表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君の隣を先約します。  作者: ゆきうさぎ
<第6章>
35/83

青い春なんてあってないようなものでしょ。(2)

放課後、午後4時ちょうど。3-2と書かれた教室に集まったのは、クラスの半分の人数くらいにはなるだろう、選抜リレーの選手たち。確か全員で15人だっただろうか。とりあえず、今日声をかけた子たちはいるようだ。ただし、2人を除いて、だ。もちろんその2人はあの2人なわけで。谷口君はともかく、夏休みにあれだけ恩を作った時村が来ないのは、いい度胸だと言える。まさか恩を仇で返すとは。もう二度と飯作ってやんねぇ。


「じゃとりあえず始めようっか。みんなテキトーに席座って」


私は4組の舟木 志緒(ふなきしお)、通称しおと一緒に教卓に立ってみんなを座らせた。って言っても、私は書記でしおが話を進めてくれてるんだけどね。ほら、私って寡黙キャラだから。


「すんません、遅れましたぁ」


呑気な声で入ってきたのは、私が心の中で呪ったあの2人。少し申し訳なさそうに入ってくる時村と、悪びれもせず、怠そうに連れてこられた谷口君。‥また、目が合った。


「もー!2人はそこね!さ、始めようっか」


しおが2人をわざわざ、真ん中の一番前に座らせた。教室のあちこちでは「谷口先輩だ」とか「時村先輩やっぱ可愛い」とか聞こえてきた。…つまんねっ!


「じゃあ、一番誰が走ろうっか?」


私は紙に落としていた目を上に上げる。1年生から3年生までそろっているけど、さすが選抜っていうだけあって、運動部ばっかりだった。だから誰が走ってもだいたいいい走りはしてくれると思うんだけど、条件はどこの団も同じだから気を抜くわけにはいかない。しかも、選抜リレーって一番最後にあるオオトリなわけで、一番盛り上がるし、みんな見るんだよね。無様な負け方とかできないんだよねー、走れる人がいるだけに。


「谷口走れば?お前陸上部で短距離専門にしてただろ」

「は?別にどこ走っても一緒だからいいけど、」


‥そういえば、谷口君って陸上部だったっけ。校則違反だけど、髪を染めて、それで色が抜けなくて茶色がかった髪が日に反射してすごく綺麗で。その姿にすごく惹かれたんだっけ。今でももちろんその名残はある。あのぶっきらぼうな感じもたまらなく好きだったな、なんて。それでもたまに垣間見える優しさが大好きだったな、なんて。ああ、本当に未練がましいのはどっちなんだか。


「じゃあ谷口君よろしくね!2番走者はゆきね!」


2番はゆきね、…って!?


「えぇ!?私2番!?」


なんで!?なんでこんなに走れる人がいるのに私なの!?私そんなに足遅くないよ!?


「そ、2番。2人でいっきに離しちゃってね」


後ろにはーとでもついていそうな言い方でしおは言って、どんどん順番を決めていく。本当にさくさくって感じで決めていって、あと5人ってところでふと気が付いた。


「あ、しお、これね、1人足りない」

「はぁ?なんでそんなこと今言うの!」

「えぇー‥知ってると思ったんだもんー」


でもそういえば言ってないなーってさっき思ったんだもん!気が付いただけ偉いと思ってよ!


「そこ、ゆきが走ってよね!」

「えぇぇ!?なんで!?」


しおさんなんで!?そりゃ言ってなかった私が悪かったけど!


「さ、決めよっか。話を戻すと、アンカーどうしようっかって話だったよね。アンカーはこの中なら時村君が私はいいと思うんだけど」

「いいんじゃねぇの。時村、足速いし、お前が走った方がいろいろと盛り上がるだろ」


谷口君は至極楽しそう。後輩たちも、時村ならって感じでなにも言わない。時村、なんか言わないとアンカーになっちゃうんだけど。


「別にいいけど」

「じゃ、決定ね!さ、残りもさくっと決めちゃって帰ろう!」


しおの一言に、本当にさくっと決まってしまって、リレーの順番を書く紙には、みんなの名前で埋め尽くされた。しおの「解散」の声で、みんな各々帰っていく。紙を眺めてため息をついた私に、隣に来た時村がとどめの一言。


「3番より上じゃなきゃバトン受けとんねぇから」

「んな!」


言い返そうとしたとき、時村を待つ谷口君と目が合って、私は口を閉じた。その様子を不思議そうに見ながら、時村は谷口君をつれて教室から出ていった。その2人と入れ違いに高坂先生が教室に入ってきた。


「あ、先生、グッドタイミング!」


職員室まで提出しに行く手間が省けたっ!らっき!


「グッドタイミングだぁ?凛久に俺に来るよう連絡させたのはどこのどいつだ?あ?この俺を呼び出すとはいい度胸してんな、雪瀬」


なーんでそんなに腹の虫の居所が悪いのかな、先生。


「先生カルシウム足りてないよね」


特に最近。牛乳あげようか?


「だーれーの、せいだと思ってだ?」

「え、私のせいだって言いたいの!?」


私、最近大人しくしてるじゃん!生徒指導に呼び出し食らってないもん!いい子にしてるもんっ!


「受験生の担任なんかになるとほんっとにいいことねぇ」

「あ、受験生のせいにした」


いけないんだ。大人のくせに。いけないんだ。


「願書の書き方はなってねぇわ、願書の提出は遅れるわ、小論文はろくにできねぇわ、面接は何回してもぐだぐだだわ、雪瀬にいたってはまだ希望大学書いてねぇよなぁ?この状況でイライラするなってか?あ?」


あれ、1枚噛んでた。え、でも先生が自分で進路希望調査の紙、シュレッダーにかけちゃったんじゃん!


「そんな理不尽!」

「誰も出さんでいいなんて言ってないだろ!」


----ぱしーん!


もうスリッパ、ごちそうさまです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ