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戦場 四

 天をとどろかす鬨の声が響き、城壁が轟音につつまれる。

 城壁からは城兵が必死の思いで矢を放ち石を落とし。その都度寄せ手の辰の兵が落下し地に叩きつけられる。しかし数に勝る辰軍はまるで菓子に群がる蟻のように城壁をのぼり果てがない。

 地面に転がる辰軍の兵の屍は味方の兵に踏みしだかれて原型をとどめず泥にまざってゆく。それほどまでに辰軍の攻めは激しかった。たとえ相手が少数であろうと容赦はない、というか、相手が少数だから早く終わらせようと皆急いでいるようであった。

「はいよ、ごめんよごめんよ!」

 威勢のいい声が響き。梯子をのぼる兵の背中が軽く踏まれて、次に跳躍する。それは龍玉であった。味方の兵の背中を踏み台にして跳躍して城壁のてっぺんに迫っている。

「調子にのりやがって」

 と、大剣を振るって味方の兵を払いのけて梯子を独り占めしてのぼるのは源龍。片手には地面に落ちていた味方の兵を掲げて、迫りくる矢や石を防いで盾がわりにし。

 跳躍する龍玉はひょいひょいと矢や石をかわし、あるいはうばった青龍刀を振るい弾き飛ばし。

 先に城壁のてっぺんにいたったのは龍玉。青龍刀を振り回し、城兵をなぎ倒してゆく。そうするうちに源龍ものぼりきって、城兵を大剣で粉々に吹っ飛ばしてゆく。

 そのころ、辰軍の後方にひかえる荷駄隊にいる虎碧は他の人員とともに糧食の調理をしていた。

 作業にあたりながら、城攻めをしているであろう龍玉と源龍のことを考える。

「私のために手を汚すなんて」 

 特に龍玉には申し訳なさと後ろめたさを感じる。

 それと同時に、ふたりに討たれているであろう兵士たちのことを考えて、心の中で冥福を祈った。

「おい、手が止まっているぞ!」

 他の人員に叱責されて、はっとして、作業にとりかかる。とりかかりながら、

「まったくいい気なもんだな。連れは戦争してるってのによ」

 という心無い言葉が投げつけられた。

 三人で役所にゆき、傭兵として戦争にゆく手続きをしたとき、虎碧だけは後方の荷駄隊に入れてもらうように龍玉と源龍が役人に言ってくれた。

 おかげで危ない思いをしないですんではいるが。

(いけない。考えるのはやめよう)

 いろいろ思うところはあるが、いまは、自分のできることをするしかなかった。

 虎碧の気持ちをよそに、源龍と龍玉は得物を振るって城兵を薙ぎ倒してゆき。そのことで城兵の守備にほころびが生じて、寄せ手の辰軍の兵がどんどんとのぼってくる。

「おっと、せっかく頑張っているんだから、先頭切ってやんなきゃ」

「はあ?」

 龍玉の言葉を聞いた源龍は苦笑し、城兵のひとりに蹴りを入れて城内へと蹴り落とす、と同時にその落下する城兵の腹に飛び乗った。

 ひとたまりもなく落下する城兵が地面に叩きつけられる寸前に源龍は跳躍してうまく着地し。その背後で、ぐしゃ、という何かが砕けてつぶれる音がしたのもかまわず城内を突っ走った。

「その手があったか!」

 と、龍玉も同じように城兵を蹴り落としその上に飛び乗って、地面に叩きつけられる寸前に跳躍して着地すると同時に源龍を追って。その後ろで哀れな城兵は地面に叩きつけられて肉塊と化した。

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