青い春なんてあってないようなものでしょ。(4)
「あう~‥」
「なによ、急に奇声発しないでよ。こっちがびっくりするじゃないの!」
「だってぇ!私こんなの着たくないもん!」
そういう私の目の前には、どこからもってきたのか、はたまた自分達で作ったのか、入手経路こそ謎ではあるが、服が3着。明らかに男物だろう白のカッターシャツに黒のスラックスとベスト、そして赤色のカラコンにとがった耳。そして極め付けと言わんばかりの牙。2着目は、黒とオレンジであしらわれたハロウィン色の、おそらくドレス。その上にはオレンジのバラがあしらわれた黒色の少し高めのハット。3着目はもこもこした茶色い着ぐるみたいなもの。
…つーか、
「なんで私1人に3着もあるわけ?」
いらなくない?お金、すっごく無駄じゃない?
「さっきね、クラスの子にアンケート取ってきたの」
なんのだ。
いったい何のアンケート取ってきたんだ。
「で、票が3つにわれちゃって。それがデビルと魔女と狼さんだったのよ。だから、とりあえず雪瀬さんには全部着てもらおうと思って」
「‥思い切りましたね、それはまた‥」
ため息がでそうなんですが。
「まずは狼さんから着てもらおっかな」
そう言って、文化祭の衣装担当の女の子は、笑顔で私にもこもこのそれを渡した。そして指で更衣する場所を示すと、ほかの子に行ってしまった。
…まじか。
…‥いや、まじか。
「…仕方ない、か」
渡されたもこもこを見てため息をついて、更衣スペースへ行く。制服を脱いでもこもこを着る。まだ暑さが残っている今には、わかってはいたけれど、かなり暑い。
「直、着替えられた?」
私の返答を聞く前に、目の前につけられていた簡易のカーテンは音と共に勢いよく開けられて、美弥の顏が見えた。
「でかいわりにあんたってそういう格好も似合うよねー」
「でかいわりにっていらないよね」
こつんと美弥の頭を大きな手で叩いた。
「雪瀬さんおっけー‥ってやだ!すっごく可愛いじゃない!これはこれでありね!」
部屋にいた衣装係の女の子たちは集まって小会議を始める。その様子を美弥と見ながら、苦笑した。と、美弥の格好がさっきと違うことに気が付いた。
「美弥、それ衣装?」
「そ!可愛い可愛いデビルだよーん!」
自分で可愛いって2回も言った。や、確かに可愛いんだけどさ。自分で言っちゃったら半減しちゃうじゃん、やっぱり。
美弥の衣装は、ミニスカだ。黒と白と赤を使った、肌の露出が少し多い感じ。背中には小さなデビルの翼をつけて、頭にはデビルの角、おしり辺りにはしっぽがつけられている。
「小悪魔ね」
「ちがうー!」
いや、正解でしょ。10人いたら8人はそう思うでしょ、あんたがそんな格好してたら。
「直は狼男だよねー。って女か。どっちなんだろ。直吠えてみ」
「がお」----パシャッ
「うん、可愛い可愛い。これは高く売れそうだわ」
「ちょい待て。美弥あんたその写真まさかとは思うけど、当日に売ろうとか考えてないでしょうね?」
「やだー!私が友達売るような子に見えるー?」
「見えるから聞いてんでしょーが」
前科あるやつが言うな。
「別に直だけじゃないわよ?もちろん私だってあるし、時村君のもあるわよ?あとは高坂先生のもあるし‥あ、谷口君のもあるけど?谷口君の買う?1年生の時のからあるけど」
「最低」
「あ、怒った?心配しなくても直のはバカ高く売ってるから売れ行き悪いよ?私の直アルバムの写真がすっごくたまってるの」
「…友達考え直さなきゃ、」
「あら、こんなに直のことわかってる理解ある友達、私以外いないわよ?」
「自分で言うな」
美弥はくすくす笑って、狼姿の私を何枚も写真に収めていく。
「あ、雪瀬さん、次はこれに着替えてもらえる?」
そう言って渡されたのは男物の衣装。何も言わずに更衣スペースまで行ってカーテンを閉めた。暑苦しい狼の衣装を脱いでかいた汗をぬぐってからカッターシャツに腕を通す。
そういえば、デビルだとか言っていただろうか。
渡されたもの一式を身にまといカーテンをあけた。
「お、直着替えられ、た‥」
「美弥?」
固まった美弥の顏の前で手を振れば、美弥ははっとして私を見た。
「直!?」
「なによ。そんなに驚かなくてもいいじゃない。つか、みんなしてなにをそんなに驚いてるのよ」
そりゃ、私もカーテンを開ける前に自分の姿を確認してちょっとはびっくりしたけどさ。こんなにも変わるんだなって。
「あんたが男だったら惚れてるわ、ほんと」
「そりゃどうも。そんなにイケメン?」
「1番ってくらいにイケメンなんじゃない?こりゃ当分、直を抜く男は出てきそうにないわね」
なんて言いながら、カメラをかまえてパシャリ。そんな美弥の様子にお構いなく衣装係の女の子たちは、私に最後の1着を手渡した。正直、これが一番着るのが億劫なのだ。だって女の子の衣装だもん。美弥の格好を見てて思ったけど、スカートの長さ、けっこう短い。しゃがんだら見えちゃうよってくらい短い。あれだけは避けたい。
「着るか‥」
ハットを机の上に置いてドレスを広げた。……あれ。
「たけ長いじゃん」
長さを見て一安心。なんてのもつかの間で、露出は避けられないわけで。これ、チューブトップじゃん。肩、思いっきり出るじゃん。
「直ー?」----シャッ
「名前呼んだからって開けるなよ」
着替えてたらどーすんだよ。
「やだ、すっごく綺麗!スタイルいいってずるいなー。すごい似合ってるじゃん」
そう言ってパシャリ。
「本当、良く似合ってるわね。雪瀬さんは、いろいろ衣装係で話した結果、それとさっきの衣装を当日着てもらうわ」
「え、2着?」
「そう、2着。1日目がさっきので、2日目がそれね」
「決定事項ですか、」
いやいいんだけどさー‥。もう少し、その、なんていうか、露出低いほうが好みっていうか、なんというか‥。
「シャキッとしなさいよ!男でしょ!」
「男じゃないし!」
男前なだけだし!




