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君の隣を先約します。  作者: ゆきうさぎ
<第8章>
52/83

おかえり現実、さよなら浅き夢(1)

2学期ももう半分が終わった。

夏の日差しがとても恋しいと感じるくらい、今では冷たい風が吹き抜けている。そう、季節はもう秋。いや、秋なんて感じてないけど、秋を過ぎようとしている。冬に片足突っ込んでる感じ。まぁ、寒い。秋口に着だしたカーディガンの必要性を感じられるようになった。だぼだぼのカーディガンからのぞく指先でカフェモカの入ったマグカップを持って口に運ぶ。甘いようでビターのほろ苦い味が口いっぱいに広がる。口から話したカフェモカを見てから、視線を机の上にあるノートやら参考書やらにうつす。思わずため息が漏れた。


「なーんでこんなことやってんだか」


なんでって聞けば、先生たちは口をそろえて一様に「お前の将来のためだ」と言う。本当のそうなのかという疑問を持ったところで、結局答えなんて見つからなくて、そんなことをするくらいなら勉強をしろと怒られて終わり。


‥つーかそろそろマジで進路とかちゃんとしないと高坂に怒られる。


なんとかしないとと、自分をいつも奮い立たせているけど、意味はなくて。合格判定模試じゃ、だいたいがA判定かB判定。悪くてもC判定って感じで。


どーすっかね、ほんとこれ。


ぴらりとファイルから出した合格判定模試。別にこんなものに一喜一憂するつもりはないが、それでも結果は気になる。だけど見てから思う、ほらなって。


「受験生らしいことしてんじゃん」


ふいに出来た影に、顏を上げれば、バイト先の制服から高校の制服に着替えた時村が立っていた。どうやらもう店じまいの時間らしい。


「これでも受験生ですからね」

「普段そんな素振りまったくみせねぇだろ。教師陣が言ってたぜ?お前からは受験生の雰囲気が感じられないって」

「奇遇ね。それと同じ話、あんたでもしてたみたいだけど?」

「ハハ、どっちも問題児ってことだな」


一緒にすんなって言いたかったが、その通りだったからなにも言わなかった。時村は私の前に座って机に散らばるプリントやらを見て「へぇ」という言葉だけを漏らした。


「雪瀬って授業真面目に聞いてるんだな。俺寝てばっかなんだと思ってた」

「は?」

「板書とかすげぇ綺麗じゃん。まじで意外。あ、もしかして雪瀬が頭いいのってこういう努力が実ってるおかげ?」

「残念。頭がいいのは要領がいいから。ノートがきれいなのは、きれいじゃないと私の気が済まないから。だいたいそれ、この前中間があったからまとまってるだけだし。普段してる板書こっちだし」


時村の前にルーズリーフを数枚置く。あんまり人には見せたくない、走り書きのところもある汚い板書。それを手に取った時村はそれをじっと見て、またさっきと同じように「へぇ」と一言呟いた。なんか、原稿持って行った作家さんにでもなった気分。すっごい嫌な感じ。こんなの毎回してるんだって思うと、食っていけない仕事だけど尊敬するなぁ。


「こっちも十分きれいじゃん。書き直すってすげぇ手間じゃね?これ何科目やってんの?」

「何科目だろ?‥英語は書き直してないし、古文と漢文もしてないから5科目くらいかな?あーでも期末になったら他教科もあるからもうちょい増えるかな」

「…‥雪瀬って俺が思ってるよりすげぇやつかも。(‥兄貴が勉強に関しては頭上がらねぇって言ってたのこれか、)」

「お、やっと見直したか」

「ミジンコくらいな」

「ちっちぇな」


「仲良しみたいだね」


この店の紙袋を持った、この店のオーナー、藤木さんはくすくすと笑いながら私たちのテーブルに来た。この店に美弥と(無理やり)行くようになって仲良くなってしまった。美弥はここで働いているイケメン君をどうやら落としにかかっているらしく、足しげく通ってるらしい。受験勉強しろよって言ってやったら、「そっくりそのまま返す」って言われた。


「「いや、全然」」


あ、はもった。


「ほら、仲良しじゃないですか。あ、直さんこれ注文されたケーキです」

「あ、ありがとうございます」


紙袋を受け取って中をのぞく。別に焼きたてのパンでもないから匂いがするわけでもない。しいて言うなら紙袋のにおいがするくらいだ。


「そんなにケーキ買ってどーすんだよ。やけ食いか?」


なんのだよ!


「違う。これ美弥にあげるの」

「全部?」

「そ、全部」


まぁ1つはもらうつもりしてるけど。あいつ食い意地張るからもらえるかはちょっとわかんないけど。


「文化祭の日、体育館に行かせてくれたの美弥だから。そのお礼にケーキ、ワンホールって言われたの。あいつ甘いものにだけは目がないの」

「スイーツ好きは怒りっぽいって話だぜ?」

「まじ?」

「まじまじ。だから糖分取ってるんだって」

「あーなるほど!なら一緒にカルシウムも取ればいいのに」


そしたらイライラも解消されるじゃん。


「直さん、このケーキ余ったんでどうぞ。さっき迷ってらっしゃったので」

「え!いいんえすか?」

「はい、どうぞ。余ってしまってももったいないので」


なんて優しいんだ!となりの顏だけのやつとは違う!さすが藤木さん!やっぱり素敵な男性ってこうじゃなくっちゃ!





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