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剣士 三

 上段に構えられた大剣は、まるで紙でできているかのように剣士に軽々と持ち上げられて。

 そのまま振り下ろして斉涜怪の頭をた叩き割るかと思われた。

 が、しかし――

 剣士はゆるりとした動作で大剣を地に置くと、はいつくばって、斉涜怪の股をくぐった。

 周囲からどよめきが起き。それに続いて、「がはは」という五人の馬鹿笑いが響いた。

 股をくぐり終えた剣士は大剣を拾い、

「これでいいか?」

 と言うと、大剣を背中に担ぐ。

「けっ、腰抜けが!」

 斉涜怪らは剣士に罵詈雑言を浴びせ。取り囲んだまま動こうとしなかった。まだ、なにかしてやろうという腹づもりのようだ。

「言う通りのことはしたぞ。そこをどけ」

「ああ、何を言ってやがる。腰抜けが」

 五人は距離を縮め、じりじりと剣士に迫ってくる。

「毒食らわば皿までよ。その『だんびら』をいただこうじゃねえか」

 よこせ、と零志頭無が背中に回って大剣に手を伸ばした。

 ――その刹那。

 ぶうん、と風のうなる音がしたかと思うと。零志頭無の頭はざくろのように砕けて、どおっと地に倒れた。

「や、野郎!」

 と誰かが言った次の瞬間、またぶうんと風のうなる音がしたかと思うと、斉涜怪の腰から上は赤い血をまき散らしながら宙に飛んで、どさっと地面に落ちて。

 その、腰から下はぼけっと突っ立っていたのが、ばたりと倒れて血を垂れ流していた。

 腰から上と下に分けられた斉涜怪は、口を魚のようにぱくぱくとさせて、ぴくりとも動かなくなった。

 残る三人は、いつのまにか糞便を垂らしてしまっていて。ふるえる足をどうにか動かして、わっと算を乱して逃げ出した。

 それを見守っていた町の人々は唖然として、なにも言えずにいた。

 剣士は、血濡れた大剣を肩にかけて、斉涜怪と零志頭無の無残なむくろを冷たい目で見下ろしていた。

 人々は見た。

 剣士が背中の大剣のつかをにぎるやいなや、まるで竜巻を巻き起こすかのように大剣はうなり振るわれて。あっという間に斉涜怪と零志頭無を始末したのであった。

 日頃ごろつきを毛嫌いしていた人々であったが、あまりの凄惨さに息をのんで金縛りにあったように身動きできなかった。

 剣士は大剣を背中に担ぐと、骸には目もくれずに歩き出そうとした。

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