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触手 三

 触手にもてあそばれる龍玉を、冷たい目で見つめる。第六天女の興味は龍玉にあった。

「勝気な女が苦悶にあえぐ姿は見ていてうっとりするのう」

 口元がゆがみ。それを合図にしたわけではないだろうが、締め付ける触手の力は増し、このままでは骨まで砕かれかねなかった。それでいて肌のまさぐりはやまず。意に染まぬ不快な快楽と恐怖が全身を貫いた。

 源龍も危機を察するも、動くに動けず。虎碧も同じ。

「次はお前だよ、碧い目の小娘」

 冷たい目が虎碧に向けられる。

「や、やめろ! ああ――」

 自分の次は虎碧だとさとった龍玉は我知らず叫んだ。だがその叫びもむなしく響いて、風に流されるように消え。

「女、快楽とともに、おいき!」

 第六天女がとどめを刺せと叫び、それに呼応するように触手の力はまし、さらにつかまえた青龍刀が脳天まで迫り。

 肌は一段とまさぐられて、声を漏らしながら身を硬くした。

(もうだめだ。ごめんよ――)

 無念さをつのらせながらも龍玉は目を見開いて、視線を虎碧に向けた。どんなことがあっても守りたかったが、はたせなかった無念さばかりがつのった。

 ふと、香澄の視線がずれた。視界から源龍が外れた。

 これを逃すなとばかりに、源龍は駆け出し香澄の顔面めがけて突きを見舞った。

「ほう」

 第六天女の笑みの妖艶さが一段と増した。

 気が付けば虎碧は剣を握りしめて化け物劉善まで迫っていた。とどめを刺される寸前のところで、触手の力は少し抜けて思わぬ命拾いをした龍玉は、

「だめだ逃げろ!」

 と叫んだが、虎碧は聞こえていないかのように、化け物劉善に剣を振るった。

 大剣の剣先はくうを貫き。香澄は源龍の横を素早く、風に乗っているかのように軽やかに駆け抜けていった。

 それを追い振り向けば、香澄の背中の向こうで、化け物劉善の首が飛んだ。

「なにい……」

 駆けながら驚きつつ飛ぶ首を見上げた。こうしたのは、おじけついていたはずの、虎碧であった。

 首を刎ねられたとはいえそこは屍魔である。苦痛など微塵もなく、大口を開けた化け物劉善の首は虎碧へと向かって勢いよく落下したが――

 地に落ちていた剣を拾い上げるや跳躍し剣を突き出せば、化け物劉善の鼻から後頭部にかけて剣に貫れた。

 さらに首の刺さった剣を放り投げれば、勢いよく地に突き立ち。貫かれた首は突き立った剣の真ん中で阿呆みたいに口をぱくぱくさせるのみだった。

 首を刎ねられた化け物劉善の胴だが、やはり屍魔だけあって崩れ落ちずに、触手の力も衰えず。やまず龍玉の肌は攻められた。

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