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君の隣を先約します。  作者: ゆきうさぎ
<第4章>
24/83

夏に恋は必要ありません(6)

「直ー!飲み物これでよかったー?」


あ、飲み物忘れてた。

かけてきた夏から手渡されたコップの中身をぐいと飲む。炭酸みたいで、しゅわしゅわとした感じが口の中に広がった。すこしだけ苦いのは気のせいなのだろうか。


「これなに?」

「えっとね‥なんだったかな。時村君と半分こしたんだけど、時村君が持ってたのもらっただけだからわかんないかも。でも柑橘系だと思うな。みかんとかゆずとかじゃない?おいしくなかった?」

「いや、ありがとう」


そう言ってもう一口もらった。炭酸が少しきついなんて思いながら周りを見渡す、なんだかどんちゃん騒ぎだ。カオスって言ってもいいくらいだ。携帯で時間を確認すれば、まだ7時でこれからだということを感じさせられた。


「あれ、なつ、雪瀬と話なんてしてたっけ?」

「うふふ、まぁね!って言ってもさっき仲良くなったばっかりなんだけどね!そういう旬たちだって直と仲良しじゃん。なに、ナンパでもしたの?」

「俺じゃなくて旬がしたんだぜ?最初に旬がしゃべってたんだし。そんなに妬かなくても俺はなつ一筋だって」

「准うざい。なにが一筋よ!一筋だって言うくらいなら、ちゃんと授業に出てプリントとかノートとか持って帰ってよね!あれ持って帰ってくるのけっこう重たいから嫌なのって私ずっと言ってるのに。笑ってる旬もだよ!保育園からの付き合いだからってなんであんたたちを私が世話しなきゃなんないのよ、ほんとに。何回あんたたちのプリント燃やそうかと思ったか」

「いいじゃねーかよ。どーせ同じとこまで帰るんだし、それに部活終わる俺ら待って一緒に帰ってるんだし。そっちの方がなかなかつかまらない俺らに一番効率よく渡せる方法なんだし先生のためだろ」

「先生のためだって思うなら、そもそも教室から消えるなんてことしないでよ。私の労力も少しは考えなさいよ!なんでそんなに顔にだけ栄養いったかな」

「奈津子、顏に栄養いってもイケメンにならないから」


つーか、イケメンに栄養なんていらないから。


「よく言った、雪瀬!だからこれからも頼むな!」

「次から金取ってやる」


奈津子はぷんすか怒りながら、2人の頭をポンポンと叩いた。それを2人もなんだか嬉しそうに受け取っていた。

‥ああ、そういうこと。2人も奈津子のこと好きなんだ。なんかわかりやすいなぁ。


「よし、そろそろあれしようぜ!」

「あれ?」


あれってどれ?あ、さっき後回しにしたスイカ割りか!確かにあれは夏の風物詩だもんね。結構賑わうし。


「夏といえばぁ、……、花火っ!」


そうだ、花火!!ってあれ、花火なの?スイカ割りはどこ行ったの?


「あれ、スイカ割るんじゃなかったの?」


私の言葉を代弁するかのように、王子様キャラの仮面をかぶった准が言った。


「あーと、スイカ割りもする予定だったんだけど、さっきあのバカがスイカ落としちゃってさ。割れちゃったんだ。だからスイカ割りは急きょ中止!」


なんじゃそりゃ。やりたいって言ってた本人がスイカ落として割っちゃうって。どーなんだよ、それ。


「しゃーねーな、それは。じゃあ花火しようか。もう暗いしいい感じになるんじゃないかな」


王子様キャラの准が花火をすすめ、みんな皿を置いて花火の入った袋をあけだす。手持ちから打ち上げ、ねずみやとんぼまでなんでもあった。ちらりと目に入ったのはロケット花火だった。…あれってダメ、なんじゃない?


「よーし、みんな浜へ出ろ?花火だ、花火!」


みんな浜へでていくから、私は手にしてたコップの中に半分ほど入っていた飲み物を飲み干して、みんなに続いた。少し遅れて入ったわりには、みんな花火を選ぶのに時間がかかっていて、支障は全く出なかった。私はてきとーに花火を持って3歩ほど後ろに下がった。


「うわ、」


どんっと背中に何かがぶつかった。まぁ何かっていっても人に間違いないんだけど。知らない人だったら嫌だなって思いながら、「ごめんなさい」と言いながら後ろに振り返ると、なんだか懐かしい顏がそこにあった。


「危なっかしいな、お前」


そう言って時村はぶつかった拍子に落とした花火を拾ってくれた。それをもらうと、移動するのも悪かったから、私はそのまま時村の隣に居座った。別に会話はなかったけれど、不思議と苦にはならなくて、少し前の自分ならあり得ないなんてことを考えてしまった。


「みんな花火持ったか?点火するぞ?」


その言葉をかわぎりに、我先にとろうそくの火に花火をつける。その様子を見てから、ちらりと隣の時村の顏を見ると、ほんの少しだけ疲れているように見えた。


「深田さんどうなの?」


気が付けば、そんなことを言っていた。


「どうって。見ればわかるだろ」


ため息混じりに時村は言って、頭をかいた。その感じに苦笑して「お疲れ様」とだけ言えば、同じような苦笑が返ってきた。目の前のろうそくに群がる人たちが各々花火に点火してどいていく。やっとろうそくの火が見えて、時村と花火に火をつける。じっと花火がつくのを待って、ついたらお互い真っ暗な海の方を向いて花火をした。わーきゃーいう声が聞こえる。みんなかなりはしゃいでいるみたいだ。


「見て、これすっごい綺麗!」

「光のぉぉ、シャワァァァー!」


あ、なんか馬鹿もいたみたい。

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