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君の隣を先約します。  作者: ゆきうさぎ
<第9章>
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勘違いダーリンと勘違いハニー(5)

11月があと3日もすれば終わる。私たち高校3年生は、期末試験が終わってからは自由登校になっていて、半分くらいしか3年生がいなくなった。もちろん、私は学校になんて行くつもりもないし、行く必要もないって考えてたから、これからは家でまったりごろごろできるなんてことを考えていた。のに。私は今、制服を着て学校に来ている。なぜなら、


「直、ここ教えてー!」

「あ、そこ、私もわかんなかった!」


なぜか私は学校で家庭教師をやらされている。もちろん時給なんてものは出ないし、暖房も効いているのかわかんないような場所だし、確かにそれなりに自由はきくものの、いい思いはあまりない。しかも、よくわかんないけど、いつも、当たり前のような感じで、時村は私の隣に居座っている。

今、3組の教室でダラダラと勉強をしているのは美弥と梨央と奈津子と旬をいれた6人。


「それ少し前に習ったじゃん。2倍角の公式使って」

「あー‥なんかそれやったような気がするけど、呪文すぎて頭ん中入らなかった」

「受付拒否かよ。せめて1回は頭の中入れろよ」

「tanのグラフってこれ?」

「………それ、放物線だし。関数違いだし」

「えぇ!?私テストの時これで提出したよ!?」

「…私はなんであんたが赤点じゃないのか不思議だよ」


どう覚え間違えたらtanθのグラフが放物線になるだよ。つーか先生、こいつは赤点の点数じゃなくても赤点の補習生の数に入れとくべきだよ。


「白雪姫がいるといつも騒がしいよな」

「「うっさい、旬」」

「ほらはもった!」

「はもったじゃないし。別にはもったから騒がしいにはならないでしょ」

「間違いない。でもって梨央は早くその問題解いてよ。次に進めないでしょ」


私さっきからあんたにほぼ付きっきりで教えてるんだけど。


「135°っていくつ?」

「それぐらい自分で考えろ!なんであんたってこんなに数学出来ないの!?」

「うわー‥あの雪瀬が怒ってる」

「ね。普段なら見れない光景だよね」

「あのねー、直。それは足がない子になんで歩けないのって聞いてるのと同じなんだよ?」

「無駄に国語ばっかできやがって。屁理屈ばっかり言ってないでとっとと解け」


私は教科書の問題を指さして、梨央の問題の先を促した。梨央はしぶしぶといった感じで、指から離したシャーペンを持って机に向かいだした。その梨央の姿を見たみんなもまた机に向かいだす。その4人を見てから、私は久しぶりに背もたれに背中をつけた。


「家庭教師も大変だな」

「そう思うならあんたも漫画ばっか読んでないで手伝いなさいよ」

「これも勉強だって」

「なんの」

「社会風刺だ」

「ほざけ」


社会風刺の勉強なんてものがあるか。あったらこっちが見てみたいわ。

ため息をついてじゃがりこをぱくり。口に広がるしおっけなんともおいしい。なんだか視線を感じてそちらに目を向ければ、時村がじっとじゃがりこを見ていて、1本差し出せば口を開けた。

…食べさせろってか。

どこまでわがままなんだと思いながら、口までもっていってやるとパクリとかぶりついた。うん、可愛い。顔がいいだけに3割増し。


「あいつら何してんの、」

「やだよねー、こんなときにまでラブラブ見せつけられたら」

「え、あの2人付き合ってんの?」

「なわけないじゃん。仲良しこよしなのよ、あいつら。ま、ちょっとあれはどうかと思うけどね。それに時村には今、熱愛報道出てるし」


なんて、勉強している組が言っていることには気づくはずもなく、私は時村にじゃがりこを与え続けていた。

と、そんな時だった。


「時村君」


凛とした声が教室に響いた。私たちしかいない教室に入ってきたのは、今の和気藹々とした雰囲気には少し似つかない、学年一の才女。漆黒の髪を今日はポニーテールにして、毛先を揺らしながら彼女、深山ちゃんは時村の前までやってくる。

‥あ、やばい。今ちょうどじゃがりこで餌付けしてるところ。


「お、修羅場?」

「話題の人物現る!」

「ほんっと、話題に事欠かないねー、あの2人は」

「え、え、これどーすんの?」


みんながみんなバラバラの言葉を発しているけれど、反応はどう見ても奈津子以外面白がっている。いや、今はそんなことより目の前の人物。


「これはどういうことですか」

「…いや、どうって、」


しどろもどろの時村を見た後に、深山ちゃんは私に視線をかえる。この前のファミレス以来、睨まれ続けてはいるが、今日のはよりいっそう鋭かった。なんかもう鬼神に迫るものがあるっていうか。


「わたくしあの日、雪瀬さんには忠告したと思うのですが」

「あー‥まぁ、そーだね」


忠告っていうか、テポドンね。でかいの2つくらい落としてくれたね、あの日。びっくりしすぎて忘れられそうにもないよ、あれ。

私はそばにあったココアを飲んで頷く。何とか自分を落ち着かせようとした行動だったけど、ココアを置くときに私を見る時村と目が合った。


「それ俺の」

「え、あ、ごめん。近くにあったから私のだと思っちゃった」

「じゃあ俺こっちもらう」

「え、私のが量残ってるじゃん!一口飲むだけにしてよ」


「「「「…(こいつら煽ってるってことわかってるんだろーか)」」」」


時村とお互いのココアを争奪していると、前から咳ばらいが聞こえてきて、時村と2人して今の状況を思い出して椅子に座りなおした。

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