trick or treat. ※お菓子はいらないのでいたずらします。(8)
「なーんーで、こうなるんだ!」
さっきの1件から、たて続きに起こる不祥事に、文化祭実行委員は頭を抱えていた。それに苦笑する狼男さんはすごく疲れ切っていて、店を休憩中にしているため、教室の前は待っている人で溢れかえっていた。そして、文化祭実行委員の不満とも取れる言葉は、ほかでもない私に向けられたもので。
「なんでって言われても私困るんだけど」
これ決して私のせいじゃないと思うんだよね。不可抗力ってやつ。
「開き直るな!」
「そんなこと言われたって、こんなの開き直る以外にどうしろっていうのよ」
「あーもー、なんであんたってそういうところでプラス思考なのよ!」
「マイナスに考えたっていいことないじゃん」
「そうだけど!でもあんたは開き直るな!」
文化祭実行委員はきゃんきゃんと私に吠えてから、なにか対策を練っている。その後ろ姿を見ながら、思いついたことを美弥とあれやこれやと話す。
「つーかさ、もう私奥に引っ込んじゃったほうが早くない?」
「出た、極論」
だって私13時からの劇見に行きたいし。
「それはだめ!あんたがいなくなったら客が減る!」
「まぁ私たちからしたら減ってくれた方がむしろ好都合なんだけど」
「じゃあそれでいいじゃん」
「えー、でもそうしたら直の仕事なるなるじゃん。なんのためにそんな可愛らしい格好してるのよ。あ、先生に見せるためか」
「黙れ」
「おー、ばっさり」
なんで高坂に見せるからって私がこんな格好しなきゃならんのだ。気に食わん。
「じゃあさ、もうこの仕切りとかなくしちゃって、オープンスペースにしちゃおうよ。そしたらみんなの目もあるから下手なことできないし。本来の形に戻したら?みんなもともとはウェイトレスなんだし」
「狼君ナイスアイデア!」
「橘ね」
狼君の案は即採用され、文化祭実行委員(名前は宮城さんって言うらしい←)は見事なまでの指示をとばして教室はみるみる変わっていった。
「はー‥よくもまぁこんな短時間で変わったわね」
「まったく。何日も費やして作った時間ってなんだったわけ」
「さ、みんな支度して!開店よ!」
宮城さんの声に、狼君が教室の扉を開けた。ぶわっと人があふれてきて、教室の中の状態が変わったことに目を丸くしていた。狼君がその説明をして教室の中に入れる。入ってくる人たちは明らかに落ち込んでいた。
「下心満載だな」
「間違いない。何しに来たんだって話」
そんなことをぼやいてから、私たちは座ったお客さんにメニューを渡しにそこへ行く。注文を取って、キッチンへ戻って、出てきた料理をテーブルに運ぶ。その繰り返し。
「はー…なんで人減らないのよ」
「直の集客力のせいでしょ」
「私だけのせいじゃないでしょ」
「ま、宮城の戦略勝ちってとこね」
「そういうことよ」
「げ、どっから沸いたんだよ」
「沸いた言うな。ぶつくさ言ってる暇があったら注文取っていて」
「「へーい」」
なんつー人使い荒いんだよ。絶対ろくな死に方しねぇぞ、あいつ。
「すいませーん」
「はーい。ご注文はお決まりですか?‥って、」
「あれ、雪瀬じゃん」
「直、なんつー格好してんの」
「なんであんたらがここに来てんの」
最悪だ。
さっきから女子が珍しくキャーキャー言ってると思ったらこいつらかよ。超絶美形の、あ、片方は超絶美女だけど、陽斗と時村。まじで何しに来てんだよ。
「3組にめちゃくちゃ美人な女の子がいるからっていう噂聞いてさ。確かにこのクラス、比較的に可愛い子とか多いけど、そんな騒ぐほどの美人いたっけって谷口と話してて。で、俺らシフトでちょうど休憩だからついでに来てみた」
「で?来てみたら私だったと」
「でもまぁ、これは納得だわ」
「俺も」
納得とかそんなのいらないんだけど。
「‥なんでもいいや。で?注文は?」
「可愛げねぇなー」
「うっさい。頼まないなら出てって。こっちは休憩ないほど忙しいの」
「じゃあ俺カプチーノとサンドウィッチ」
陽斗はメニューを見ながらそう言ったから、私はそれをメモに書く。そのあとに時村を見ると、時村と目が合った。
「優柔不断かよ」
「うっせぇ」
「あんた辛いの好きなんでしょ?だったらチリソースのホットドックとかにすれば?飲み物はカフェモカがおすすめだからそれにしとくねー」
「‥勝手だな」
「決めるの遅いあんたが悪い。こっちはどんだけ回転率あげるかにかけてんの」
それだけ言い残して私はキッチンに戻る。キッチンにいる女の子は仕事をほぼ放棄した状態で、さっき注文を取った2人を見ている。
「あのー‥あれ焦げてません?」
「え?‥って。あぁぁあ!!見惚れてたからつい!」
ついじゃすまないでしょーが。商品焦がしちゃったら。どーすんのよ、この真っ黒な物体。もうなに作ってたのかもわかんないくらい焦げてるんですけど。よくもまぁこんなになるまで気が付かなかったな。ある意味怖いよ。
「私はやっぱ谷口君かなー!」
「えー!時村君ああ見えてかっこいいから!」
「どっちもかっこいい!」
「いや、お前ら仕事しろよ」
なんで調理場そっちのけでイケメン見てんだよ。
「あ、見て!榎本兄!いつ見てもイケメン!」
「旬君爽やか~!」
「‥だから仕事しろって」
「やだ!今日准君もいるじゃん!」
「准君かっこいい~!私狙っちゃおうかな!」
「私旬君派だなー!」
…だから、仕事‥。




