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君の隣を先約します。  作者: ゆきうさぎ
<第5章>
30/83

お化けが光に弱いなんて誰が言った(5)

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つい成り行きで、というか俺の言葉で、俺は今、雪瀬の家のリビングでくつろいでいる。家の住人である雪瀬はというと、キッチンで忙しなく俺が頼んだつまみを作ってくれていた。少しだけキッチンを覗けば、わかっていたけれどすごく手馴れていた。よくもまぁ、何も見ないで作れるもんだと感心しながら雪瀬を見ると、棚の上にある何かを見て、しばらく一旦停止。一瞬、壊れたのかと思った。が、そうじゃなくて、雪瀬は棚の上にある籠が取りたかったらしかった。だけど、あと10センチくらい身長が足りないせいか、雪瀬の手はかごにはとどいていなかった。普段背がある分、雪瀬が背伸びをしているところなんて見たことがなかった。俺は半ば諦めかけて背伸びをやめた雪瀬の背後に立つと、そっと、その棚にあるかごを取った。


「ありがと、」

「どういたしまして」


少しだけ照れたように言った雪瀬は、すぐに料理にとりかかった。俺もそんな姿を見て、キッチンから出る。同じソファに座りこんで、今まで気にしていなかった周りを見渡した。大きな、家族で住むような立派な一軒家。洋風な作りでモダン的で、とてもきれいだった。だけど、その反面、怖ろしいほど静かで、何もない、そんな生活感を感じさせない家だった。家族のある家なら、たいてい置いてあるだろう家族写真や子供の写真が一切なく、食器棚から見える食器の数は多いのに、洗浄機に置かれていた食器は一人分だけで。ふいにあたりを見回していた俺の目に入ってきたのは、1冊の小さなアルバムだった。見てはいけないとわかっていながら、俺はそのアルバムにおそるおそる手を伸ばして、雪瀬に隠れるようにして、アルバムの1ページ目をめくった。


「…‥これって、」


表紙を開いて1ページ目にいたのは、雪瀬によく似た、だけどどこか違う、カメラに笑顔を向ける女の子だった。幼稚園の写真だろうか、その子は幼く、それでいて将来はきれいになるだろうということを確信させるには十分なほどの顔立ちをしていた。雪瀬にはどことなく似ていた。今の雪瀬は男前な顔立ちをしているから、見比べればわからないかもしれないが、きっと小さいときはこんな感じだったんだろうと思いめぐらせた。写真の下には「(はる)保育園入園、おめでとう!」と可愛らしい丸文字で書かれていた。数ページめくれば、ロングヘアの黒髪の女の子と手をつなぐショートカットの黒髪の女の子の写真があった。おそらく、これが雪瀬なんだろう。なんとなくだけど、今の面影があった。まぁ、この時の方が女の子に見えるけど。ショートカットなのは昔も今も変わっていないようだ。ただ気になったのは、雪瀬の格好がお姉さんに比べると、かなり男っぽかった。まぁ雪瀬の趣味なんだろうなって思って、ペラペラとページをめくっていく。雪瀬は今とは見違えるほど、喜怒哀楽が激しくて、写真の中の雪瀬はいつも笑うか怒るか泣いていた。今だったら、泣いている姿なんて想像もつかない。丁寧に作られたアルバムをめくっていくと、雪瀬の小学校時代に突入していった。この頃から、今の雪瀬らしさがあった。美少年、という言葉がしっくりくるようなそんな顔立ちはこの頃からだったのかと思うと、正直感嘆ものだ。


「…、あれ、」


両親によって、可愛らしく、そして丁寧に大切に保存されたアルバムには雪瀬が中学校に入学して、雪瀬の姉が高校に入学した頃からの写真が挿まれていなかった。まだ余白が後ろにあるのにもかかわらず、写真は1枚も後に貼られていない。最後までめくってみると、背表紙に貼りつくように紙切れのような写真が出てきた。それは人為的に真っ二つに破かれた写真で、ひっくり返して見てみると、家を背景にした家族写真だった。少し色あせたそれに写っていたのは、雪瀬たちで、アルバムを開いて初めて、親の顏を見た。父親も母親も容姿端麗で、雪瀬の顏の良さは遺伝であることを思わせる、そんな顔立ちだった。優しく微笑む2人と、カメラに向かって楽しそうに笑ってピースする制服を着た人と少し不機嫌そうにする制服を着た人。大人っぽい、だけど幼さが残るお姉さんと、そんなお姉さんとは対照的見える美少年の雪瀬。思い出の写真、そう呼んでいいこれが、破かれて背表紙に挟まれていた。そう、まるで何かを引き裂くように。まるでなにかを隠すかのように。

……そういや、この家、一軒家なのに、雪瀬以外誰もいないのか?

この家に上がった時に感じた疑問をふいに思いだした。言葉にはしなかったけれど、疑問に思うことは多々あった。聞いても、雪瀬が素直に答えてくれるなんてことも期待していないせいか、聞こうとも思わなかったけど、こんなアルバムを見てしまったあとでは、どうしても聞きたくなってしまう。どうしようかと迷っていたときだった。最後のページだと思っていたアルバムにはまだ続きがあって、ぱらりとめくったそのページには、黒色のペンで短めの英文が書かれていた。思わず、その書かれた英文をなぞる。走り書きのような、それでいて、どこか悲しさを感じさせるよな、そんな書き方だった。

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