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屍魔が屍魔呼ぶ餓鬼地獄 二

 そのすぐ後に城外の将兵らが城門をくぐり、すぐ後ろに迫ってくる。

「このお、けだものども!」

 青龍刀を振り上げ目の前の兵の頭をかち割ろうとしたそのとき、後ろから青龍刀の柄を握られた。はっとして振り向けば源龍。

「邪魔するな!」

「やっぱりおめえは傭兵に向いてねえ!」

 そうする間に兵は逃げて命拾いし、へたりこむと同時に失禁してしまった。それほどまでに龍玉の怒りは鬼気迫るものがあった。

「はなせ!」

「馬鹿野郎ッ!」

 柄をつかんでいた手がはなれると同時に、龍玉の頬に拳が飛んで、ぶつけられ。たまらず尻もちをついてしまって、青龍刀は音を立てて地に落ちた。と同時に龍玉の目前に大剣の剣先が突きつけられる。

「お前という奴は……」

 龍玉を睨んで何か言ってやろうとしたそのときであった。

「ぎゃああ――」

 と耳をつんざくような悲鳴が響き。思わずその方を向けば。龍玉が叩き斬ったはずの兵が、仲間の兵の首筋に噛みつき。そのまま肉を食い破ったではないか。

「何ッ!」

 それが何を意味するのか、瞬時にさとり。龍玉は青龍刀を拾い上げて我知らずに源龍と背中を合わせた。

 その間にも、仕留められたはずの将兵らは起き上がって。生きていたのか、と駆けつけた仲間の将兵に突然噛みつき肉を食い破り血は噴水のように吹き出す。

「ど、どうしたんだお前たち、気でも狂ったか!」

 まさか死んだはずの仲間に襲い掛かられるとは思いもしなかった将兵らは恐慌をきたして狼狽することしきりである。

「この野郎!」

 兵のひとりがやむなく襲い掛かる仲間の首を刎ねた。しかしその首は大口を開けてそのまま兵の顔面まで飛んで噛みついた。

「わあああ――」

 ばたりと倒れこんだと同時に顔面の骨肉が食い破られてしまって首を斬られた鶏のように手足をばたばたさせて。そこにさらに死んだはずの兵らが起き上がって、顔面に食らいつく首ごと一斉に噛みつき、全身の骨肉が噛み砕かれて瞬時に無残な肉塊にされてしまった。

 蘇ったのは龍玉の仕留めた将兵だけではなかった。城攻めの際に殺された人民のしかばねも起き上がったかと思うと、

「あああ――」

 と不気味なうめき声を発して生きている人間たちに襲い掛かった。

 辰兵に襲われて恐怖を味わった、そこに死んだはずの者が蘇ってまた襲い掛かるという二重の恐怖が人民を心臓を突いた。

「あんたやめてえ!」

「父ちゃんおいらを食わないで!」

 死んだはずの家族が蘇って襲い掛かる。それはどれほどの衝撃であったろう。ほとんどの者があまりのことに震えあがって、脚を満足に動かせずにいるうちに取り囲まれて貪り食われる有様であった。

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