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旅は道づれ 六

(俺はこの女に何度ずっこけさせられているんだろう……)

 さすがの源龍も、どうにも龍玉には弱い。いくら元娼婦とはいえ、そんなにも簡単に男に身を預けられるものだろうか。

 虎碧は苦笑いをしている。それから源龍を見据えて、

「ありがとうございます」

 と頭を下げた。

「いいってことよ」

 源龍は頭を下げる虎碧を見ずに残りの飯を口に放り込む。別にふたりに対し親しみなどを覚えたわけではない。第六天女は虎碧の碧い目を狙っている。虎碧と一緒にいれば、第六天女に巡り会える機会が増える。

 それに……。

(香澄の奴ともけりをつけたいもんだな)

 第六天女の一番のお気に入りの屍魔の少女、香澄。宝剣ともいえる七星剣を託しているほどだ。

 しかし、第六天女も香澄も、こっちが会おうとしても会えない。会えるかどうかは、向こうの気まぐれだった。源龍も何度これには翻弄されたことか。

「まあ、いい。飯を食い終わったら出るぞ」

 そう言いながら飯を食い終わると席を立って大剣をひろい上げて縄をかけて背中で背負う。

 龍玉と虎碧も飯を口に放り込んで、席を立って部屋に戻って荷袋をとってきて宿の玄関までくれば。腕を組んで源龍がふたりを待っていて。

 くるりと背を向けて歩き出す。

「どこに行くんだい?」

「そうだな、とりあえず役所に行くか」

 役所に行けば、どこで傭兵の働き口があるのか知ることができる。辰が大陸東方を統一したとてまだ十年。

 完全に服従していない勢力がいまだに反抗している。それを鎮めるために軍隊が派遣されて、局地的な戦闘が繰り広げられている。

 それにともない、金を出して傭兵も募っている。源龍も傭兵稼業で日銭を稼いでいる。これからも傭兵稼業だろう。

「及ばずながら、あたしもご一緒させてもらうよ」

「だめだ。お前は虎碧について、守ってやれ」

 その言葉に龍玉は、ほう、と感心した。

「存外優しいもんだねえ」

「勘違いするな。虎碧は第六天女と香澄をおびきよせるおとりだ。碧い目も死んだら使い物にならないだろう」

「ああ、そう。まあ照れ隠しということにしといてやるよ」

「ふん」

 虎碧は無言でふたりについていっている。

 これから自分はどうなるんだろう。そもそも、なぜ自分の目は碧いのだろうか。母親は碧い目の子を望んでいたのか。

 なぜ、なんのために。

(私の生まれた意味……)

 虎碧は、自分がなにか重いものを背負わされているような気持ちを否めなかった。

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