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屍魔が屍魔呼ぶ餓鬼地獄 一

 荒らされ回った城内では哀れな女たちが血気にはやった将兵らの慰みものにされて。死せる家族のそばで犯される女の悲惨さは正視できぬものであった。そんな背徳感が、将兵をさらに殺気立たせる。

 城外では将兵らが宿営の支度をしている。その最中にも、女の哀れな悲鳴が耳に飛び込んでくる。

 それは龍玉の耳にも届いた。

「……」

 袋の中を何度も覗いてご満悦の龍玉だったが、すぐに袋をふところに入れたと思えば顔つきは厳しくなって、悲鳴の方に顔を向け。

 青龍刀を握る手に力を込めて駆け出そうとする。それを見た源龍はつかまえようとするが、その手をさっとすり抜けて逃げられてしまった。

「あの馬鹿」

 源龍は苦々しく追いかける。

 城内に飛び込んでみれば、龍玉は目を見開き、目の前で繰り広げられている光景に総毛立つのを禁じ得なかった。

 それから我知らずに青龍刀を振りかざし、女を犯す兵のひとりの首を刎ね飛ばした。刎ね飛ばされた首はぽかんと口を開けて地に落ち。女は悲鳴を上げながら胴をどかして逃げた。

「やった……」

 その様を見た源龍はすぐに大剣をかまえて臨戦態勢をとる。

「てめえら人間じゃねえ、叩き斬ってやるッ!」

 龍玉は青龍刀を振るい、乱暴狼藉をはたらく将兵らをかたっぱしから薙ぎ倒してゆく。その暴れっぷりはにわかに竜巻が発生し、血潮が巻き上げられているようであった。

 源龍は忌々しく舌打ちする。

「龍玉が暴れたおかげで俺たち反逆者になっちまった!」

 と叫んだ次の瞬間、

「反逆だ!」

 という怒号が響いた。

 龍玉は青龍刀を振り回し血風吹き荒れ。仕事の後のお楽しみを味わっていた将兵らは恐慌をきたし。女ども人民らも悲鳴を上げて逃げ出し。城内は混乱に陥っていた。

 それは城外の将兵らも気づき、それが傭兵の女の仕業であることに気付くのに時間はかからなかった。

「反逆だ! 傭兵が裏切ったぞ!」

 城外でのんびりしていた将兵らは反逆であると聞いて「すわや」と得物を手にして城へと駆け出す。城内の将兵らもそれに呼応するように落ち着きをいくらか取り戻し、得物を手にして、

「このあまッ!」

 と一斉に飛び掛かった。

 だが龍玉は怖じる様子はなく、ぎろりと将兵らを睨みまわしながら青龍刀を振るう手を止めずに、襲い来る将兵らを薙ぎ倒してゆく。

「ええい、あの馬鹿ッ!」

 源龍は歯軋りしながら駆け出し、龍玉を止めにゆく。

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