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君の隣を先約します。  作者: ゆきうさぎ
<第7章>
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trick or treat. ※お菓子はいらないのでいたずらします。(2)

文化祭が始まって、1時間くらいが経った頃だろうか。だんだんと外部から来るお客さんが増えてきて、学校内には人でいっぱいになってきた。


「そろそろ行かなきゃなー‥サボってるのばれちゃう」


屋上から賑わう中庭を見ながらぽつりとつぶやく。一緒にこぼれたのはため息だった。クラスの学園祭実行委員に、看板背負って売り込んで来いと言われ廊下に放り出されたけれど、案の定、あいつらの思惑通り、私に女の子が群がってきて、店は繁栄しているとのこと。不本意ながら、いいように使われてるらしい。

……行くか。

重たい気分と足を動かして、屋上から校内に戻った。


「お兄さん、どこのお店の人ですかぁ?」


中庭を練り歩いていたら、知らない女の子たちに声をかけられた。甘ったるい声に甘い香水を振りまいて、当たり前のように体に触れてくる。ぞわっとした感覚を一度味わってから、作り笑顔を貼り付けて女の子たちの相手をする。


「3年生のブースだよ。時間とかあったら来てくれると嬉しいな」

「えー!全然行きますぅ!あの、この後暇だったりします?」

「この後?」


全く暇じゃないです。とは言えず、あいまいな笑顔でごまかせば、女の子はここぞとばかりに身体をくっつけて寄ってくる。


「もしよかったら、私たちとご飯いきませんかぁ?」


これが逆ナンってやつだろうか。初体験だ。


「ごめんね、僕この後も仕事があるから行けないや。また機会があればね」


そう言って、「じゃあね」と付け足して女の子のもとを去る。こうして離れてはまた違う女の子たちに絡まれる。一難去ってまた一難ってこういうことを言うんだろうな、なんて思ったり。


「モテモテだな」

「羨ましいって?」


赤い斑点のついた白衣を着た先生に言えば、こつんと頭をこつかれた。その場所をさすりながら、手首についた時計を見る。交代の時間までまだ1時間はある。


「お前のその格好見て女だって言った奴いるか?」

「まだいない。てか女だってバレちゃったらだめでしょ」


女の客つろうとしてるのに。バレたら文化祭実行委員に怒られちゃう。


「明日もあるんだ、バレないわけないだろ。…にしてもまぁ化けたもんだよな。これじゃ誰かわかんねぇし。こりゃ今年のミスコンは男女とも大荒れだな」

「へ?ミスコン?」

「は?出るんだろ、ミスコン」


高坂は当然だというように言って首を傾げた。


「出るわけないじゃん」


あんな人前になんででなきゃならんのだ。


「でもさっき加藤がエントリーしてたぞ?今年のミスコンは雪瀬がもらったっつって」

「はぁ!?」


いやいやいや!あの子、なにしてくれちゃってんの!?

私、あんなに出ないって言ってたじゃん!


「私、美弥とめてくる!」

「行っても無駄だと思うぜ?もうエントリー済んでるだろうし、受け付けも終了しただろうしな。だいたい、エントリーしなくても、そのなりしてたら、嫌でも推薦枠に入るだろうが」

「…そーだけどー、」

「諦めろ。お前の悪いところは諦めが悪いところだな」

「何事にも根気よく取り組む、粘り強い子なの!」

「いいように言うな。どう解釈したら今のをそんなにポジティブに受け取れるんだよ」

「素直にそのまま受け取ったらに決まってるじゃん」

「どこも素直に受け取ってねぇから、そんな解釈ができるんだろうが」

「引用元は先生だし。言語変換能力は現代文においては大事だって先生言ってたじゃん」

「‥なんでそんなことろだけは覚えてるんだ、その脳みそは」

「人間の脳みそなんてそんなもんってことでしょ」

「人間の脳みそがみんなお前と同じだなんて考えはやめてくれるか」

「あら、私の脳みそ、みんなよりいいと思うけど」

「だからなんでそんなにプラス思考なんだよ。世間も知らねぇお子ちゃまが全人類の脳みそより秀でてるなんてそんなたいそれたことほざいてんじゃねぇよ」

「お子ちゃま言うな」

「なんで引っかかるとこそこなんだよ」

「先生と10歳も変わんないし。私みんなより大人だし」

「大人の真似事してるようなやつが大人っていうな。ガキはガキらしく、ガキみたいなことをガキみたいにしてりゃいいんだよ」

「リンカーン風に言ってくれても、ガキって単語が多すぎて理解に苦しむんですが」

「それはお前の情報処理能力が欠けてるからだ」

「先生の比喩表現が悪かったからでしょ」

「くさっても国語教師だ。わからねぇ比喩表現なんて使わねぇよ。つまり、お前の情報処理能力の欠如だ」

「つまりじゃねぇ。なに簡潔に物事述べましたみたいな顔してんだよ」

「述べたじゃねぇか。よかったな、センター始まる前に弱点が見つかって」

「だーかーら!話を聞けっ!」


なんでこんなに自由なんだっ!どうしてそんなに人の話を聞けないんだっ!


「あ、そうだ、先生、とりっくおあとりーと」


私はそう言って、先生の前に手を差し出す。その手をいかがわしげに見てぺしっと叩かれた。


「そこはハッピーハロウィン!とか言って出迎えてよ」

「お前にやるお菓子なんざない」

「お菓子をくれなきゃいたいたずらするぞっ!」

「へぇ。どんないたずらしてくれるんだ?」


そう切り返した先生の顏は、嫌味を言った時村のニヒルな笑みによく似ていた。


「‥‥国語の点数落とすとか?」

「ヤメロ。俺が教頭に怒られる」

「いたずらだもん」

「定番をしろ、定番を」


…いたずらの定番?


「生卵投球?」

「…‥お前どんないたずらしてきたんだよ、」


だってハロウィンのいたずらってそうじゃん。玄関にはちみつたらすとか。‥え、違う?





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