表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/75

戦場 七

 そこに家臣らは飛び込み、剣を振るい辰兵を打ち倒してゆく。しかし衆寡敵せず、数に勝る辰兵に包囲殲滅させられてしまった。

 それを見て、源龍ははっとする。

「龍玉、早く館へ行け! 親玉をつかまえるんだ!」

「あいよ!」

 言われてもみ合う兵の間を縫うように駆けて館の中に駆け込めば、そこには、無残な劉善のしかばねがたおれていた。

「え、死んでる?」

 そばまで来て、脚をかがめて脈をとれば、すでに止まっている。たしかに死んでいる。

 ふと、変なにおいが鼻につく。

「うわくっさ、こいつ漏らしてるじゃん。ばっちぃばっちぃ」

 眉をしかめながら龍玉は後ずされば、源龍がいつの間にか背後にいた。

「やっぱりな……」

 しかばねのそばに杯がある。それを見て舌打ちする。

「もうだめだと思って、毒酒を飲んで自殺したんだな」

「自殺!」

「生け捕れって命令だったが、先に死なれたんじゃあな。これで褒美は減っちまった」

「あーあ、残念」

 龍玉は残念そうにため息をつき、悔しそうに青龍刀をひと振りすると、回れ右して館を出ようとして。源龍もあとにつづく。

 館を出た龍玉はそのまま歩いて城外へ出ようと思っていたが、その目に飛び込む光景に息をのんだ。

 各所に火の手が上がり、城内の人民らは老若男女問わず刃にかけられて殺されてゆき。むくろ転がる悲惨な光景が繰り広げられていた。 

「これは――」

 目の前で、逃げ惑う母と幼い娘が斬り殺される。それを見て、

「やめろッ!」

 と思わず駆け出しそうになるのを、素早く源龍が首根っこをつかんで、そのままひっぱってゆく。

「は、はなせ源龍」

「ぎゃーぎゃーうるせえ」

 ひっぱられながら首をふれば、とにもかくにも、城内の人民が辰兵によって無残に殺されてゆくところばかり。

 しばらくひっぱられてゆき、城外に出たところで放り投げられるようにして、地面に叩きつけられ、思わず手放してしまった青龍刀は音を立てて地に倒れた。

 咄嗟に起き上がって鋭い目で源龍を睨む。

「なんで止める!」

「馬鹿かお前は」

「なんだって」

「これが戦争ってやつだ。やるかやられるかなんだよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ