戦場 七
そこに家臣らは飛び込み、剣を振るい辰兵を打ち倒してゆく。しかし衆寡敵せず、数に勝る辰兵に包囲殲滅させられてしまった。
それを見て、源龍ははっとする。
「龍玉、早く館へ行け! 親玉をつかまえるんだ!」
「あいよ!」
言われてもみ合う兵の間を縫うように駆けて館の中に駆け込めば、そこには、無残な劉善のしかばねがたおれていた。
「え、死んでる?」
そばまで来て、脚をかがめて脈をとれば、すでに止まっている。たしかに死んでいる。
ふと、変なにおいが鼻につく。
「うわくっさ、こいつ漏らしてるじゃん。ばっちぃばっちぃ」
眉をしかめながら龍玉は後ずされば、源龍がいつの間にか背後にいた。
「やっぱりな……」
しかばねのそばに杯がある。それを見て舌打ちする。
「もうだめだと思って、毒酒を飲んで自殺したんだな」
「自殺!」
「生け捕れって命令だったが、先に死なれたんじゃあな。これで褒美は減っちまった」
「あーあ、残念」
龍玉は残念そうにため息をつき、悔しそうに青龍刀をひと振りすると、回れ右して館を出ようとして。源龍もあとにつづく。
館を出た龍玉はそのまま歩いて城外へ出ようと思っていたが、その目に飛び込む光景に息をのんだ。
各所に火の手が上がり、城内の人民らは老若男女問わず刃にかけられて殺されてゆき。むくろ転がる悲惨な光景が繰り広げられていた。
「これは――」
目の前で、逃げ惑う母と幼い娘が斬り殺される。それを見て、
「やめろッ!」
と思わず駆け出しそうになるのを、素早く源龍が首根っこをつかんで、そのままひっぱってゆく。
「は、はなせ源龍」
「ぎゃーぎゃーうるせえ」
ひっぱられながら首をふれば、とにもかくにも、城内の人民が辰兵によって無残に殺されてゆくところばかり。
しばらくひっぱられてゆき、城外に出たところで放り投げられるようにして、地面に叩きつけられ、思わず手放してしまった青龍刀は音を立てて地に倒れた。
咄嗟に起き上がって鋭い目で源龍を睨む。
「なんで止める!」
「馬鹿かお前は」
「なんだって」
「これが戦争ってやつだ。やるかやられるかなんだよ」




