剣風 二
「すごい……」
龍玉も虎碧もそれを唖然として見ていた。散々苦戦させられた無間道士を一撃でぶっ倒すとは。この源龍という男、何者か。
大剣を構えなおし、源龍は無間道士がよろよろと立ち上がるのを見据えていた。第六天女に香澄は冷静にその様を見つめていた。
無間道士は脇腹がえぐられて肉が削がれてあばら骨が剝き出しになってしまっている。それでも、立ち上がって源龍と対峙し、
「ぐわあ!」
と襲い掛かった。しかしその動きはのろかった。やはり相当にこたえているようだ。それを見て源龍は目を光らせて、大剣を上段に構えて駆け出すやぶうんと大剣をうならせてその頭上めがけて振り下ろした。
ぐしゃあ――
という鈍く深いな音がするとともに、その脳天から大剣はめりこんで裂いてゆき、ついには胸板にまで達した。
脳漿や血があふれ出て、胸板まで真っ二つに裂かれ開いたその無残な姿。源龍は大剣を振り上げて後ろに下がれば、無間道士はゆっくりと後ろに倒れてゆき、ずうんと音を立てて地に倒れて。ぴくりぴくりと痙攣する以外に動くことはなかった。
「……」
龍玉と虎碧はもう唖然としっぱなしである。こんなに簡単に無間道士がたおされてしまうとは。
源龍は大剣に付着した血や脳漿を睨みつけると、ぶうんと一振り、それらを飛ばした。それからじっと視線を第六天女にそそいだ。
「ほほほ。そのように見つめられたら照れるではないか」
手を口に当てて艶やかに笑う。
「次は誰だ。それとも、ふたり一緒に来るか」
大剣の柄を握る手に力をこめて、いつでも駆け出せるよう地に足をめりこませる。
その後ろで、どうにか立ち上がれるようになった龍玉と虎碧は剣を拾って源龍の後ろで剣を構える。それを察して、
「お前らはすっこんでろ!」
と振り向かずに後ろに言った。だがそのまますっこむふたりではなく。特に龍玉などは、
「は、かっこつけんじゃないよ。この紫女にはあたしらもひどい目に遭わされたんだ。一太刀でもくれてやらなきゃ気が済まない!」
と言い返した。虎碧対照的に、
「七星剣の女の子は私たちがひきうけますから、あなたは第六天女を」
と、礼儀正しく言った。
そのやりとりを見て第六天女はにやりと笑う。
「面倒じゃな。三人とも相手をしておやり!」
と言うやいなや、香澄は剣をかまえて駆け出し。まず源龍へと向かった。向かわれる源龍もだっと駆け出し、香澄の七星剣と大剣が火花を散らした。
そうかと思えば、素早い動きで大剣からはなれて源龍の脇を駆け抜け。虎碧に剣をふりかざす。
虎碧も己の剣で七星剣を打ち返したが、それから弾みをつけて今度は龍玉に剣をふりかざす。
「う、お」
香澄の七星剣が鼻先にまで迫って、それを咄嗟に己の剣で弾く。
それから次々と、香澄は源龍、龍玉、虎碧へと剣を繰り出すのであった。




