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最終話:さよなら

重たい瞼を上げるとそこは知らない部屋だった。

しかし10秒もしてば知ってる部屋となった。

「そういえばアメリカにいるのか」

知らない内にそんな事を呟いていた。


風呂に入りながら今日の予定を思い出す。

予定というほどのものでもないのだけれど。

僕はカルフォルニア州にいくつもりだ。

そこにあるはずのキュルート公園に。

昔彼女が言っていた。

「私ここに言ってみたいわ」

「どうして?」

僕は彼女に聞いてみた。

「綺麗だから。散歩してみたいの」

「へぇ」

「将来子供が出来た時に家族でここを歩きたいわ」

彼女はそう言って少しだけ顔を赤らめた。

なんとなく僕は嬉しくなったの覚えてる。


主に地図を頼りに僕はカルフォルニアまで行った。

しかし公園はというと地図ではどうにかなるものじゃなかった。

そこで僕はインターネットカフェに入って調べたり

なれない英語で人に尋ねたりした。

大体の位置が掴めた時にはまわりは暗くなっていた。

「今日はここまでか」

僕はそんな事を呟いて近くのホテルに部屋を取った。

「明日には行けるんだ・・・」

やっと彼女に会えることが出来るんだ。

どれだけこの日を待ち望んだだろう。

「でも・・・」

彼女はどうなんだろう。

僕のことを忘れたのかな。

違う誰かと付き合ってるのかな。

結局この日も僕の胸には期待と不安が渦巻いていた。


次の日は疲れと安堵感と不安感からか寝坊してしまった。

特に問題がある訳じゃなかったからよしとする。

お風呂、着替え、朝食、歯磨きをこなしていく。

当分はこのホテルに泊まるつもりでいたから荷物は持たず外にでる。


外に出て1度深呼吸する。

「気持ちがいいな」

そんな事を呟いてしまう。

僕はキュルート公園に向かうことにした。

他の事なんてやってられる状況じゃなかった。

10分ほどでその公園に到着した。

結構大きい公園で彼女が行ったように綺麗だった。

公園の中には4、5人の子供達がいた。

皆で仲良く遊んでる姿が可愛らしかった。

そこから遠く離れた所に母親らしき人たちが集まっていた。

こういう所は日本と一緒なんだなって思う。

僕はしばらくの間交互に子供たちや母親達を見ていた。

すると1人の女の子が母親達の元へと走っていった。

そして迷わず一人の母親の洋服を引っ張った。

引っ張られた母親は娘の方を向いた。

その時、その母親の顔が僕にしっかりと見えた。

それはまぎれもなく彼女だった。

さっきまでは母親達と重なって見えていなかったらしい。


僕は絶望した・・・


まさか結婚して子供がいたなんて予想外だった。

しばらく母親となっている彼女を見つめた。

あの頃の面影を残し大人になった彼女は綺麗だった。


僕は帰ることを決めた。

遅くても明日の便で。

彼女は幸せなんだからそれでいい。

何よりも彼女の幸せを望んでいたじゃないか。

自分に必死でそう言い聞かせた。


「さよなら」

小さな声でそう呟いた・・・


その時彼女がこっちを向いた。

一瞬目が合って彼女は驚いた顔をしていた。

僕は踵を返し振り返らずに歩いた。


後ろから僕の名前を呼ぶ声が聞こえる。

それは久しぶりに聞いた彼女の声だった。

涙が出そうなほど悲しいはずなのに声を聞くとほっとした。



次の日の帰りの飛行機はガラガラだった。

悲しみを忘れる為に少しうるさい方が良かった。


そして2年の月日が流れた。

僕にはやっと新しい彼女が出来ていた。

今では彼女のことを思い出す回数は減ったと思う。

でも、時々空を見上げて語りかけるんだ。


「君の幸せを僕はずっと願っているから」


今度またあの公園へ行ってみよう。


今度は彼女と話したい。


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