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君の隣を先約します。  作者: ゆきうさぎ
<第5章>
28/83

お化けが光に弱いなんて誰が言った(3)

しっぽを巻いて逃げて行った彼の背中を見終わったあと。抱き寄せられた体をいつ離れればいいかわからなくて、結局離れないまま今にまで至る。時村も何も話さないし、私もなにも言わないから、ただ波の音だけが大きく聞こえた。

あ、波といえば…。

私は先ほど押し倒されたときに髪についた砂を思い出して髪をわしゃわしゃさせた。肩にぽろぽろと砂が落ちていき、肩についていた砂も一緒に落とす。砂浜が波で濡れていたせいか、あまり後ろにはくっつかずに済んだ。


「雪瀬の親友に感謝しないとな」


ふいに降ってきた言葉に上を見ると、私を見ていた時村と目が合った。

…親友?美弥のこと、かな?


「あいつがお前とペアの男気を付けた方がいいって言ってくれたんだ」


…それってまず私に言うべきじゃないの?え、違うかなぁ?


「で、案の定みんなもうはけだしてるのにいつまでたっても帰ってこない。もしかしたらなって思って来てみたらビンゴってな」

「…助かりました」


いや、本当に。わりかし中性的な顔立ちだから、男の子に狙われること少なかったんだけどなぁ。あれって着痩せするのが功を制してたのかもしれない。なんて、あいつの言葉で考えさせられたりして。


「お前、無防備なんだよ。あんなに下心の塊みたいなやつと一緒に行くのにそんな恰好で行くからそうなるんだろうが」


なんでだろう。私、怒られてる。…あ、てか、やば、くしゃみでそう。


「くし、」


出ちゃった。怒られてる途中だけど。寒いんだもん、仕方ないよね、うん。くしゃみ我慢したら身体に悪いもんね。

なんて、自分の中で頑張って正当化していると、前からため息が聞こえてきて、ふわりと肩に何かが乗った。それはなんだかぬくもりが残っている感じで、肩を見ると、グレーのパーカだった。


「着とけ。少しはましだろ」

「え、でも、そんなのしたら時村寒いじゃん」


パーカを脱いだ時村はタンクトップ1枚だった。それじゃさすがに寒いでしょ。ここ、けっこう潮風あたるし。


「いいからそれ着とけ。でもって前も閉じろ」


え、なにその目に毒だ、みたいな言い方!失礼な!そんな見苦しいものでもないのに!


「(こいつ絶対意味勘違いしてる)…とりあえず帰るぞ。もうみんな帰っただろうし」


時村に腕を引かれて、さっき来た道を戻っていく。早足で歩きだしたはずなのに、気付けば時村は歩幅を合わせてくれていて、隣に歩くなら別に手をつなぐ必要なんてないのに、なんて考えながらも、私は時村の手を握ったまま、荷物の置いてある場所まで戻った。


「やっぱりみんな帰っちゃったか」


人気のなくなったその場所に戻ってくると、誰もそこにはいなくて、私と時村の荷物がちょこんと置いてあるだけだった。


「私とりあえず着替えてくるね」


着替えを持って、来たときに着替えた場所まで行く、更衣室と書かれたその場所の扉を開ける。ガッという音がして、扉に鍵がかけられていることを知らせる。

…え、鍵?鍵締まってる!?


「嘘でしょ?」


まだ着替え終わってないのに鍵締める馬鹿がどこにいるのよ!?これ絶対美弥でしょ!


「なにしてんの?着替えたら帰るよ?」


2人分の荷物をもって時村が更衣室の前に来た。振り向いて時村の顏を見ると、時村は私を見て首をかしげた。


「鍵締まってて着替えらんない」

「は?鍵締まってんの?中に荷物とかは?」

「ないけど‥着替えらんない」

「しゃあねぇな。そのまま帰るぞ」


…はい?こいつ今なんつった?ソノママカエル?


「いや、水着なんですけど」

「知ってる。でも今のかっこうなら水着だってばれないから。それに今12時だし人もそんなに出歩いてないから大丈夫だって」


確かに今の私の格好は時村に借りてるグレーのパーカにデニム生地のショートパンツだけど。これで街中歩けるかって言われたら、さすがに抵抗あるでしょ。


「それとも外で着替えんの?つか、30分くらい我慢しろって」


な?と優しく問いかけるようなトーンで言ったくせに、時村は答えを聞きもせずに扉に手を置く私の腕を引っ張って、ずるずると帰り道を歩いて行く。有無を言わさないっていうのはこういう行動のことなんだろうなって、引っ張られながら感じてしまった。


「あ、いいよ、送ってくれなくて。もう遅いし」


送ってくれそうな時村を断れば、時村に頭を叩かれた。何事だと思って時村を見上げれば、呆れた顔で見下ろしていた。


「お前なんで男に押し倒された後にそんなこと言えんの?もっと自分に危機感もてよ。同じようなこと起きても知らねぇぞ」


そう言われて、初めて時村に心配されていることに気が付いた。「でも」ってなにか言葉をつづけようとしたら、また頭を叩かれた。そして私の頭を叩いた手はどけられることなく、私の頭を優しくなでる。


「自覚持てよな。こんな時間に女の子一人で出歩いたらどうなると思ってんだよ」


………。


「てめぇ、失礼にもほどがあるぞ。人の顏見て俺の方が襲われそうな顔してるでも言いたげだな。あ?」

「事実」

「事実じゃねぇ。こんな馬鹿でかい美少女がいるか」


いや美少女て。間違ってないけど自分で言うなよ。


「俺を指さすな。そういう意味で言ったんじゃねぇ」

「でも事実」

「…。そうだな、事実は事実だな。つーかもうなんでもいいから送らせろ」


無理やりだな、おい。なんでもいいからって、なんかそれらしい理由つけろよ。

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