屍魔が屍魔呼ぶ餓鬼地獄 三
城内中央にある館では、辰兵らが館内にある金銀財宝を物色し略奪にいそしんでいた。劉善のしかばねといえば、館の外へ運び出されて、横たえられて、全身に何度も剣を突き立てられて、まるで蜂の巣にされて。
死してもなお辱められていた。
しかし、生きてそれを受ければその苦痛想像を絶することを思えば、先に毒酒をあおいで自殺したのは不幸中の幸いとも言えた。
劉善のしかばねを嬉々としてもてあそんだ辰兵らはお宝にありつこうと館の中へ飛び込んで行った。そのとき、
「女がいたぞ!」
という叫びがして、声の方向かって駆ければ、
「劉善の女か。ふたりいるぞ」
と、辰兵らは館の奥で女をふたり見つけた。
「こりゃあ、ええ女じゃのう」
辰兵らはよだれを垂らしながらふたりの女を視姦して股間をふくらませた。
ひとりは紫の衣を見にまとった年増女だが、熟れた色気があふれ出ている。なににつかうのか、右の手には水晶をもっている。もうひとりは、まだあどけなさの残る少女ではあるが、腰には剣を佩いて武術の心得があるらしかった。
その少女を見て辰兵らは一瞬警戒したが。少女は剣を抜く様子がない。人数はこちらが多いということもあり、警戒を解き、辰兵らは女たちににじりよった。
それを見て、女は恐れて身を震わせて。ということもなく、落ち着いた表情で、淡々と辰兵らを見据えていた。
「なんじゃこの女、白痴か?」
恐怖に打ちのめされた女を強姦することを楽しみにしていた辰兵らだが、その淡々とした様子に拍子抜けする思いだった。だが、血気盛んな辰兵らは、
「白痴でもええわい。やってしまえ」
と一斉に襲い掛かった。
その途端、少女の目がかっと見開かれたかと思うと、幾重にも閃光ほとばしり。次の瞬間には辰兵らは手足や首が胴から離れて血を噴き出しながら床に落ちた。何が起こったのか気付いている様子もなさそうに、その顔は皆阿呆みたいに口を開けていた。
少女はいつの間にか剣を抜き、その剣は血塗られていた。
「ほほ」
紫の衣の女は冷たく笑いながら靴が血で濡れるのもかまわずに飛び散った血と四肢を踏みつけながら歩きだし。少女もそれにつづいた。
「いつもながら惚れ惚れする剣さばき。香澄よ、そなたはわらわの最高傑作じゃ」
紫の衣の女、その手には水晶。そう、この女こそ第六天女であり。手に持つ水晶は死人を屍魔として蘇らす反魂玉であり。それにつき従う少女は香澄であった。
主である第六天女からお褒めの言葉をいただいても、白磁器のような白い顔は冷たく無表情であった。
そんな香澄を第六天女はいとおしそうに見つめていた。




