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君の隣を先約します。  作者: ゆきうさぎ
<第4章>
22/83

夏に恋は必要ありません(4)

「おーい!こっちでビーチバレーしよーぜ!」


海岸でビーチバレーを頭の上にあげて、男の子が私たちを呼んだ。男の子の声にみんな海から岸に向かったから、私も一緒に岸に向かった。


「俺、スイカ割りしたい」

「は?俺今ビーチバレーしようって言ったよな?」


なんとういうか、協調性のかけらもない。高校生にもなって、自分のしたいことだけ言うって保育園児かよ。


「ビーチバレーだ!」

「いーや!スイカ割りだ!」


‥そして不毛だ。


「よーし!こうなったら功利主義的考え方だ!」


うん、それ多数決だよね。なーんでそんな難しい言葉使ったのかな。


「別に時間あるしどっちもしたらいいんじゃないの?」


ふいに隣から聞こえた声にちらりと右の方を見れば、美少女が立っていた。


「あんた、空気読めないって言われたことあるでしょ」


でもって、なんで当たり前なことのように私の隣に立ってるんだ。縦巻きガールが私を睨んでるじゃないか。


「じゃあビーチバレーが先だな」

「は?スイカ割りに決まってんだろ」


不毛な争いパート2。なんなら、さっきより不毛な気がする。つーか、ほんとにもうどっちでもいい。


「よし!次こそ功利主義的考え方で‥!」


好きだな、功利主義。最大多数の最大幸福な。


「ビーチバレー、暗くなったらできないし、先にそっちからすれば?」


ああ、もう、なんであんたはそうやって‥。


「‥時村お前そっちのコート入れ!俺はこっちのコートに行く!」


ほら怒っちゃったじゃん。激怒プンプンまるだ。つーか、そんなに多数決取りたかったのか。功利主義的考えに基づいて。


「あーあ、ほんとに男子って子供なんだから。あ、はい。これ直の」


隣に来た奈津子はビーチバレービーチバレーを始めた男子を見てカラカラと呆れた風に笑った。そして手にしていた肉の刺さったくしを渡してくれた。どうやら、バーベキューの方がいい具合に出来上がってきたみたいだ。それにも気づかず、男子はひたすらビーチバレーをする。それも、6対6。明らかに数がおかしい。なにも言わなかったけど。


「ほあちょー!」

「あだー!」

「うらぁぁぁ!」


うん、お前らなんの格闘技してんだ。つーか、何の競技してんだ。


「まだまだぁ!」

「行くわよ、こずえ!」

「消える、アターック!」

「ぐはぁ!」


…‥こずえ?消えるアタック?‥アタックナンバー1?

ばかだ。こいつら間違いなくばかだ。


「みんなー!もうお肉やけたよー!」


縦巻きガールがワントーン高い声でアタックナンバー1ごっこをする男子たちを呼んだ。まぁ、みんなって言いながら、けっこう時村のこと見てたけどね。


「よし、いったん休戦だ!」

「腹が減っては戦はできんっていうしな!」


なんて言葉を言いながら、男子たちはバーベキューをしている場所まで歩いて行く。その後ろ姿を目で追っていると、ふいに自分に影ができて、そちらを見ると、ビーチバレーで汗をかいた時村が立っていた。汗をかいたせいか、なんだか色っぽく見えた。


「いかねぇの?」


時村は向こうを指さして言った。「行く」と小さく言うと、時村は「行こうか」と言って、一瞬だけ私の手を引いた。


「とき、「時村くーん!早く来ないとお肉なくなっちゃうよー?」


さっきまで向こうにいた縦巻きガールが、気付けば時村の後ろにいた。可愛らしい笑顔を振りまきながら、その子はそうすることが自然だとでもいうように、時村の手を引いた。時村は縦巻きガールにとまどいながら、ちらりと私の方を見てから、先に行ってると告げて行ってしまった。残されてしまった私と縦巻きガールは、知り合いでもないため、ただ気まずい雰囲気が流れる。私の前にいる縦巻きガールの表情はわからない。


「あんたうざいんだけど」

「え?」

「だからうざいって言ってんの。時村君の隣うろちょろしてさ。ほんと、迷惑なんだけど」


あれ、これって牽制ってやつ?


「ちょっと顔がいいからって調子に乗らないでよね。あんたみたいな男みたいな顔したやつ、時村君が好きになるわけないでしょ」

「男みたいな顏は傷つくなぁ。これでも中性的な顔立ちしてるんだけど」


ハハって、自分でもびっくりするくらい、乾いた笑い声が出た。別に気にしてなかったし、わかっていたことだけど、言葉にされてこんなふうに言われると、さすがにぐさってくる。


「時村君は渡さないから」


あんたのものじゃないくせに、なんて。


「だから彼に近づかないで」


彼女でもないのになんの独占欲だ、なんて。


「目障りなのよ」


まるで自分ならあいつの隣にいていいなんていう考えなんて。―――馬鹿みたい。

縦巻きガールは言いたいことを言ったからか、私をきつく睨んでから、みんなのところへ向かった。そのあと、少し間をおいてから私もそこに向かった。バーベキュー独特のにおいの元へと行くと、奈津子が皿と箸を渡してくれた。


「直なに飲む~?」


奈津子はクーラーボックスの中をあさりながら私に聞いてきた。


「なんでもいいよー。奈津子に任せる」


だってなにがあるかわかんないし。

私は美弥に促されて一緒に皿の中身を取りに行った。網の上にはお肉やら野菜やらが焼かれている。ちらりととんぐを持つ男子に目をやれば、屋台にいるお兄ちゃんみたいだった。


「お、雪瀬。何食べる?」


なんて聞きながら、その子は私の皿にいろいろ入れていく。私のリクエストは受け付けないらしい。ならなんで聞いたんだ。


「雪瀬、嫌いなものは?」

「あー、あんまりないよ。だいたいのもの食べられるよ。ありがとうね、えーと‥」

「榎本だよ。榎本旬」


あ、名簿で見たことある。名前の旬って字がちょっと変わってるなって思ってた子だ。こんな爽やかな男の子だったんだ。

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