第13話 side奏多
「いつ、私が、御宅のお嬢さんと婚約するなんて言ったのでしょうか?」
俺は今までで一番低い声でそう語りかけた。
もちろん俺にしがみ付いているバカ女は飛っぺ剥がしてだ。
やっと、俺が怒っていることに気がついたバカ親子は、俺の親に泣きついた。
「渋谷さん!何でそんな何の利益にもならんような娘と婚約なんてさせるんですか!」
「そうですよ!優菜はずっとこの日を待っていたのに…。」
「お義父さま、お義母さま!私の方が奏多さんにはふさわしいですわ!」
あーー、うるさい!五月蝿い!
お前らなんてお呼びじゃねえんだよ。
見ろ、父さんと母さんの顔を。
普段温厚な二人なのに、あれは、本気で怒ってる…。
当然だろ。俺の暴走を唯一止められる美羽を馬鹿にしてんだからな。
「西尾さん、確かに御宅とは昔から会社の付き合いがありますが、奏多の婚約に対して何かお約束したことはありませんよ。」
父さんが正論を述べる。
すると、今度は美羽の方に矛先を向けた。
「なあ、君!君と奏多君では住む世界が違うのだよ!立場を弁えたまえ!」
「そうですよ。貴方みたいな普通のお嬢さんでは奏多さんとは釣り合うわけないわ!」
「何で奏多さんは貴方を……きっと奏多さんの弱みを握っているのですね!卑怯ですわ!」
………おい。いい加減にしろよ。
オレの美羽にナニしてんだよ。
俺はきっと泣きそうになっているだろう美羽を見つめた。
………あれっ。
美羽さん何で笑ってるんですか?
ここは笑うところではないような………。
「西尾さん、そして西尾さんのお父さん、お母さん。私、勘違いしてました。私は奏多にきっと相応しくないって心の何処かで思っていたんです。でも、今貴方たちの振る舞いを見て思いました。」
美羽は俺を見てにっこり微笑んだ。
うわ〜、めっちゃ可愛い!
って、何でこんな時にその表情?
俺が不思議そうにしているのを見てより笑みを深めているし。
そして、改めて西尾親子の方を見てこう言った。
「どう見ても貴方たちの方が奏多には合いませんよ。だって、貴方たちは奏多本人じゃなくて家柄のことばかりじゃないですか。確かにそれも必要なことかも知れませんが、その、住む世界が違う発言自体が恥ずかしいんですけど。だいたい、奏多の発言や、奏多のお父さんが言っていることもまったく聞いていないあたり、非常識なのはどなたなんでしょうか?こんな大勢の前で、その態度が恥ずかしいですよ。奏多や奏多のお父さんに素気無くされて、その矛先を私に向けることも浅はかですよね。何も反論されないとでも思ったんですか?」
………会場全体が静まりかえった。
えーっと美羽さん怒ってるんですね?
あまりのマシンガントークに西尾親子もボー然としている。
どうしましょうか。
俺がぼーっとしていると、笑い声がした。
「うふふふ、ほほほほ。美羽さん最高ですわ!やっぱり美羽さん以外奏多のお相手なんていないわね。」
どうやら高笑いをしていたのはうちの母親らしい。
すると、また笑い声が…
「っくくく。あははは。いいね、とってもいいよ美羽さん。これなら奏多とも上手くやっていける。」
おいおい、何をもって相応しいって考えたんだ。
でも、そうだよな。今までだって、美羽は泣き寝入りなんてしなかった。
高校の時だって俺が対処はしていたが、女子の軽い嫌がられ程度は笑ってかわしていたんだ。
それが今回、西尾の娘に騙された感じだもんな。
怒ってますよね〜。
さて、俺は西尾親子にトドメをさしますか。
美羽にだけやらせる訳にはいかんもんね。
俺は西尾親子と対峙していた美羽の前に出た。
「ところで、西尾さん、こんなところで遊んでいていいんですか?確かそちらの会社で何か問題が起きているという噂を聞いたんですが…」




