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第1話

今日、私は大好きな人にさよならを言います。


私の名前は 葛城 美羽。20歳。彼氏・・・いちおアリ。

それも今日までですが。


私の彼氏である 渋谷 奏多 はそれはそれは見目麗しいお姿に、文武両道を兼ね備え、しかも実家が有名企業を経営しているというハイスペックなサラブレッドなお方なのです。


何故そんなすごい人とお付き合いすることになったかというと、簡単に言えばボランティアですね。

彼はそれはそれは昔からオモテになられた結果、女性が若干苦手になってしまったようなのです。


彼のことは小学校の頃から知っていたし、なんの偶然か中学、高校も一緒になり、委員会もナゼか一緒ということで私のことは苦手ではないということを言われ、リハビリに付き合って欲しいと言われてしまえば、断ることも難しい次第です。


最初は私もフリで付き合うのはいかがなものかと思ったのですが、やっぱりあんな凄い人とフリとはいえ一緒に過ごせば、好きになるなという方が難しいと思うのですよ。


だって、言い訳をさせていただけるであれば言いますが。

フリなのに毎日登下校は一緒だし(来なくていいのに家に迎えにくるし)

学校では昼休みに必ず会いにくるし(5分でも時間があれば来ちゃうし)

何故か家に連れて行かれてご両親に紹介されるし(なんか申し訳なさそうな顔されたし)


フリにしては時間も手間も私にかけ過ぎなのですよ。

そんなの好きになっちゃうでしょ!


でも、やっぱりと言いますか、来る時がきたと言いますか。

この時が来てしまったのですよ。


それは、一ヶ月くらい前の出来事でした。


私は大学の授業が急に休講になったので、大学の近くの本屋に向かうつもりで外に出ました。

大学から出た途端、それはそれは綺麗な女性に声をかけられました。


「渋谷 奏多さんについてお話があるのですが、お時間よろしいですか?」


こんな事を言われてしまえば、その頃には奏多にベタ惚れ状態の私としましては行かざるをえないでしょう。


近くの公園でお話することで納得していただき移動しました。


「単刀直入に言いますが、奏多さんと別れて下さい。」


その言葉を聞いた時、悲しい気持ちももちろんありましたが、ついにこの時が来たんだという気持ちも同時に強く感じました。

その綺麗な人は 西尾 優菜さんという名前で奏多のいわゆる婚約者さまなそうな。


「奏多さんは優しい人なので、あの方からは貴方に別れを切り出せないはずです。なので、貴方の方から別れていただけませんか。」


そっか、ついにリハビリは終わったんだと思いました。

いや、もしかしたら結構前から奏多は女性への苦手意識を克服していたのかもしれません。


私はそれを知りながら奏多の優しさに甘えていたのでしょう。

だってあんなにいつも一緒にいたのだもの。


さて、この婚約者さまとのお話から私はいつ奏多に別れを切り出せばいいか考え始めました。


婚約者さまがいうには今度の奏多の誕生日に婚約発表をするそうな。

それを考えると誕生日前には別れなければいけないですよね。


奏多の誕生日が一週間後ということを考えればもう時間もないし、さすがに今日告げなければ。

ホントはもう少し前に言おうと思ったけれど、やっぱりあの笑顔をみていると、もう少し、あと少しとさよならが言えないのですよ。


この頃はその事で頭がいっぱいで眠れません。

奏多にも心配をかけてしまっています。

奏多、ごめんね。意気地のない女で。でも、今日こそは話をしよう。


奏多には大学近くの公園で待ち合わせしようと連絡しました。

あまり人がいない方がいいもの。いちおフリだけど別れ話を聞かれたくないし。


「美羽!」


あ、やっぱりこの声で名前を呼ばれるの好きだな〜。


「ごめん、待った?」


奏多はいつものように私を気遣ってくれます。

それも今日までなんだね。


「ううん、待ってないよ。時間通りだし。」


さあ、終わらせよう。


「ところで、こんなところで待ち合わせなんて珍しいね。久しぶりに美羽の好きなケーキ屋さんでも行ってゆっくりお茶でもしようか?」


「えーと、ちょっと話したい事があったからここでいいよ。」


「・・・最近元気がなかったけど、やっぱりなんかあった?」


やっぱり、奏多には気づかれているよね。ここ最近うわの空状態もあったし。


「ねえ、奏多。もう、リハビリ止めない?」


「・・・・・・・・っ。」


「奏多はもう女の子に対する苦手意識を克服してるよね。私たちは付き合ってるフリをやめた方がいい。」


「っ、美羽は俺といるのが嫌になったの?」


奏多が拳を握り締めて、苦しそうな顔で問いかけてくる。

なんで、そんな苦しそうな顔をするの。

私は、私は優しい奏多を傷つけたくないのに。

でも、ここでさよならしないと、奏多のためにならない。


「奏多、私ね、好きな人がいるの。だから、もう付き合っているフリはできないよ。」


そう、私は奏多が好きだ。だから、フリなんて無理だし、婚約者がいる奏多とは一緒にいられない。


「・・・うそ、嘘だよね。美羽!好きな人がいるなんて。なんでそんなこと言うんだよ。俺といる時あんなに笑っていてくれたのに。なんで・・・・・。」


「奏多、さよなら。一緒にいれて楽しかったよ。」


立ち竦んでいる奏多を残し私は公園を後にした。

大好きだよ、奏多。幸せになってね。



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