剣風 五
「あ、っつつ……」
背中に痛みを感じながらどうにか虎碧が起き上がれば、源龍は大剣を掲げて第六天女と香澄めがけて駆け出していた。
「ええい、あたしも!」
胸の谷間があらわになる切れ目から手を離して龍玉も源龍に続いた。このままなめられて終われるか、と。
第六天女と香澄は動かず、迫る源龍とその後ろの龍玉を冷たい目で見つめて。その間にも源龍との距離は縮まって、ついには大剣が届く距離まで来て、それが思いっきり振り下ろされた。
次の瞬間に第六天女の脳天は木端微塵、にはならず。
「あッ!」
大剣の切っ先が思いっきり地をたたき、それから咄嗟に立ち止った龍玉が顔を上げれば、第六天女と香澄は宙を舞っているではない。いったいどうすれば勢いよく振り下ろされる大剣から逃れて跳躍ができるのだろうか。
「ちぃッ!」
源龍も顔を上げて大剣を構えなおすが、宙舞うふたりには届かない。
「ほほほ……」
冷たく覚めた顔をし無言の香澄の横で、第六天女は妖艶な笑みで冷笑しながら、三人を見下ろす。
「お前たちとの遊びは楽しかったぞ。これからも遊んでやろう。ほほほ……」
言い終えると、第六天女に香澄の姿が薄くなり、まるで風の前の塵のように四散するように消えていった。
が、しかし、
「おお、そうそう」
と、姿を消したはずの第六天女の声が三人の耳に響くではないか。
これは、と龍玉に虎碧が驚くのをよそに。源龍は鋭いまなざしで第六天女と香澄の消えた宙を見上げる。
「源龍よ、その碧い目の娘とともにいるがよい。わらわはその碧い目がほしいでの。ほほほ……」
声は徐々に小さくなって、気が付けば沈黙が耳に痛い。




