旅は道づれ 一
消えゆく声を聞きながら、虎碧は呆けた顔をして宙を見上げていた。
視線を感じれば、源龍がこちらを見据えている。目が合う。自分の碧い目をまじまじと見ているようだ。
目を見られるのはいい気持ではなく、顔を背けて視線からのがれる。
それから、ふっ、と全身から力が抜けてしまって尻もちをついてしまった。見れば龍玉も同じように尻もちをついてしまっている。
源龍は大剣を肩に置いてそんなふたりを見ながらため息をつくと、大剣を背中にまわして素早い動きで黒い綱でもって自分の身体にそれを巻きつけた。
龍玉も虎碧もかなり疲労して、尻もちをついてから顔を下に向けて、地に手をつき肩で息をしている。
「あーもー疲れたー」
龍玉ははじらいのかけらも見せずにごろりと仰向けになって大の字になった。切れ目が開いて胸の谷間があらわになるが、気にする様子もない。
そんな龍玉をとがめる気力もない虎碧は、じっと体力が回復するのを待つしかなかった。
そんなふたりを見て、源龍はふたたびため息をつく。
「おい、お前ら」
と言おうとしたが、ふたりのあまりの疲労困憊ぶりにかける言葉もない。
ふとあたりを見渡せば、ごろごろと転がる屍魔のかけらがぴくりぴくりと痙攣し。脳天から胸までを大剣で叩き割った無間道士のむざんなむくろもぴくりぴくりと痙攣している。
だがそれ以上動くことはなく、襲い掛かってくる危険はなさそうだ。
ふたりを放っておいて立ち去ろうかと思ったが、第六天女は言った。碧い目の娘といろ、と。
それが気になって、立ち去るにも立ち去れない。
第六天女は碧い目がほしいという。
「こいつ……」
辰の治める大陸東方は古来よりさまざまな国が建っては亡びを繰り返し。人の行き来も多く、中にははるか西方から来る者もあるという。その西方の者たちは東方の者たちと肌の色や目の色、髪の色が異なるという。
第六天女が虎碧の碧い目を求めるということは、それにはなにかしらの魔力がひそんでいるのだろう。
みたびため息をついてから、
「おい」
と声をかけると、龍玉は素早く上半身を起こし剣を拾ってつきつけながら、
「あたしらに襲い掛かったら殺すよ」
と鋭く言い放った。
「はぁ?」
源龍は目を丸くして、それから、べっ、と唾を吐き。
「うぬぼれるな」
と龍玉に図太く言い返した。




