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君の隣を先約します。  作者: ゆきうさぎ
<第6章>
34/83

青い春なんてあってないようなものでしょ。(1)

「ふあぁ~、」


夏が明けました。あの時のような暑い日差しはないけれど、それでも残暑は続いている。だけどだんだん夏は遠のいていっているようで、朝と夕方になると冷え込むようになった。私たちの制服も少しずつ変わって、カッターシャツ1枚だった制服は、今はその上にカーディガンを羽織っている。


「でっかいあくび」

「そんなこと言ったってさー、暇なんだもん」

「暇って。あんたよく今のこの状態見て言えるわね?そんなに暇なら仕事あげるわよ!」


ぼんっと机に置かれたのは、体育祭の選抜リレー名簿。それも白紙。そんな紙を見て、ああもうすぐ体育祭なんだと感じた。


「‥ナニコレ」

「見たらわかるでしょ、選抜リレーのめ・い・ぼっ!私、文化祭の準備の方で忙しいの。わかる?言いたいこと」


わぉ。美弥の後ろからすっごい黒いなにかが溢れ出てきてるんだけど。


「私にこれをどうしろと?」


ああもうなんだか冷や汗もの。


「暇なんでしょ?ここに同じチームの子の名前書いてあるから、その人達招集して順番決めてきてちょうだい。あんたも出るんだし、手間が省けるでしょ」


ほんとにもう、この有無を言わさぬって感じが怖い。すっごく怖い。だから言うこと聞いちゃうんだけどね?

この学校、もうすぐ文化祭と体育祭なんだよね。学園祭はクラス単位でやって、体育祭はごちゃまぜ。ごちゃまぜだから、招集するのも大変で、全部のクラスを回ったりしなきゃだめ。これが相当、面倒くさい。ペラペラと名簿の紙をめくって、どのクラスから回ろうか悩む。悩んだ末、1年生から順に回ってみることにした。一学年に1人。そのために走り回る私。なぜ。


「最後はここかぁ」


あと2人。目の前の教室を見てため息。どうして行きたくない教室を後回しにしちゃったのか。こんな性格の自分を恨めしく思うも、この教室に行かなければこのミッションは終わらない。なーんて嫌なミッション。


「あれ、ゆきじゃん!どーしたの?6組に用?」


ひょいと窓から顔を出して私に声をかけたのは、同じバスケ部だった安西 美弦(あんざいみつる)。通称、みつ。小さいくせにやたらと体力があって、試合中いつもコート内を走り回っていた。


「あー‥まぁ、そんなところ」


そんなところっていうか、用があって来ました。でなきゃ、こんなところに好き好んで来ないです。


「だよねー。6組って厄介だからね。誰に用?もしあれなら呼ぶけど」

「えーっとね‥」


私は持っていた紙をペラペラとめくって、クラスが3-6と書かれている人を探す。まぁ、探さなくても本当はわかってるんだけどね。


「時村と‥谷口君、呼んでもらえる?」

「え、谷口?」

「うん」

「‥わかった、ちょっと待ってて」


みつはそう言って教室に戻っていって、持ち前の馬鹿でかい声で2人を呼んだ。っていうか、そんな声で呼ぶなら、この場から呼んだらよかったんじゃないの?


「誰だよ、来客って」


怠そうに聞こえた、本当に久しぶりの声。まだ姿は見えないけれど、この扉を開けたら、嫌でも顔を合わさなければならない。一瞬の緊張。


「6組に用って珍しいよな」


なんていう時村の声も聞こえてきた。なんだか少しだけ落ち着いた。なんて思っていたら、扉は勢いよく開いた。まだ心の準備、出来てなかったんですけど。


「「あ、」」

「…どーも」


開いた扉から出てきたイケメン2人を見上げれば、明らかに驚いた顔がひとつと、戸惑ったような顔がひとつ。ああ、もう、すごく面倒くさい。


「雪瀬?」


最初に口を開いたのは時村だった。私の名前を呼んだその言葉には、何の用だという言葉も含まれていた。


「リレーの件なんだけど。2人も青団で選抜リレー出るでしょ?その招集に来たんだけど、」

「‥あー。そういやそうだったかな。で?どこ走ればいい?」

「だ、か、ら!それを決めるために招集に来たって言ったでしょ」


こいつ何聞いてんの!


「今日の放課後どーせ暇でしょ?場所は私の教室。4時に来て」

「雪瀬の教室ってどこ?」

「2組。ついでに高坂先生も連れてきてもらえるとありがたいんだけど」

「はぁ?」


まぁ高坂はこっちの担任なんだけどね。あの人なかなか捕まらないから。

私は「よろしくね」と時村に告げて6組から離れる。その時、谷口君と一瞬だけ目が合ったような気がした。なにかを言いたげな、そんな表情をしていたけれど、私はそれを見て見ぬふりをして、自分の教室へ戻った。教室に戻ると、みんな文化祭の準備でわたわたしていた。動き回る人たちの間を縫うようにして通って、自分の席に戻る。席に着いた私を見た美弥はこちらまで来て、手にしていた紙を抜き取ってぱらぱらとめくった。


「お、えらいえらい。しっかりやってきたんだね」


そりゃあやらないで帰ってきたらあんたが怖いからね。


「あれ、6組って時村君と谷口君なんだ」


…こいつは人の傷をえぐりたいのか。えぐるな、コノヤロウ。


「なにまだ引きずってんの?あんたも女々しいわねー」

「私じゃないし!」

「なに、やっぱりあいつまだあんたのこと好きなの?はー‥いい男なのに女見る目ないわねー」

「美弥さんっ!?」


見る目ないってなに!?私のことさらっと乏しめないでよ!傷つくから!


「だってそうじゃない?ていうか、谷口君ってどんどん株が下がってくんだよね。1年生の頃はすっごくいい男だったのに。今じゃ、女々しいわ、未練がましいわ、重たいわ、‥いい男に違いはないんだけどね。残念」

「それ聞いたら相当傷つくよ、」

「だから惜しいのよねー、残念」


あ、2回目。そんなに残念なのか。

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