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君の隣を先約します。  作者: ゆきうさぎ
<第7章>
45/83

trick or treat. ※お菓子はいらないのでいたずらします。(3)

「ただいまー」


校内を何周したか覚えてないくらい練り歩いたあと、教室に戻れば、なんだか疲れ切った化け物たちが必死に動き回っていた。


「なにこの空気」


ていうか、なんでこんなに慌ただしいんだ。


「あ、やっと帰ってきた!もう、どこほっつき歩いてたの!」


と、私を見つけた文化祭実行委員は手を引っ張って怒った。

…この時間まで店の宣伝して来いって言ったのあんたなのに。なんで私怒られてるんだ。


「雪瀬さん待ちの女の子、午後からいっぱい来るはずだから覚悟しといてよ!」

「えぇー‥私の休憩時間は?」

「そんなのあるわけないでしょ!見てよ、この尋常でない忙しさ!だれのせいだと思ってんのよ」

「私のせいだと言いたげじゃん」

「言ってるのよ。こんなに人が来るなんて予想外だし計算外よ。おかげで準備してた明日の分の材料が全部消えちゃったじゃない」


そんなの知ったこっちゃない。こっちだって好きでこんなことしてるわけじゃないんだ。


「雪瀬って帰ってる?」


受付に座っていた男の子が、スタッフルームという看板が立てられた仕切りから顔を出して部屋を見渡した。声に反応して振り返った私と目が合って、その目はなんだか輝いて見えた。


「お、帰ってるじゃん!雪瀬、指名」

「なに、指名って」


ここ、指名制度なんてとってましたっけ。


「いやさ、さっきからこの男の子がいいとか、美弥ちゃんがいいとかいう声が多くってさ。指名制度を取り入れることにしたんだ。あ、大丈夫。時間制だし、つぎの指名が入ったら早々に切り上げてもらうつもりだから」

「…キャバクラかよ、」

「お前男役だからホストだよ」

「そんなの聞いてない」

「ま、なんでもいいから頼むわ。2番の部屋ね。もう通したから、行って」

「人使い荒いな、ホント」


なんで、ただのハロウィン喫茶がハロウィンキャバクラになったんだ。

帰ってきて早々、私はため息をついて、2と書かれた仕切りにかかるカーテンを開けた。最初から個室制度をとっていたせいか、本当にキャバクラ化していて、机の上にはすでに彼女たちが頼んだのだろうパフェとタピオカジュースが置かれていた。


「ごめんね、待たせちゃった?」


営業スマイルという言葉がしっくりくるような、そんな感じ。にこりと笑いかければ、女の子たちはキャーキャー言って私の腕を引いた。こういう時の女の子の力って半端ないと思う。


「トリックオアトリート!」


私を真ん中に座らせた女の子は急にそんなことを言って両手を可愛らしく出してきた。しかし、あいにくお菓子は何も持っていない。…どーしたものか。


「ハッピーハロウィン。‥口、開けてくれる?」


お菓子は持っていない。でも、いたずらはされたくない。そこで出した答えは、目の前に置かれていたパフェをあーんってしてあげること。それしか思いつかなかった。別にいいよね。甘いものには変わりないし。美弥にもよくこれしてるし。なんてことを思いながら、女の子たちの相手をする。いったい何人の女の子を相手にしただろうか。休憩なんて全くなくて、10分もしたら、また別の部屋で、別の女の子の相手をしての繰り返し。文化祭の1日目が終わった時にはもう、身体はくたくただった。


「だめ、もうだめ。一歩も動けない」


いすに寄りかかってやっと出した言葉はギブアップだった。その声に賛同するように、美弥もその場にへたり込んだ。


「とんだ重労働だよぉ‥」

「みんなお疲れさまー!2人も大丈夫?」


調理にまわっていた奈津子は苦笑いをしながら、私と美弥に冷えたお茶を渡してくれた。それを受け取って、いっきにのどに通す。


「もー、だめ。これが明日もだと思うと憂鬱で仕方ない」

「同じく」

「2人も看板娘だもんねー。ひっきりなしに呼ばれてたし。明日は美弥たち女の子からしたらもっと大変じゃないかな。直が明日は女の子になるんだもん。男子の客が増えそうだね」

「うわ、ありうる。直、明日もその格好でやりなよ。これ以上忙しくなったら倒れる」

「切にそれを願うね」


明日は文化祭が夜にもあるから、あの格好のまま夜までいるのはさすがにつらい。それに男子を相手にするより、女子を相手にしてる方が、こっちとしても何かと楽だし。


「あ、そういえば直、すっごい人気だったけどなんかしたの?出てくる女子がみんな惚れる惚れるって言ってたけど」

「は?別になんもしてないよ」


いたって普通に、美弥とかにする感じで接してたもん。


「いーや、たらしこんでたね」


そう言ったのは、受け付けに座っていた狼男君。狼の毛皮を上半身だけ脱ぎ、タンクトップを着替えているところだった。タンクトップを着終えてから、「たらし」と私の方を見て言った。


「誰がよ」

「雪瀬に決まってんだろ」

「私がいつたらしこんだっていうの」

「毎回に決まってんだろ。部屋の状況確認するときに、たまに覗くんだよ。うちの馬鹿な男どもが間違いを起こさないかっていうパトロールも兼ねてな。そしたら、お前、女の子にあーんってしてるし。普通に髪とか触って頭撫でてるし。これのどこがたらしこんでないって言うんだよ」

「それはつい出来心で、」

「どーせ私を扱ってるみたいな感じでほかの女の子扱ったんでしょ。馬鹿ね、直も。今のあんた、どこからどう見ても男なんだからって今朝、奈津子に言われたじゃない。本当に学習能力がないんだから」

「うわ、言い方きつい」

「当たり前でしょ。ひとつ間違えたらこれ詐欺なんだから」

「え、私犯罪者!?」

「そこまでは言ってない」

「ま、こっちは一言も男だなんて言ってねぇし、問題は明日だろ。客の男子に間違い起こさせるようなことだけはすんなよ。特に雪瀬」

「なんで私」

「今日見ててお前自覚足んないって感じた」


何の自覚だよ。


「それだよ。それが自覚がたんねぇって言ってんの」

「え、なんで私が考えてたことわかったの」

「…お前全部口から洩れてるよ」


マジか。






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