげても…。

それが大好きな奏多に出来る私の精一杯だもん。



私がそんなことを考えているうちに目的地に辿りついたようだ。

てっきり奏多の家に行くものだと思っていたが、違うらしい。


「お待たせいたしました、美羽さま。どうぞ、お降り下さい。」


新庄さんはそう言うと車のドアを開けてくれた。

えーっと、ここどこかな?


「あの〜、新庄さん。 ここはどこでしょうか?」


「美羽さま、こちらです。」


…あー、うん。お話し聞いてくれないんですね。


私は新庄さんに案内されて建物の中に入っていった。

うーん、本当にここはどこなんだろう。

奏多のことで頭がいっぱいで車が何処を走っていたのか見ていなかった。


でも、なんか立派なところだね。

私は迷わないように新庄さんの後をついて歩いた。


「美羽さま、こちらです。」


…ここに奏多がいるのかな。


ふーー。 さあ、奏多の為に頑張ろう!


私は深く息を吐いてから、ドアを開けてくれた新庄さんのあとに続いた。



あ、あれ、ここはドコデスカ??


目の前には煌びやかな衣装と、大きな鏡、それからおしゃれなお姉さま達がいた。

えっ、本当にココドコデスカ。

一体何が起こっているのかわからない私は辺りをキョロキョロ見渡した。

すると、前を歩いていた新庄さんがこちらを振り向いて話しかけてきた。


「美羽さま、こちらでお着替え下さい。」


えっ、奏多に会うために着替えまでするの?

いや、倒れた人に会うのにこんな煌びやかなもの着ないでしょ。

もう〜、何なのこれ。


「新庄さん、私は奏多に会うために来たはずなんですが…。」


私が新庄さんに文句を言おうとしていたら、奥から誰かが出てきた。


「美羽さん、突然連れて来ちゃって申し訳なかったわね。」


この声どこかで…。

あ、あれっ!

もしかして…奏多のお母さん!?


「えっ、あの、私…」

ビックリし過ぎて言葉が出てこないよ〜。

何でここで奏多のお母さんが出てくるの!


「ごめんなさい、驚かせてしまったわね。」


「い、いえ。あ、あの奏多がいるって聞いていたんですが…。」


それを聞くと奏多のお母さんは新庄さんのことを睨みながら。

「もう、新庄は美羽さんに何も説明してないのね。しょうがないんだから。」


「美羽さまに真実を告げるのは私の役目ではありません。奏多さま自身がしなければ。」


「もう。あなたは奏多に甘いのか、厳しいのか…。」


そんなことを話している二人に私は混乱していた。

何で私はこんなところに来て、奏多のお母さんに会っているんだろう。


あっ、もしかして私が奏多の婚約の邪魔をすると思っているのかな。

それなら誤解を解かないと!


「あ、あの!」


私が声を出すと二人はこちらを見た。


「私、奏多の婚約の邪魔なんてしません!奏多のお母さん、心配しなくても私と奏多は別れています。それに…」

私は隠していた真実を二人に告げた。

「私と奏多は付き合っているフリをしていたんです。奏多の女子への苦手意識を克服するために!」


ふー。なんとか言い終えて二人を見てみると…。


えーっと、なんですかその可哀想な子を見る目は!?

いやいや、ここでその反応はおかしいでしょ!

二人は同時に深くため息をついていました。


「美羽さん…あのね、もうどこから訂正したらいいのか…。とりあえず、あなたが邪魔をするとは思っていないですよ。そんなこと思っていたらここに連れて来ていないでしょうし。」


まあ、そう言われたらそうですよね。

じゃあ、何なんですか?

私は困った顔で奏多のお母さんを見た。


「まあ、新庄の言う通り説明は奏多に任せましょう。でも、その前に着替えてちょうだいね。」


そう言うと奏多のお母さんは、ずっと後ろで成り行きを見守っていたおしゃれなお姉さま達に指示を出した。


「美羽さんをお願いね。奏多があっと驚くぐらいやっちゃって。」


えっ、何?

奏多のお母さんの言葉の意味がわからない状態で私はお姉さま達に囲まれた。


「キャ〜、お肌スベスベ!」

「ホント!あー、髪も綺麗ね。これは磨きがいあるわ〜。」

「ちょっと、ブカブカの服でわかりにくいけどスタイルまでいいわよ!」


あー、ちょっ、ちょっと!!

いや、待って〜!

もう、あっという間に囲まれて、もみくちゃにされてしまった。

うわーん、助けて〜!何なんですか?


私は本当に訳が分からないままお姉さま達の着せ替え人形と化した。


ひえ〜、せ、せめて新庄さんは外に出してからにして〜。

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