表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

BL短編集

好き嫌いは敵

作者: 藍上央理

<プロフィール>

商業では粟生慧で執筆しています。

おもに電子書籍ではBL中心です。

商業の内容はほぼエロです。


「今日の昼飯何?」

「麻婆豆腐」

「四川風にしてね!」

「あいよー」

 一路いちろが返事をして、豆腐を切り始める。さいの目。大きな手のひらに一丁のせて、器用に縦横に包丁を通していく。

 オープンキッチン風のカウンターに真向かいになって、一路の恋人である貴臣たかみが頬杖を突いて見つめている。

 休みの風景だ。一路は料理がうまい。積極的にはしないが、リクエストには応じてくれる。それ以外は冷凍食品をチンして終わり。

 朝起きたときに貴臣が「豆腐食べたい。中華味」という曖昧なリクエストをしたおかげで、昼飯が麻婆豆腐になった。

 料理を手際よく行うには準備が必要だ、と一路は言う。

 ステンレスの調理台の上に、計量した調味料が、小さなガラス製の容器に入れられて並んでいる。一路はこういうキッチンツールをそろえるのも好きだ。形から入るところがあるのかもしれない。

 ほとんど茶色の同じものにしか見えない調味料を指さして、貴臣が訊ねていく。

「これなに?」

「甜麺醤」

「じゃんじゃんめん?」

「中華甘味噌!」

 レシピも見ずに作れるのだから、やはり一路は料理が得意なのだろう。

 以前なぜレシピを見ないのか聞いてみたことがある。

「バイトで食堂の調理してたことがあるから」

「アレって免許いるんじゃないの?」

「黙ってりゃわかんねーの」

 要するに、店長が食品衛生の講座を受けて資格証を受け取れば、調理師の免許があろうがなかろうが関係ないと言われたらしい。

「なんだか食中毒になりそうな食堂だな」

「ゴキブリはいたけど、病人は出なかったぜ」

 そんな風にはなしながら、一路は手際よく、中華鍋に調味料を入れていく。

 ごまみたいに小さく刻んだニンニクとショウガと白ネギ。まな板でリズムよく踊る包丁。一路の料理する姿が好きだ。マエストロみたいに優雅に立ち回る姿がセクシーに感じる。

 うっとりと貴臣は一路を見つめた。

「あ、そーだ。豆腐、絹ごしにしてくれた?」

 貴臣の言葉に、優雅な動作が止まる。

「木綿にした。じゃないと崩れる」

「俺、崩れて柔いのが好きなの」

「先にいえよ」

「えー、木綿やだ。固いし味染みないし」

 一路が腰に手を当て、難しげに眉を寄せた。次の瞬間、滑るような動きで冷蔵庫の前に立つ。そして、無言で冷蔵庫を開ける。絹ごし豆腐を取り出し、さいの目に切り分けた。

「どうすんの? もう一回作り直すの?」

 貴臣の言葉に一路がにやりと笑う。

「好き嫌いは敵だ」

 そういって、調味料と一緒にぐつぐつ煮える木綿豆腐の上へ絹ごし豆腐を継ぎ足した。

「あー、混ぜた」

 貴臣は唖然とした。

 一路はすました顔で、中華鍋を揺する。あっという間に豆腐は混ざっていく。貴臣の目には皆同じにしか見えなくなった。

「味は同じ。気にするな」

 一路はそういって、最後のひと仕上げに移った。

ご感想お待ちしております。

なお商業収録作品は除外しております。

「キミイロ、オレイロ」関連作品のみ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ