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君の隣を先約します。  作者: ゆきうさぎ
<第9章>
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勘違いダーリンと勘違いハニー(3)

「女ってこえー」

「そう言うあんたの隣にいるのも女だけどね」


ファミレスからの帰り道、土手道を歩く時村はもう出ていない夕日に向かって吠えるかのように大きな声で言った。


「いやーでも深山ちゃん予想以上にぶっ飛んでたね」

「笑い事じゃねぇよ。俺これからどーすりゃいいんだよ」

「いーじゃない。学年一の才女と付き合っちゃえば」

「どこもよくねぇだろ。俺ああいうタイプの女ってすっげぇ苦手」

「深山ちゃんちょーっとお高いっていうかプライドが半端なく高いからねー。でもあんたには勿体ないくらいの美人だしなんでもできる子じゃん」


あの子も黙ってれば大和撫子って感じで美人なのになー。まぁ人のこと言えたもんじゃないけど。


「いやでもマジでどーっすかな‥。俺まったくその気ないんだよな。今回は卒業かかってたから本気でやったってだけだし」

「ならすっぱり断っちゃえば?ダラダラしてると収拾つかなくなっちゃうし。明日にでもはっきりいいなよ」


まー、それはそれでいろいろ収拾つかなくなるんだろうけど。だいたい、向こうも確認もなしに、時村は自分が好きって思ってるから厄介なだけだし。


「あ、それよかお前今日俺んち寄ってくだろ?」

「は?このまま帰るつもりだけど」


なんでそこ断定形?


「あー‥言ってなかったっけ。さっき兄貴から連絡があってさ、雪瀬連れて家に帰ってこいって。ついでに晩飯の食材も調達して来いって言われた」

「それって私が晩ご飯作らなきゃじゃん」

「兄貴もそのつもりで送ってるから大丈夫だよ」


‥なんの大丈夫だよ。


とかいつもぶつくさ文句はこぼすけど、なんだかんだで呼ばれた日はしっかり食材を買って時村の家にご飯を作りに行っている私。夏休みの間だけという口約束は、やはり口約束のままで終わってしまったようだ。絆されてるだろうなーなんてわかってはいるけれど、案外この関係性も居心地が良くて悪くない。


「じゃあ今日はなんにしよっか」

「俺肉くいてぇ」

「肉ねー」


肉ってどんだけ種類あると思ってんだよ、なんていう言葉は呑み込んで、私は時村にかごを持たせて精肉のコーナーへ直行する。


「お、ひき肉が安い!」


目に入ったのはひき肉の特価の文字。これは今日はひき肉を使えってことだなと勝手に解釈して、私はひき肉を籠の中に入れる。時村は携帯を触りながら、何も言わずに私の後ろをついて回る。ちょっとくらい意見言ってくれてもいいのに、なんて思ったりもするけど、時村なりの気遣いなんだろうなって思うようにしてかごにいろいろ入れていく。だいたいの食材が揃ったところでレジに並んで買い物袋に詰め替えて店を出た。重たい方を時村に持ってもらって、歩きなれた高坂家までの道を歩く。


「今日何つくんの?」

「今日はハンバーグなのです」


子供が愛してやまない食べ物なのです。ハンバーグって無敵だと思う。だって子供が嫌いなピーマンとか人参とか入ってても食べちゃうじゃん。本当、無敵だと思う。


「ハンバーグとか久しぶりかも」

「だろうね。なかなか作んないもんねー、男の子だと」

「まぁ手作りにすると時間かかるからな。兄貴も料理が好きな方じゃないし」


ハンバーグと聞いた時村はすごく嬉しそうで、こいつもなんだかんだで子供だななんて思ってしまった。


「うわ、さむっ」


曲がり角を曲がってすぐ、正面から冷たい風が吹いた。11月ももう終わるんだから、寒いのは当たり前で、外がもう暗いのも当たり前で。そんな当たり前の中を、膝より上の長さをしたスカートをはいている自分が悪いのだと改めて思ったり。


「女子って寒い寒いって言うわりにスカート丈短ぇよな」

「男子に夢と希望を与えてるからね」

「夢と希望って‥確かに与えられてるやつもいるけど。俺からしたら、んな生脚出されたら見てて寒いわ」

「目の保養って言うじゃん。それに私そこまでスカート短くないもん」


標準よりちょーっと、ほんのちょーっとだけ短いくらいだし。


「短くしてるわりに中見られたら怒るよな」

「あーあれはね、確かに私も矛盾してると思う。見られたくないならスカートおろせよってなる。てかこっちだっけ見たくて見てるわけじゃないし」

「雪瀬ってそういうところ男目線だよな。ちょっと意外」

「これでも男の友達多いからね。女子に対する不平不満は結構聞いてたし。ま、だから私がそうするってものでもないんだけど」

「ふぅん、男の友達ね」


時村は小さな声でそう言った。おそらく独り言なんだろうし、多分心の声なんだろうと思うから、なにも言わなかったけど、時村のその言い方は、なんだか意味深に聞こえた。


「じゃあそんな雪瀬にひとつ忠告」

「‥忠告?」


そんな忠告されるようなことあったかな。首をかしげて、時村の次の言葉を待っていると、時村は何とも言えない色香を放ちながら笑った。なんだかその色香が高坂と似ていてちょっとぎくってした。


「男ってね、見えるようで見えないくらいが一番好きなんだよね」


なにが、とは聞かない。いや聞けない。おそらく今までの話の流れからして、それはスカートの中の話。


「雪瀬って結構きわいラインいってるから気を付けたほうがいいよ。今日もファミレスのとき足組んでたけど、あれスカートずり上がるからやめたほうがいい。まわりの男子、けっこうそういうの見てるし」


「ま、俺もだけど」とおどけて言って、時村は先に部屋の中へ入っていく。


「…って、どこ見てんのよっ」


あんのド変態っ!!





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