それってセンチメンタルジャーニー?(2)
はー‥ねむい。
昨日5時頃までカラオケで作業して、家に帰ってきて風呂に入って即行で寝て、で、朝の9時10分前。ちなみに今日は9時半からファミレスで作業。私何時間起きてるんだろう。
「はー‥もうちょいしたら時村来ちゃう…準備しないと」
眠たい目をこすって自分を奮起させると、洗面台へと向かって顔を洗う。少しだけ目の下にクマがあるけれど気にしないって感じで化粧でクマを隠す。いつもと化粧ちょっと違うけど仕方ないかな、うん。自分の部屋戻って今日の服を引っ張り出す。タイツとワンピースとカーディガンを出してジャージから着替える。
「うー‥寒い」
温めてない部屋から暖房の効いた1階へと移動する。部屋に戻って朝ごはんの準備をするためにキッチンへ行って冷蔵庫の中をのぞいた。
‥なんにも食べる気しないや。
ヨーグルトとキウイと豆乳を冷蔵庫から取り出して、キウイをすりおろすと、ヨーグルトと豆乳を入れてコップの中で混ぜる。それを一口のどに通して、キッチンからソファに移動した。
健康的ってこういうことか?って朝ごはん食べてないもん、そんなわけないか。
ぼーっと朝のニュースを右から左に聞き流して、まどろむ意識の中でインターホンが聞こえるのを待った。多分、10分くらいは寝てたんだと思う。はっと目を覚ますと、外からインターホンの音が聞こえてきた。慌てて玄関へ向かって扉を開ける。開けた先にいたのは、私を迎えに来た時村だった。慌てて開けたくせに、扉の先にいたのが時村でよかったと内心でホッとする。
「寝てた?」
「え、なんで?」
「ほほに寝痕ついてる」
うっそ。
玄関にある鏡で顔を見ると、たしかにほほにはクッションの痕がくっきりと残っていた。
うわ、恥ずかしい。
「こんな時間に寝てるって、昨日寝たの遅かったの?」
「寝たの6時前くらい」
「6時!?そんな時間までなにしてたの」
「カラオケで作業。5時頃に帰ってきて3時間ちょいくらい寝て今にいたるって感じ」
時村を部屋に上げて、私は飲みかけの豆乳をいっきに飲み干す。部屋の暖房を消して戸締りをしっかりしてテレビを消すと、玄関へ移動した。私の後ろをついてくる時村はすごく心配そうな顔をしている。
「すげぇ無理してるじゃん」
「まぁ今だけだしね。さ、今日も一日頑張ろうっと」
やる気を口にして、眠気を気分で吹き飛ばして、家から出る。時村は心配そうに私を気にしながら隣を歩いてくれた。ファミレスに着くと、もう陽斗と奈津子がいて、私たちと同じタイミングぐらいで梨央が来た。
「おっはよーって梨央と直、なんかすっごい疲れてない?気のせい?」
奈津子は私と梨央の顔色を見て心配そうに声をかけた。その言葉に、隣にいた梨央の顏を見ると、私を見る梨央と目が合って、目の下にクマを作った、今朝の鏡に映っていた化粧をしていない自分の顏があった。思わずその歳より6つくらい年老いたその顏に笑ってしまった。
「ぶっさいく」
「あんた人のこと言えた立場じゃないから。同じくらいひどい顏してるからね」
「否定しないわ。お互い疲れてるんだもん。でもまぁなんとかなるでしょ。合宿もこんな感じでなんとかなったし」
「あれはまた別の話だけどね。とりあえず今はやるしかないし」
梨央の言葉に作業に取り掛かりだした私たちはドリンクバーとテキトーになにか食べ物を頼んで黙々と作業を進めた。
「あ、これさ、体育館とか言ってたんだけど、実際にするなら視聴覚室とかのほうがよくない?先生が入ってきたら上映みたいな感じになるんでしょ?」
ポテトを口にくわえながら梨央は言った。なんだか最近ポテトしか食べてないような気がする。アメリカの子供にでもなったみたい。
「確かにそうかも!視聴覚とかの方が先生も呼びやすいかも!場所も空いてるだろうし」
梨央の言葉に奈津子が賛同する。その様子を見ている陽斗と時村は、おそらく異論がないのだろう、飲み物を口に含みながらただ話を聞いていた。
「直、大体の段取りはもう決まってるの?」
「んー、まぁ大体はね。細かいところはもうちょい調整がいるだろうけど。とりあえず7日に高坂をどうにかして視聴覚室に呼び出す。ここ、できたら連れてくるより自分で来てもらったほうがいいかも。で、部屋は真っ暗にしておいて、高坂が入ってくると同時にビデオスタート。あとで旬に頼んでみるけど、ここ映画の3,2,1みたいなカウントダウンとかあるといいかな。んで、終わったら、私ら登場してアルバム渡してっていうのがおおまかな流れかな。備品壊してもいいならスクリーン破ってそこから飛び出すんだけどね」
さすがにそんなのしたら、今後一切学校に行けなくなりそうだから。
「いいね、その流れ。先生が電気間違ってつけちゃったらダメだからちょっと早めに映像つけとけばいいよね」
奈津子の言葉を首を振りながらメモに書いていく。
「視聴覚室のホワイトボードになんか書いておこうよ!それ白い布とかで隠しておけば多分ばれないと思うし」
梨央の言葉もメモ。白いコピー用紙はどんどんアイデアで埋まっていく。なんだかサプライズというだけに、送別会なのにとても楽しみになっていく。
「とりあえず高坂には泣いてもらわないとね」
目標はこれ。…まぁ、逆にこっちが何人か泣きそうだけど。




