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屍魔が屍魔呼ぶ餓鬼地獄 六

「源龍、逃げよう!」

「いやだ! お前らだけで逃げろ!」

「なに言ってるかなこいつは!」

 屍魔を薙ぎ払いながら龍玉と虎碧は逃げようというが、源龍は聞かず。

「あいつがいる」

 をひたすらつぶやいていた。

「うわあ、こいついかれてるよ」

 眉をひそめ呆れる龍玉。源龍らしいと言えば源龍らしい。

 屍魔一体一体はたいして強くない、しかしその怖さは集団で一斉に向かってくるところにある。しかも屍魔に食われて屍魔になった者も多いため、その数はべらぼうだ。それを、源龍に龍玉と虎碧の三人だけで相手をしようと言うのだから、無謀にもほどがあり。

 ここは逃げる方が賢明なのだが、そこはやはり源龍。

 迫りくる屍魔を薙ぎ払いながら第六天女と香澄があらわれるのを待っている。

「よほどのご執心だね」

「そう言うお前らは逃げないのか」

「ふん、見くびっちゃ駄目だよ、仲間を捨てて逃げるなんて」

「馬鹿な奴だ」

「それはお互いさま」

「龍お姉さん……」

 虎碧は龍玉の強がりと言うか意地に苦笑しつつも。いつの間にか、三人は背中合わせに肩を寄せ合い屍魔と対峙していた。

 まわりは屍魔に取り囲まれている。薙ぎ払っても薙ぎ払っても一向に減る気配なく、これが無限に続くかと、思うわけもない源龍であった。また龍玉と虎碧も同じだった。

 あの紫女は高みの見物を決め込む性分ではない。

「いいかげんに出てきたらどうだい、第六天女の糞あまッ!」

 龍玉は天に向かって吼えた。源龍は鋭い視線を屍魔の向こうに向けて。

 虎碧は、背筋に冷たいものが走るのを感じて、

「来る!」

 と閃いた。するとどうだろう、

「あらうれしや。そのように求められるなぞ、女冥利につきるぞな」 

 と、群れる屍魔らの間に第六天女と香澄が忽然と現れ。源龍の目が一段と光った。

 それとは別に、逃げる人間どもを追って城外にあふれ出た屍魔らは城外に控える辰の軍勢に向かって怒涛のごとき勢いで突き進んでいた。

「なにごとだ!」

 ひとり武将が逃げ惑う者たちを叱咤するが、

「逃げろ、逃げろ!」

 とばかりわめいて、「待て!」という制止の声も届かない。

「ええい、いったいどうしたというのだ。城内の反逆者どもに負けたなどど無様なことをぬかすか!」

 怒れる武将は逃げ惑う兵を数人叩き斬った。それでも効果なく、人々はひたすら逃げ惑い。

 その混乱は軍勢全体に広がった。

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